2025年春より、漫画家・やなせたかしとその妻がモデルとなったNHKの朝ドラ『あんぱん』の放映がスタートする。ドラマの舞台となった高知県には一体何がある?! 高知に旅行したことがある人や、高知を愛する人たちが推す「高知の魅力」「高知あるある」1,000件以上の中から選出されたおすすめ王道スポットを巡ってきたので、紹介したい。
1. トーストにおにぎりと味噌汁?! 「喫茶デポー」で高知流モーニングを体験
喫茶店でモーニングというと、トーストや卵料理、サラダにコーヒーといったシンプルな内容が多いが、高知は一味違う。トーストに卵料理、サラダがつくだけでなく、おにぎりや味噌汁、スパゲッティやオムレツなど、とにかく朝からボリューム満点なのだ。
今回訪れた「喫茶デポー」京町店は、今から40年以上前にオープンした喫茶店で、高知モーニングがいただける人気店。パンと味噌汁という意外性のある組み合わせでモーニングを提供し始めたのも、ここ「喫茶デポー」が高知県内で初めてだという。名物の「高知のモーニング」(780円)は、トーストやおにぎり、味噌汁、ゆで卵、バナナ、サラダ、オムレツ、ウィンナー、ナポリタンがつく大満足な内容だ。
高知ならではのモーニング文化が生まれた背景について「喫茶デポー」スタッフの中山氏は「諸説ありますが高知は昔から共働きが多く、朝から家族で外食する文化があったことや、農家や漁師が多く朝昼兼用でたくさん食べたいと考える人が多かったことから、独特のモーニング文化が生まれたと言われています」と教えてくれた。高知に訪れたなら、ぜひ一度は体験した朝食だ。
2. 「土佐和紙工芸村くらうど」で伝統の紙すき体験
福井県の越前和紙、岐阜県の美濃和紙と合わせ「三大和紙」と呼ばれている高知県の「土佐和紙」。そんな土佐和紙の名産地が、仁淀川のほとりにある町だ。
このエリアの山間部は、和紙の原料となるコウゾやミツマタの栽培が古くから盛んで、水質が良く水量の多い仁淀川にも恵まれているなど、和紙作りの条件が整っていたことから名産地となった。
そんないの町にある道の駅「土佐和紙工芸村くらうど」では、紙すきや機織りなどの工芸体験ができる。紙すき体験では、はがきや色紙、名刺などの制作が5分~(乾燥時間30分)可能だ。今回はがき8枚に草花の装飾を施す紙すき体験(800円)をしてみた。
和紙の製造手法には、中国から伝来した「溜め漉き」と「流し漉き」の2種類があるそうで、ここでは「溜め漉き」を体験できる。コウゾとネリ、水を入れたすき船を良くかき混ぜ、かせを前後左右に揺り動かし、水分を絞って、乾かす。シンプルで理にかなった製法で、温かみのあるオリジナル土佐和紙を作り上げることができる。
併設されるレストラン「QRAUD」では、高知県食材を使った本格的なフランス料理のコースがリーズナブルにいただけるので、和紙体験と合わせて訪れるのもいいだろう。
3. カツオの一本釣りで有名な久礼の「田中鮮魚店」で藁焼き体験&ランチ
高知の名産品と言えば、カツオを欠かすことはできない。そんなカツオの一本釣り漁を400年以上前から行っているのが、高知県の南西に位置する久礼だ。
久礼の大正町市場に店を構える大正時代初期創業の「田中鮮魚店」は県内随一のカツオが味わえると評判の店。ここではカツオなどの魚介類を購入できるだけでなく、カツオの藁焼き体験と、ご飯や味噌汁が付いたカツオの藁焼きランチがセットになって1,500円(予約制)で楽しめる。
一本釣り漁は手間がかかり、多くを漁獲することはできないが、その分必要な分だけ獲ることができるサスティナブルな漁法の上、カツオに傷がつきにくく状態が良い。ベテランが目利きしたカツオを米藁で2分ほど「焦がし焼き」という手法で藁焼きすると、中は生で外は香ばしく仕上がる。鮮度が良くクセがない久礼の藁焼きカツオは、醤油ではなく、土佐の海塩をつけて食べるのがおすすめだ。
4. メロンやイチゴの宝庫「西島園芸団地」でフルーツ三昧
温暖な高知県は、ゆずに代表されるようにフルーツの名産地でもある。やなせたかし氏が幼少期を過ごした南国市にある「西島園芸団地」は、一年中様々なフルーツが味わえるとあり、県内だけでなく海外からの観光客も数多く訪れる人気の観光農園だ。
園内ではイチゴ、メロン、スイカ、マンゴー、フルーツトマトなど様々なフルーツが栽培されており、購入して持ち帰るだけでなく、その場で食べることもできる。訪れた1月はイチゴ狩り体験も行われていた。
ビニールハウス内は年中咲き誇るブーゲンビリアをはじめ、様々な草花で彩られている。花々に囲まれた桃源郷のような空間で、生絞りのメロンジュースやイチゴパフェなどフレッシュな特製スイーツを味わいたい。
5. 朝ドラ『らんまん』のモデルになった「牧野植物園」
2023年に放送されたNHK連続テレビ小説『らんまん』の主人公のモデルとして話題となった、植物分類学者の牧野富太郎博士は高知県出身。彼を顕彰する植物園として1958年に開園したのが「高知県立牧野植物園」で、ドラマのオープニングでもここの映像が使われている。県立で個人名がついた植物園は世界にも類を見ないそうだ。
第31番札所の五台山金色院竹林寺の敷地内に位置し、約8ヘクタールの園内に野生植物や園芸植物など3,000種類以上が自生しているかのように植栽されている。これは、フラワーパークとは違い植物の一生を学んでもらう研究施設という側面からだという。
エントランスからレセプションまでは博士ゆかりの土佐の植物が広がるほか、「ふむふむ広場」には実際に見て、触れて、匂いを嗅ぐなど五感で植物に親しめるエリアがあるなど、多彩なエリアで構成されているのも特徴だ。
展示館や記念館などの建物は、東京メトロ銀座線の渋谷駅を手掛けたことでも知られる内藤廣氏が設計を担当。サスティナビリティを意識した循環型の建築も見ものだ。
高知の魅力、あるあるが詰まった「高知かるた」をガイドブックに
今回紹介したスポットは、高知県を愛する人々から募った1,000件以上の応募の中から選ばれた「高知の魅力」「高知あるある」がつまった46のネタで構成された「高知かるた」で紹介されている。例えばかるたの「す」は「透きとおる 清流のごとき 土佐の和紙」、「ま」は「まちなかで 出会う自然は 牧野ワールド」といったような具合だ。「高知かるた」は県内の人の地元愛を育むだけでなく、県外の人にとっては高知の魅力を存分に味わってもらうためのガイドのような役割を担う。「高知かるた」を元に、旅のプランを計画してみるのも面白そうだ。
取材協力: 高知県/どっぷり高知旅キャンペーン推進委員会