フジテレビ系バラエティ番組『全力!脱力タイムズ』(毎週金曜23:00~)が、4月で10周年を迎える。報道番組という硬いスタイルを採りながら、ゲストの芸人を毎週様々な手口で追い込み、極限の状況で生み出されるミラクルや、思わぬサプライズ人物の登場でSNSを沸かせる同番組。このメインキャスター兼総合演出として表から裏から仕掛けるのが、くりぃむしちゅーの有田哲平だ。

このほど取材に応じ、10年の中で印象深いゲストや、サプライズに込める思い、そして今後のビッグゲストの狙いなどを語った――。

  • 『全力!脱力タイムズ』メインキャスター兼総合演出の有田哲平 (C)フジテレビ

    『全力!脱力タイムズ』メインキャスター兼総合演出の有田哲平 (C)フジテレビ

ムチャブリを全部受けた木村拓哉

――この10年で印象に残る回を挙げると、何がありますか?

もうキリがないですが、藤森(慎吾)の家の中をロケさせてもらって、そこで悪い薬を栽培してるみたいなVTRに改ざんしちゃったんですよ。あれが、“改ざんシリーズ”のスタートだったような気がしますね(笑)

――インタビュー撮ってめちゃくちゃ悪意ある応答に編集するのもありますね。

一方でダイアンのラップ対決のように、ほかの番組(『有田ジェネレーション』)でめちゃくちゃ笑ったのをこっちでもお届けしたり、「あそこで共演した時に笑ったやつ、こっちでもできないかな」「テレビで見てこんな面白いのがあったから、こっちでも出せないかな」というのもあって、番組単独でやっていたものが横に広がる感じも思い出に残っています。

――有田さんがこの番組の好きなところは、どんなところでしょうか。

会議室で3~4人で雑談して、「うちの番組でもこんなことやったらバカっぽいよな」とか「この人出してみたら面白いな」って話をしたら、次の週の会議で「できることになりました」ってスタッフが言ってくるんですよ。その機動力がすごいですね。他局だと無理なんですよ。「いやいやいや、面白いかもしれないですけどちょっとそれは…」って、普通だと大人の対応なんです。でも、この番組だけはボロっと冗談で言ったことを、すぐ「やることになりましたんで」と決まることがありますから。視聴率をとるための機動力というより、「これ面白いよね」ということに関する調整の仕方がすごいなと思いますね。

――その中でも実現して、特にうれしかった回は何ですか?

最初はどこの馬の骨とも分からないような番組が深夜で始まりまして、みんなで口をそろえて言ってたのは、「広瀬すずちゃんがゲストに来るような番組にならなきゃダメだよ」って。それから頑張って、半年か1年後に出てくれたんですよ。僕、収録終わった後に楽屋挨拶なんて行かないんですけど、初めて女優さんの楽屋に行って「今日ありがとうございました」って言いましたから(笑)。二宮(和也)くんや、長澤まさみさんでも、そんなこと言ってましたね。

あとはやっぱり、木村拓哉さんですね。もうこのスターをこちらは抱えきれないので、逆にこっちから「お断りします」という意味でいろんなことを投げかけたら、全部やっていただいたんですよ。「“ちょ待てよ”を本人に言ってもらいます」って頼んでも、向こうは絶対断ると思ったら、「やる」って言うんです。しかもロケまで出てもらって、最後に「ちょ待てよ」って言ってくれて。ほかにも、「今日Koki,来てんの?」って言ったら亀田興毅さんが出てくるとか。そうやっていろいろやってもらって「おつかれした!」って帰っていって、「すごかったなあ」ってみんなで言ってたら、最高視聴率(19年1月22日放送、世帯視聴率8.1% ※ビデオリサーチ調べ・関東地区)ですから。カッコよかったですよ。

視聴者が許してくれる番組

――アンタッチャブルさんのコンビ復活や、渡部建さんっぽい人が覆面で全国ネット地上波復帰するなど、大きなサプライズも印象深いです。

一緒にやってる芸人たちが何らかの事情で、なかなかテレビに登場できないという状況にあった時に、「この番組だったら」という気持ちはすごくあります。アンタッチャブルの復活は、僕が半年ぐらい交渉してやりましたけど、「寸前までいったんだけどなあ」と水面下で結局実現しなかったことも、実はたくさんあるんです。せっかくのこの番組の「やり逃げ」の特性を生かして、皆さんをあっと驚かせたいんですよね。うちの視聴者の方って「おいふざけんじゃねえよ!」「あんなやつ出していいのか!」とか日頃言ってる方も優しくなるんですよ。「『脱力タイムズ』はしょうがないか」ってなる傾向があるので(笑)

あとは、だんだんスタッフが、こういう案件を求め始めてきて(笑)。「ここで出てきたら面白いね。でもこの人出れるの?」ってこっちが聞いたら「やりましょう!」って言うんで、頑張って台本書いて、1週間後に「どうなった?」って聞いたら「有田さん、あれは無理ですよ」とか言いだして。「いやいや、俺がやりたいって言ったんじゃないよ!」みたいなこともしょっちゅうあります(笑)

ただ、テレビ的に出しちゃいけない人を出すとか、出られなかった方をここで復帰させるとか、そういうサプライズを狙ってるわけではなくて、みんなに「『脱力タイムズ』だけは金曜日にちゃんと見ておけばよかった」って思ってもらいたいんです。生放送ではないんだけど、「後でニュースで知っちゃったわ」ってなるのではなく、「見てたら何かあるかもしれない」と思っていただけるように…という気持ちでやってるかもしれないですね。

――その考え方は、有田さんの大好きなプロレスの興行に通じるところもあるのでしょうか。

おっしゃる通りです。もうお笑いの世界は何が何だか分からないですけど、プロレスに関してはお客さんとして「何この展開!?」ってなるのを何度も味わっているので、それを分析するんです。「なるほど、ここで告知なしで来たから驚きがあったのか」とか、「こういう振りがあったから、あそこでみんな泣いたのか」とか、プロレスから学んでるところがありますね。僕の人生は全て、プロレスと合コンから学んでおりますので(笑)

総理大臣が出たいと言っていた!?

――今後出てほしいサプライズな人はいかがでしょうか?

当時の総理大臣に出てもらうというのを企画して、何度かいけるかいけないか…ってなった時があったんですよ。解説員の先生が、本当かどうか分からないんですけど、「◯◯首相が、この番組見てらっしゃるんですよ」「出たいって言ってるよ」ってポロッと言ってくれたので、「じゃあやろうか」と何度もチャレンジしているんですが、その先生のウソなのか(笑)、いざ動いたらうまくいかなかったのか、実現できてないんですよね。やっぱりうちは報道番組だと徹底的に言い続けているので、時の首相だったり、党首対談とかもやっていきたいと思いますね。

――そうなると、石破さんですね。

石破さんだったら出てくるかなあ、大丈夫かなあ…。でも、いつかとんでもない方に出てもらいたいですね。

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