2027年放送のNHK大河ドラマ『逆賊の幕臣』で主演を務めることが発表され、さらなる飛躍が確実視される松坂桃李。現在放送中のTBS系日曜劇場『御上先生』(毎週日曜21:00~)では主人公の“官僚教師”御上孝を演じ、注目を集めている。「これほどまでにやる意義のあるドラマだと思ったのは初めてです」と語る松坂に、本作を届ける意義、そして自身に芽生えた思いを聞いた。

  • 日曜劇場『御上先生』御上孝役の松坂桃李

本作は、教育のあるべき真の姿を描く完全オリジナルの大逆転教育再生ストーリー。東大卒のエリート文科省官僚の御上孝(松坂桃李)が隣徳学院3年2組の担任教師になり、令和の時代を生きる高校生を導きながら、権力に立ち向かっていく。脚本は、松坂が主演した映画『新聞記者』で知られる詩森ろば氏が手掛けた。

御上は一見するとクールで冷徹な人物に見えるが、愛の人だとわかる人物。松坂はどのような意識でキャラクターを作り上げているのだろうか。

「人間はすごく多面的で、クールな人でも笑ったり、恐怖を抱いたり、不安な瞬間があったり。御上も場面場面で、生徒、理事長、是枝(文香)先生(吉岡里帆)、自分の母親、それぞれに対しての一面があり、クール一辺倒では絶対にいけないと思ってこの現場に参加しました。どんな人であれ絶対にいろんな面を持っていると思うので、連続ドラマだからこそ、その多面的な部分も幅広く、御上なりの深みを表現できればいいなと思って演じています」

また、これまでの撮影を振り返り、「毎話、御上が生徒に対して授業をするシーンが全部印象に残っている」と語る。

「アクティブリコールの話、ビジコン(ビジネスコンテスト)の話、文化祭の催し物をめぐるディベートの話……生徒自身に考えさせてみんなで共有していくというのがどれも印象的で、どのシーンにおいても、御上は『考えて』って必ず言うんです。その3文字のセリフが、場面によってニュアンスが自分の中でも変わってくるというか、生徒の皆さんのお芝居を見て変わっていくというのは僕自身も初めての経験でした」

そして、「これほどまでにやる意義のあるドラマだと思ったのは初めてです」と打ち明ける。

「すごくメッセージ性が強くて、考え方が偏りすぎだと言われかねない作品をやる意義というものを改めて実感しました。僕の仕事はエンターテインメントを伝える、作る仕事でもありますが、それと同時に、その時代の世の中に何を投げかけていくか、または、憂鬱な月曜日に重い腰を軽くさせることができるか。これからの役者人生において、そういうものづくりを続けていきたいと改めて思いました」

「僕自身が父親になったからこそ…」今後の教育環境に関心

本作を通じて一番伝えたいことは「考えること」だという。

「御上が再三言っている『考えて』。考えた上で答えは出ないかもしれませんが、考える力がきっとそれぞれの人生で必要なことなのではないかなと。今、世の中はものすごい情報化社会で、嘘もたくさんある中で、想像力を働かせながら、一面だけの情報に惑わされず、ちゃんと自分で考え続ける力が必要なのではないかということを改めて教えてくれる作品だと思っているので、僕自身にとってもすごく学びになりました」

2023年に第1子が誕生し、1児の父となった松坂。父親目線でも今後の教育について考えたという。

「僕自身が父親になったからこそ、10年後、20年後の日本の教育の環境がどうなっているのかすごく気になりますし、何より生徒自身が自主性よりも主体性を持って考え、発言に責任を持って物事に向き合っていく。そういった教育環境が主体となれば、また違った世の中になっていくのではないかなと思っています」

そして、子供にも「考えること」を伝えていきたいと言い、松坂自身、本作に参加して「子供に対する接し方が少しばかり変わった」と明かす。

「まだそんなに言葉もわからない年齢ですが、『一緒に考えてみよう』ということを言い続けようと心に決めました。親が歩んできた人生経験を経て答えを出すのは、そこまで難しくないと思いますが、子供と一緒に成長しながら考えることの大事さを改めてこの作品で学ばせてもらったので、この作品で得たものをしっかりと自分の人生においても持ち続けなければいけないなと思っています」