今も昔も、ストレス社会は健在。会社では常に競争のプレッシャーにさらされ、パワハラ・セクハラ・カスハラが日本中にはびこる……。知らず知らずのうちにたまるストレスは、しっかりケアしなければ!

今回は、そんなストレスを1泊2日で溶かしてくれる「温泉」と「入浴」にフォーカスした星野リゾートが展開するブランド「界」の一つ、「界 奥飛騨」の温泉プレスツアーに参加してきました。最強寒波到来のニュースが聞こえた日に……。

  • 「界 奥飛騨」の露天風呂付き客室

白銀に包まれた「界 奥飛騨」では、入浴と温泉の 医学研究者・早坂信哉さんによる「奥飛騨温泉の楽しみ方講座」を聞き、あこがれの雪見風呂を満喫し、飛騨グルメに舌鼓。さらには、ここにしかない「平湯温泉結氷祭り」を見学したり、日々の生活に役立つストレス解消ポイントを教えてもらったりしました!

■車を運転せずにのんびり奥飛騨温泉郷へ

白銀の世界を眺めながらの湯あみは、温泉好きなら誰もがあこがれる――とは言うものの、奥飛騨温泉郷は山岳地帯に位置し、冬は豪雪の影響もあるため「アクセスが大変そう……」と不安に思う人も少なくないはず。

でも大丈夫。奥飛騨温泉郷は、車がなくても行ける快適なルートが整備されているため、思いのほか楽にアクセスできますよ。

筆者が今回使ったのは、「新宿バスタ」から出ている平湯温泉行きの高速バスです。移動に約5時間かかりますが、車内には充電用コンセントやフリーWi-Fiを完備。途中で立ち寄るサービスエリアでバス旅気分も味わえて、座ってウトウトしているだけで行けてしまいます。

南アルプスや八ヶ岳、諏訪湖を見て気分爽快に! 流れる車窓を眺めていると、松本を通過した頃からどんどん雪深くなり、雪国へ来た感が強くなります。

■温泉+αの楽しみが広がる「界 奥飛騨」

奥飛騨温泉郷の玄関口「平湯バスターミナル」で下車し、歩いて5分ほどで「界 奥飛騨」に到着。敷地内は、東と西の宿泊棟、湯小屋、離れの4つの棟に分かれ、それぞれの建物はつながっています。最初に向かったのは、トラベルライブラリーがある離れ。

離れの中から外の景色を見てみると、こんもり積もった雪の厚みがすごい!! まっしろな雪の中に、オリジナル照明「飛騨玉」が灯りをともして、あたたかくお出迎え。

トラベルライブラリーでほっと一息ついたら早速、日本入浴協会理事であり、入浴を医学的に研究している早坂さんの講義がスタートです。テレビでもよく活躍されているので、「あっ、知ってる!」という人もいるのではないでしょうか。

講義の主な内容は……

・入浴の基本は、40℃でトータル10分の全身浴(副交感神経を優位に)
・入浴前後にしっかり水分をとることが大切
・かけ湯をすることでヒートショックを軽減する
・寝る90分前に40℃のお風呂に入ることで、よい睡眠につながる

などなど。

約30分間の講義でしたが、あっという間に思えるほど気づきの多い時間でした。ちなみに、環境省では今、温泉につかって終わりではなく、"温泉地そのもの"を楽しむことで、より健康になろうという「新・湯治」を推進しています。

湯治と聞くと、1週間ほどの長期滞在をイメージしますが……温泉地で観光を満喫する、日常とは違う空気を味わう、地元の名物グルメを食すなど、温泉+αの楽しみを入れることで、1泊2日などの短期間でも十分癒やし効果は得られるのだとか。

そんな「新・湯治」にふさわしい催しが、ご当地楽「飛騨の匠体験」。うれしいことに参加料金は無料です。

教えてもらえるのは、曲木(まげき)の技術。その名の通り、まっすぐな木材を曲げる伝統技術に挑戦し、界の風呂敷バッグの持ち手を手作りします。

はじめは「こんなに曲がるの?」と思っていた硬い木も、お湯にひたすことで柔らかくなり、どんどん曲がっていくから不思議です。

最後にスタッフさんに木を預け、レンジでチンしたら完成です。これがあれば、温泉に行くときやちょっとしたお出かけにぴったり。すぐに使えて便利です。

■雪見風呂を気軽に楽しめる客室

そして気になるお部屋は、先ほど体験した曲げ木や飛騨春慶、飛騨染を用いたお部屋「飛騨MOKUの間」。なんといっても、曲木をモチーフにしたヘッドボードが圧巻です。ベッドにごろんと寝転ぶと、まるで木に包まれているようなぬくもりを感じられて、とても落ち着きます。

ワイドデスクには、座り心地バツグンの飛騨産業の椅子が置かれていて、ワーケーションにもってこい。きっとエクストリームな記事が書けるに違いない……そう思ったけど、ゆったりのんびりできるL字ソファーに座ったら、時間が溶けていきました(笑)。

しかも、このお部屋には、大きな半露天風呂がついているんです! 3人同時に入っても、のびのびできる驚きの広さ。すぐ横の湯上がりスペースに腰掛ければ、足湯もサクっと楽しめます。

また奥のルーバー(目隠し)を開け放てば、ほら! 温泉好きあこがれの雪見風呂に変身です。

湯気の立つ温泉でじんわりあたたまりながら、しんしんと降りしきる雪を眺める――雪景色を眺めながらの温泉や、澄んだ空気の中でのんびりと過ごす時間が、心と体の疲れを癒やしてくれます。これぞまさに、日常から離れて違う空気を味わう「転地効果」の極みです。

■自然とひとつになれるアートな露天風呂

続いて向かったのは、大浴場がある湯小屋。客室棟からは少し歩きますが、道の下には、温泉の排湯を敷設したパイプが通してあるため豪雪でもへっちゃら!

男女別の大浴場は、内風呂と露天風呂があります。内風呂には、42℃ほどのあつ湯と38℃~40℃ほどのぬる湯が。あつ湯は、加水・加温・循環ろ過なしの源泉かけ流し! 温泉好きなら、入らない手はありません。

ただし、早坂さんのアドバイスによると、いきなりあつ湯にザブンはヒートショックの危険性があるためNG。体に負荷がかからないよう、かけ湯をして、ぬる湯→あつ湯の順で楽しみましょう。

泉質はナトリウム・カルシウム-炭酸水素塩・塩化物泉。わかりやすく言うと、塩と重曹が入った温泉のことです。それほど濃くない「低張性温泉」になるため、誰でも安心して入れる"よくあたたまる優しい温泉"と言えます。

露天風呂は屋根がなく、ぽっかり空いた空を眺めて、しっぽり温泉につかれます。この日は、風が吹き抜ける穴のふちに雪が降り積もり、まるで“かまくらの中"で湯浴みをしている気分。圧倒的な非日常感に包まれました。

■ワクワクする演出に心躍る夕食

さあ、お待ちかねの夕食。その土地の名物グルメを食べることも、ストレス解消になりますよ! 今回いただいたのは、飛騨食材をふんだんに使用した特別会席「飛騨牛の朴葉つと焼き会席」。

まず先付けが到着。その盛り付けに、うゎぁぁぁぁあ……と一堂、目がくぎ付けに。妖怪のように見えますが、これは飛驒山脈の山々の分霊をイメージした「山彦人形」。開運や厄よけの効果があるそうです。先付けは、酒の肴にもぴったりな郷土料理のすったてと牛しぐれ。

宝楽盛りは、漆仕上げの和紙貼りの器を使用し、囲炉裏端の趣を演出。お造りやくるみ味噌、渋皮栗の白あえなど、飛騨ならではの味覚を楽しめます。

メインの「飛騨牛の朴葉つと焼き」は、ヒレとロースの食べ比べを楽しめる一品。「つと」とは、食材を包み持ち運ぶために、わらなどを束ねたものを指します。この料理では、飛騨牛を包み、熱々の石の上でじゅ~っと自分好みに焼き上げるスタイルが魅力。塩、飛騨実山椒、漆黒しょうゆ、ワサビなどで味の変化を楽しみながら、じっくりと味わいました。

そして、デザートがまたユニーク。「飛騨コンロ」を模した器に入ったデザートは、2段仕様になっています。網の上に置かれているのは、こんがり焼かれた団子……ではなく、マシュマロ! これに甘くないみたらしのタレをかけていただきます。網の下の炭に見立てた黒ごまアイスも、サクッとおいしい!

■冬だけのお楽しみ「平湯大滝結氷まつり」

ちょうどこの日、飛騨の名瀑がライトアップされていると聞き、「平湯大滝結氷まつり」へ向かうことに。平湯大滝といえば、日本の滝百選にも名を連ねる飛騨三大名瀑のひとつ。毎年、2月15日~25日にかけて、氷結する滝がライトアップされるんだとか。

漆黒の中、浮かび上がる滝は幻想的。外はマイナス10度ほどでしたが、おしるこやあたたかい甘酒が振る舞われ、幸せな気分に。クライマックスには、平湯温泉スキー場の花火も見られて感動でした!

宿に戻ったら、すぐさまお部屋の露天風呂へ。保湿保温に向いた泉質だから、まさに言うことなし。冷えた体を即座にあたためてくれます。

■滋養滋味に優れた朝ごはん

ぐっすり眠った翌朝。体を目覚めさせてくれるのは、干し野菜がたっぷり入った「味噌鍋」の朝ごはんです。焼き魚に、めしどろぼ漬、牛しぐれなどなどごはんのおともが大集合。朝からもりもりお箸が進みます。

おなかいっぱいになったところで、運動も兼ねて、宿から3分の場所にある「平湯神社」へ向かうことに。豪雪ということもあって、参拝客は少なく静かで厳かな雰囲気。こんもりと雪をかぶった灯籠や雪壁の参道が、異世界感を醸し出していました。

本施設のチェックアウトは、12時。平湯神社から戻っても、まだひとっ風呂入る時間はあります。最後の最後まで温泉を楽しんだら、ストレスはすっかり湯に溶けていました。

また驚くことに、普段便秘気味なのに今回はお通じがすっきり! 早坂さんに聞いてみたところ、どうやら副交感神経がよくはたらき、ストレスが軽減されたおかげで排便までスムーズになったようです。ということで、「界 奥飛騨」は、私の腸まで革命をおこしてくれました。

ちなみに、一人専用部屋ができたのも、全国の界ブランドの中でここが初めて。ぜいたくなひとり旅にも、ぴったりですよ!

1泊2日の温泉ステイでも十分ストレスから解放され、心身がリフレッシュできる「界 奥飛騨」。つかの間の休日で自分をいたわりたいときは、ぜひ訪れてみてください。

■Information
「界 奥飛騨」
【住所】 岐阜県高山市奥飛騨温泉郷平湯138