受験シーズンが近づく中、受験生にとって健康管理は非常に重要です。風邪やインフルエンザなどの感染症は、学習や試験のパフォーマンスに大きな影響を与える可能性があります。今回は、風邪や感染症を予防するための具体的な対策や、日常生活で実践できる健康管理のポイントについて、総合内科専門医・感染症専門医の小幡 史明先生にお伺いしました。

受験生が万全の体調で試験に臨むために、今からできる予防策を見直してみましょう。

■風邪や感染症の違い

――風邪とインフルエンザ・新型コロナウイルス感染症の違いは?

小幡先生:それぞれ以下のような原因・症状があります。

風邪

風邪は主にウイルスによって引き起こされます。最も一般的な原因はライノウイルスですが、他にもコロナウイルスやアデノウイルスなどが含まれます。症状は軽い喉の痛み、鼻水、くしゃみ、軽い咳、軽度の発熱などが見られ、通常1週間程度で自然に回復します。主に飛沫感染や接触感染によって広がり、感染者の咳やくしゃみ、または感染した物に触れることで感染します。

インフルエンザ

インフルエンザウイルスによって引き起こされます。A型、B型、C型があり、特にA型とB型が流行します。症状は、高熱(38℃以上)、激しい頭痛、全身の筋肉痛、関節痛、咳、喉の痛み、倦怠感などが急に現れ、1週間程度続きます。接触感染もありますが、飛沫感染が主な感染経路で、感染者の咳やくしゃみ、話す際に放出されるウイルスを吸い込むことで感染します。

新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)

SARS-CoV-2というウイルスによって引き起こされます。発熱、咳、息切れ、喉の痛み、味覚・嗅覚の喪失、筋肉痛、倦怠感、下痢など多様な症状が見られます。症状の重篤度は、ワクチン接種の有無や基礎疾患など、個人によって異なります。主に飛沫感染、接触感染、エアロゾル感染など、感染者の呼吸や会話によってウイルスが周囲に広がります。

風邪、インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症はそれぞれ異なるウイルスによって引き起こされ、症状や感染経路にも違いがあります。感染症を予防するためには、手洗いやマスクの着用、適切な距離を保つことが重要です。また、症状が出た場合は早めに医療機関を受診することをお勧めします。

■日常生活での予防策

――日常生活でできる予防策を教えてください。

小幡先生:手洗いは感染症予防の基本です。うがいは、喉に付着したウイルスや細菌を洗い流す効果がありますので、正しいやり方でしっかり予防しましょう。

正しいうがいのやり方

1.うがい薬を使用する場合:希釈したうがい薬を口に含む。
2.水を使用する場合:清潔な水を口に含む。
3.口を閉じて、喉の奥までしっかりと水を回す:10〜15秒間喉の奥までしっかりと回します。
4.吐き出す:水やうがい薬を吐き出します。
5.必要に応じて繰り返す:1日に数回行うと効果的です。

小幡先生:また、マスクも飛沫感染を防ぐための重要なツールです。感染者が咳やくしゃみをした際に、ウイルスを含む飛沫が周囲に飛散するのを防いだり、健康な人が感染者からの飛沫を吸い込むことを防ぎます。

正しいマスクの着用法

1.手を清潔にする:マスクを触る前に手を洗うか、アルコール消毒を行います。
2.マスクを持つ:マスクの外側を触らないように注意し、耳のひもを持ちます。
3.鼻と口を覆う: マスクを顔にフィットさせ、鼻と口を完全に覆います。
4.あごまでしっかりと装着する:マスクの下部があごの下までしっかりと覆うようにします。
5.マスクを外す際も注意:ひも部分を持って外し、外側には触れないようにします。使用後はすぐに廃棄し、手を洗います。

■予防するための健康的な生活習慣

――予防するための生活習慣を教えてください。

小幡先生:予防するためには、まずバランスのとれた食事が大切です。免疫力を高めるために不可欠で、野菜、果物、穀物、たんぱく質をバランスよくとりましょう。特にビタミンCやD、亜鉛は免疫力をサポートしてくれます。

また、体の回復と免疫機能の向上には、十分な睡眠も大切です。受験生も成人と同様に1日7~9時間の睡眠が推奨されています。睡眠不足は免疫力を低下させるため、定期的な睡眠リズムを保つことを心掛けましょう。

適度な運動もストレスを軽減し、免疫機能を高める効果があります。週に150分程度の中程度の運動(ウォーキングやジョギングなど)を目指しましょう。

■環境管理と衛生対策

――塾や学校などの共有スペースで気を付けた方が良いことを教えてください。

小幡先生:受験生が塾や学校などの共有スペースで気を付けるべきポイントをお伝えします。

手洗いの徹底

外出から帰った際や食事の前後に、必ず手を洗いましょう。石鹸と水を使って20秒以上洗うことが推奨されます。手指消毒液を持ち歩くと便利です。

マスクの着用

特に人が多く集まる場所では、マスクを着用して飛沫感染を防ぎましょう。マスクは鼻と口をしっかりと覆うように装着します。

ソーシャルディスタンスの確保

他の人と距離を保つことが大切です。できるだけ1メートル以上の距離を保ち、混雑を避けるよう心がけましょう。

共有物の取り扱いに注意

教材や文房具など、他の人と共有する物に触れた後は、手を洗うか消毒することが重要です。

換気を良くする

学校や塾の教室は定期的に換気を行い、空気の入れ替えを行いましょう。窓を開けることで新鮮な空気を取り入れることができます。

――受験勉強中の外出の注意点は?

混雑を避ける

通勤時間帯や休日の混雑する時間帯には外出を避け、静かな時間帯に出かけることをお勧めします。

公共交通機関の利用に注意

電車やバスを利用する際は、できるだけ人の少ない時間帯を選び、マスクを着用して感染リスクを減らしましょう。

体調管理

外出前に体調を確認し、風邪やインフルエンザの症状がある場合は、無理をせず自宅で休むことが大切です。

■保護者が注意すべきポイント

小幡先生:保護者が受験生の健康を守るために注意すべきポイントもお伝えします。

健康状態の確認

日々、受験生の体調を確認し、異常があれば早めに医療機関を受診するよう促しましょう。

生活習慣のサポート

バランスの取れた食事、十分な睡眠、適度な運動を促し、健康的な生活習慣を維持できるようサポートしましょう。

ストレス管理

受験勉強はストレスが多くなるため、リラックスできる時間や趣味を持つことを促し、メンタルヘルスのサポートを心掛けましょう。

衛生管理の徹底

家庭内でも手洗いやうがいの習慣を徹底し、必要に応じてマスクの着用を促すなど、衛生管理を行います。

受験生が塾や学校での感染症予防を意識することは非常に重要です。手洗いやマスクの着用、ソーシャルディスタンスの確保など、日常生活の中でできる対策をしっかりと行いましょう。また、保護者も健康管理や生活習慣のサポートを通じて、受験生の環境を整えることが大切です。これらの対策を実践することで、受験勉強に集中できる健康的な状態を維持しましょう。

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