2番目に注目されたのは20時28分で、注目度73.2%。瀬以が鳥山検校との離縁を奉行から言い渡されるシーンだ。

松葉屋の寮で身元預かりとなっていた瀬以は奉行所から呼び出しを受けた。罪状と仕置きを申し渡すためだ。奉行所では、瀬以は後見人となっている松葉屋半左衛門(正名僕蔵)と御白州に座らされた。

しばらくすると鳥山検校が引き連れられ、皆が定められた席に着くと、この場を取り仕切る奉行が、まず瀬以に判決を言い渡した。「悪徳なる検校の寵をよいことに、善良なる民よりしぼり取りし金で遊興、贅の限りを尽くしたことは許しがたき悪行である。しかしながら、幼き頃に吉原に売られ、夫よりほかに寄る辺なき身の上であったことは、憐れむべきである。よって二度とかような遊蕩を繰り返さぬよう、きっと叱りおく」寛大な処置であった。

ひたすら平伏する瀬以に奉行はさらに続けた。「この後は、鳥山玉一とも縁を切り、よき民として暮らすよう」思いもよらぬ言葉に瀬以は驚いた。半左エ門も信じられないようだ。あ然としている2人に、「これより先、鳥山はそなたの面倒を見ることは遠慮したいとのことだ」と奉行が事情を語った。なんと離縁は鳥山検校が申し出たのだ。

井上奉行に「名裁きでした!」

このシーンは、井上奉行のお裁きの内容に視聴者の関心が集まったと考えられる。

松葉屋預かりの身となった瀬以は蔦重と再会するが、座頭金により両親が自死し、松葉屋に売られてきた武家の娘・松崎(新井美羽)に斬りつけられ、検校の妻という立場を思い知らされることとなる。

そんな中、町奉行から言い渡された処置は急度叱り(きっとしかり)という寛大なものだった。SNSでは、「井上奉行、瀬川は貧しい身の上で大変だったからと判断された。名裁きでした!」「瀬以がさらにひどい目にあわなくてほっとしたよ」と、井上奉行の名裁きが称賛を集めている。よき民として暮らしていくよう言い渡された瀬以は、史実では鳥山検校と離縁したのち、深川六間堀に住む深川何某という武士の妻となり2人の子を産むが、まもなく夫と死別する。

その後、大久保家町屋敷の家守をしていた大工・結城屋八五郎と再婚し老後を過ごしたと言われている。奉行から瀬以が言い渡された急度叱りは、庶民にのみ課された刑罰。その下に叱りという刑罰も存在した。叱りとは役所に呼び出され、奉行・代官より直接叱責を受けた後に放免されるというものだ。罪人本人だけでなく、連座した者にも適用されることがあったが、刑罰としてはもっとも軽いものだった。急度叱りはより強い非難や注意がされたと言われている。

本シーンの舞台となった御白州は、時代劇では屋外のイメージがあるが実際は屋根で覆われていた。町奉行が座る座敷である「公事場」が最上段で、続いて「上縁・下縁」という縁側が設けられ、最下段が「砂利敷」と呼ばれる造りだった。罪人の身分によって座る場所が厳格に決められていた。そのため鳥山検校は瀬以とは違い、上縁に通された。

今回、抜群の存在感を放ったお奉行を演じたのは、声優界の大御所・井上和彦。1973年のデビュー以来、長年アニメや吹き替えで活躍している。『NARUTO -ナルトー』のはたけカカシや、『美味しんぼ』の山岡士郎、『名探偵コナン』の白鳥任三郎など数々の人気キャラクターを演じている。「お奉行さまの声、よく通ると思ったら井上さんじゃない!」「大河ドラマに井上和彦さんが出てくるとは…」「お奉行、声が良すぎる」と、その存在感がネットで話題となった。