復帰のめどが立たない中、23年10月の番組改編で、フジでは女性の出演番組について、一旦レギュラーを交代(降板)する方針を決めた。だがF氏は、すべての番組からの降板は復帰意欲を低下させるおそれがあるとして、ある番組のレギュラーを「戻る場所(番組)」として残すことになった。
番組改編発表後に初めて知って女性アナがショックを受けないように、F氏は事前にオンライン会議や電話で説明したが、女性アナは「私からすべてを奪うのか」などと激しく泣いて強く訴えることに。
F氏は、女性アナの復帰意欲の強さとそれが奪われることによる心情を思い、番組降板の話をするのは「非常につらかった」旨を調査に述べている。また、電話口で泣く女性アナの様子は「慟哭」するようなものだったといい、病状が悪化してしまうのではないかと心底心配であり、F氏自身のメンタル(ヘルス)もギリギリまで追い詰められていたという。
課せられた役割は一管理職の職責を超えるもの
このやり取りについて、報告書では「心理支援の専門家ではない管理職が、PTSDを発症した部下とのコミュニケーションをひとりで担うことは困難であり、F氏の精神的負担は大きかった」と指摘。特に、番組降板の話は、アナウンサーとして業務復帰に向けて心の支えとしてきた大切なものが奪われたと感じる話であり、F氏自身も「アナウンサーとして心情を理解できるだけに、つらい思いをした」旨を述べている。
その上、産業医らのサポートがあったとはいえ、降板の話を複数回伝える役割をほぼ一人で担うことになったが、F氏に対する会社としてのサポートは乏しかったといい、「F氏に課せられた役割は一管理職の職責を超えるものであり、この点でもフジテレビの対応は不適切であった」と断じた。