サンデーボーダーならぬ、ワンデーボーダーとなりつつある筆者。年末に札幌でパウダースノーを楽しむ予定でしたが、体調不良で断念。
そんなとき、バートンジャパンの石原さんから「スノーボード体験企画に参加しませんか?」とのお誘いが。しかも、ギアは話題の「STEP ON(以下、ステップオン)」を試せるとのこと。
以前から興味があり、SNSでは「パウダーでは使いにくい」との意見も見かけたため、その真偽を確かめるべく新潟へ向かうことにしました。
平日の朝でも大混雑
朝7時東京発の上越新幹線に乗り、1時間で「越後湯沢」駅に到着。ここから無料のシャトルバスでゲレンデに向かう流れです。
重い板やブーツを持たないで良いのは本当に楽ですね!
平日の朝なので、人も少なくないだろうと思いつつ外に出ると、駅のバスロータリーはめちゃくちゃ混んでいます。
見たところ多くが日本の学生で、巷では「若者のウインタースポーツ離れ」が問題視されていますが、エリアによって多少異なるのでしょうね。
筆者がこのゲレンデに来たのは数十年前。当時は地味な印象でしたが、今は「女性の利用者でも楽しめる場所」として、映えスポットの充実、「GROUND BASE」というカフェ、レストラン、スポーツショップを備える建物、さらに湯沢エリア最大級という入浴施設「神の湯」まで、手軽に天然雪を楽しめるレジャースポットになっていました。
建物の更衣室でそそくさと着替えを済ませ、次は道具一式をレンタルします。
ここで簡単にレンタルするギアの説明をしましょう。ボード+バインディング、ブーツの3アイテムとなります。まずバインディングとは、スノーボード用のブーツとボードを固定する器具のこと。
バートンのバインディングは大きく「ストラップ式」「ステップオン式」の2つに分かれ、前者は昔からある「カチャカチャしてストラップでブーツを挟み込んで」固定する仕様。
後者はブーツのヒール(かかと)とトウ(つまさき)の両サイドにある計3つのコネクションポイントで固定する仕様で、2017年に誕生しています。
そして板はバートンがレンタル用に開発した「LTR=Learn To Ride(ラーントゥライド)」というボード。
「柔らかくてターンがしやすく、転びにくい」初心者にとっては魔法のようなボードとして、いくつか特徴があり、特に初心者によく起こる逆エッジ転倒を軽減させる為にエッジが緩く仕上げられているのはポイントでしょうね。
逆エッジで心を折られる経験は、誰もが通る道ですが、頭を打つリスクを考えると少ないほうがいいですし。あと、実は経験者にも「ある場面」で重宝しました。これは後ほど紹介します。
まずはレンタル?
準備が整い、いざゲレンデに。と思ったら途中の通路である映像が目に入ります。実はステップオンの使いかたを紹介する動画。
また、実際に板を置いてステップオンの着脱を練習できる台も用意されています。
地道に啓蒙活動に取り組んでいるのが分かりますね。逆に言うと、まだ利用者が多くはないということなのでしょう。
この点について、石原さんは「ステップオンのバインディング、専用ブーツとセットでそろえる必要があるので値段はそこそこします」と言います。
一緒にいるバートンの関係者の方は「スノーボードのギアを買う優先順位でいうと、まずウェア。次にボードとバインディングという位置づけだと思います。が、ステップオンはブーツもセットになってくる。だったらバインディングは使っていたものそのままで、板のみ買い替えましょうという考えになるのでしょうね」と周囲のスノーボード好きの例も踏まえて、背景を説明してくれました。
たしかに今の経済情勢を考えると、大きな金額を使うのは躊躇しますよね。特に年に数回も行かないというスノーボーダーなら尚更でしょう。
そこでレンタルという選択肢が出てくるということです。
ステップオンで滑る
では実際にステップオンの実力はどうなのか? 足慣らしも兼ねて緩斜面のゲレンデで試します。
ここで注意点が一つ。ステップオンはかかとでコネクトするので、パンツの裾はあげる必要があります。ブーツにクリップが付いているので、そこに挟んで干渉しないようにします。
緩斜面ということもあり、初めてのステップオン、ボードでも違和感なく滑れます。最近はパウダー専門のボードしか乗らない筆者ですが、形状が前後対象の「ツイン」のボードを久しぶりに堪能。
LTRは一般のボードより柔らかいので、ターンのタイミングもつかみやすく快適でした。当然、ステップオンだから何か違うということもありません。
あと、もう一つはスイッチして滑ると楽な点。ツインの板は左右の足、どちらを前にしても滑れて、筆者は通常は左が前。それを逆にして滑るのがスイッチです。この時、どうしても慣れてないので逆エッジしがちなんですね。
LTRの板はその不安が少ないので、楽しくスイッチで滑走できます。これは意外と経験者でもいいですよ。
新雪で使ってみた
次に新雪でのステップオンの使い勝手です。実際に着脱をしてみました。足首が埋まるような場所で外した状態からボードを装着してみました。
着脱にコツがあるので、多少戸惑いつつも問題なく使えますね。腰までのパウダースノーだとまた勝手が異なるでしょうが、そこまでいかない場合は大丈夫でしょう。
プロのライダーはステップオンをどう見ている?
パウダースノーでは使いにくいのでは? というステップオンに対する疑問は解消できたと思います。
着脱のコツをつかんで慣れるまでは戸惑いはあるでしょうが、そこはストラップ式でも同じではないかなというのが筆者の感想です。
ここからはステップオンに関するよもやま話や、今後の進化の方向性などを紹介します。まずはステップオンのメリットを「より」感じる場面についてです。
――ステップオンのメリット
石原さん「スノーボードを始めたばかりの人が『ストラップを締めるのが面倒くさい』と感じることはよくあります。その点、ステップオンなら素早く装着できるので、手軽さを求める人には特に向いているでしょう。あと、日本のスキー場はスキーヤーを想定して開発・設計されていることが多いので、フラットな場所をスケーティングする機会が多いですよね。ステップオンは、よりスムーズに移動できるのが便利だと思います」
日本のスノーリゾートは60~90年はじめ、スキー観光で発展した歴史を持つので、ゲレンデにもよりますが、スノーボーダー泣かせのリフトからリフトの横移動が大変という場所もあります。
そんな時でも、着脱が早いステップオンの強味が発揮されますね。
――トップライダーたちのステップオンへの認識
あとビギナーだけでなく、プロのトップライダーたちはどう捉えているのでしょうか。そんな話も出ました。
石原さん「トップライダーの多くは、競技では従来のストラップ式を使用していますね。コンペティションでは、『早く履く必要がない』ので、慣れ親しんだストラップ式を優先しますね。でも、フリーライディングやゲレンデで滑るときにはステップオンを使うライダーは増えています」
このエピソードはトップアスリートあるあるで、イチローが現役時代に、基本的にバットを変えなかったのも同じですよね。
逆に言うと、ステップオンに慣れたプロライダーは、大会でも使う可能性が高いでしょう。
実際、若手ライダーの竹内悠貴はバックカントリーフリーライディングを志してスノーボードを始め、ステップオンで育っているライダー。
そんな彼がフリーライドの大会でステップオンで参加し成績を残しました。これは大きな意味がある、と石原さんは話すのでした。
――ステップオンの進化
これからのステップオンの進化についても少し明かしてくれました。
石原さん「ステップオン用ブーツの従来の上位モデルにはストラップが付いていました。それが無くなり、代わりにBOAが一つ増えて3つになります。左右の両サイドと、ブーツのインナーに付きます。より足首周りのフィット感が高まるでしょう」
ということで、ビギナーから上級者までステップオンは対応できるとわかりました。
ちなみに一緒に滑ったバートンジャパンの関係者さんは「子どもに教えるとき、いちいち外すのが面倒だったお父さんやお母さんにもストレスがないのでいいですよ」と自らの実体験を交えておすすめしていました。
新しい道具を試すのもスノーボードの楽しみのひとつ。自分に合ったスタイルを見つけるきっかけになれば幸いです。