プロボクサーの那須川天心が24日、東京・有明アリーナで開催される『Prime Video Boxing 11』で、元WBO王者のジェーソン・モロニーとバンタム級10回戦を行う。

キックボクシングで42戦全勝の戦績を残し、2023年4月にプロボクシングに転向した那須川。プロボクサーとして実績を積み、デビューから2年弱でバンタム級世界ランカー対決に挑む。一方、WBO王座を失ってから9カ月で再起戦に挑むモロニーは、5度の世界戦を経験している実力者。那須川が世界に一歩近づくのか、モロニーが意地を見せるのか、ハイレベルの攻防に注目が集まる。

そこで今回、新たにバンタム級のベルトを狙う那須川に、モロニーとの対決に向けた心境、キックボクシングからボクシングへの転向、挑み続ける理由など、さまざまな話を聞いた。

  • 那須川天心

“次期挑戦者決定戦”に自信「自分の中ですごくいい仕上がり」

――これまで5戦全勝だった那須川選手ですが、6戦目で世界ランカー対決に挑むことになりますね。

自分の中では、結構早いなと思いました。元々は、「10戦目ぐらいで世界タイトルに絡めれば……」と思っていたので。そこまで自分の実力が上がってきたんだという自負はあります。

――経験豊富なモロニー選手と対決するにあたり、これまでの試合とは違った感情はありますか?

何もないですね。今まで通りというか、変わらないというか。強がって言ってるんじゃなくて、ありのままでいれてるのが、自分の中ですごくいい仕上がりだなと感じてます。

――元世界王者ということは気にしない?

チャンピオンだからとか、あんまり思わない。相手がどうこうで格闘技をやっているわけではないので。自分を高めて、「これだったら大丈夫でしょ!」というところまでしっかりやっている。過去の試合の課題点を修正して、これまでトレーニングをしてきたという感じですね。

――勝ち筋は見えているのでしょうか?

たくさんあります。一個だけじゃなく、いろんなパターンを見つけてトレーニングしているところです。

――“次期挑戦者決定戦”とも言うべきカードですが、自信はある?

はい。

デビューから2年弱…次のフェーズは独自の“那須川天心スタイル”

――ボクシングを始めたころのご自身を振り返ると、どのように映りますか?

本当に別人ですよね。動きも初心者というか。もちろん、本気でボクシングに取り組んでるんですけど、まだ理解ができていない。でも、だんだんボクシングを理解できるようになってきたというか。格闘技としては一緒ですけど、キックボクシングとはまったく違うので。そこは本当にゼロから学んできましたね。

――現在はプロボクサーになったという実感がある?

なったというか、ボクシングというものを学んで理解したなっていう。そこからは、“那須川天心スタイル”じゃないですけど、相手との間合いだったり、自分の良さを入れていくということをやってますね。

――スパーリングなどで独特なスタイルだと言われることもありますか?

結構言われます。距離感だったり、何が来るかわからないって言われますね。

――プロボクサーとしての長期的な目標を教えてください。

とりあえずベルトは必ず獲りたい。そのうえで、いろんなベルトにも挑戦したいし。あとは、ボクシングをたくさんの方に知ってもらいたいし、好きになってもらいたい。ボクシングは人間ストーリーだと思うので、ボクシングを通じて何かを感じてもらって、次の日からのちょっとしたスパイスになってくれればうれしいなと思います。

――4団体王座統一戦への挑戦は?

やりたいですよね。だって、チャンピオンが4人いるっていうのは、ちょっとあれかなと思うので(笑)。「一人でしょ?」って思いますよね。だから、全員意識してますよ。だって、その位置にほぼほぼ手が届く位置までいますから。

プロボクシング転向の真意「作業になったら成長が終わる」

――キックボクシングからボクシングに転向した那須川選手ですが、どのような心境だったのでしょうか?

キックは相手もいないし。ずっとチャンピオンで、挑戦してきた相手と戦うっていう。すごいことですけど、僕には合ってないというか……。だったら、僕は飛び込みたいので、冒険しましたね。

人生は本当に一回しかないので。同じことの繰り返しをずっとしていると作業になってしまう。最初は新鮮でいろんなことをやるんですけど、作業になったら成長が終わると思っています。

僕も、「毎日の練習は作業じゃないか」と言われるかもしれないけど、練習の中で一つひとつの動き方だったり、日によっても違うので、いろんなことに集中している。例えば、パンチの打ち方もいろいろあるし。ただ、ボクシングだけじゃないと思うんですよ。毎日出勤して「これだけやる」じゃなくて、そのやり方が大事。一秒をどれだけ長く新鮮でいられるかが大切だと思います。

――もし、ボクシングに挑戦していなかったら?

ロックミュージシャンですね。やっぱり、歌って自己表現じゃないですか。一番人に伝わりやすいし、一番早いし。別にボクシングをやりながらでもできないことはないですけど、そこは「どうしようかな……?」と迷ってます。

いいことも悪いこともあるのが人生…「その落差をどれだけ楽しめるか」

――そんな那須川選手から、人生の転機が訪れた人へのアドバイスはありますか?

僕は、キックをやりきったので、ボクシングに転向したんですけど。やっぱりいろいろ考えると、理由をつけて動かないんですよ。だから、言ってるだけより、やってるヤツが正義だよと言いたいですね。まず行動に移すのが大事だし。

ただ、いろんなことに挑戦することも大切ですけど、ちゃんとやりきらないとダメだと思う。ちょっとやって「できなかった……」じゃなくて、一個のことを何年か時間をかけてやらないと、成功するかしないか、向いてるか向いてないかもわからない。僕は、やりきることが大事だと思っています。

――ボクシングを続けるなかで、つらいと思う瞬間もあった?

最初は結構思いましたね。壁にぶつかることもありましたし。でも、それがないと次に進めないので。成功してるだけの人生って、楽しくないじゃないですか。喜怒哀楽がしっかりあって、いいことも悪いこともあって。その落差をどれだけ自分が楽しめるのかっていうのは、すごく大事だと思います。

だから、いろんな壁に当たっても、「また来たか。やるしかねーな!」っていう切り替えですよね。ポジティブもネガティブも紙一重だと思うので、そこをどう自分でリセットできるかを、常に考えています。

――今回のモロニー選手との対決で、何か変わっていく予感はありますか?

いろんなことが変わっていくと思いますよ。でも、自分は変わらないですけどね。変わらずに変わっていきます(笑)。


『Prime Video Boxing 11』では、那須川とモロニーのバンタム級10回戦のほか、中谷潤人とダビド・クエジャルのWBC世界バンタム級タイトルマッチ、堤聖也と比嘉大吾のWBA世界バンタム級タイトルマッチを実施。3試合の様子は、プライムビデオで独占ライブ配信される(試合順は未定)。