常識では考えられない“不可解な異常事件”を、世界最古の捜査機関と呼ばれる“全領域異常解決室/通称・全決(ぜんけつ)”メンバーが解決へ導いていくフジテレビ系ドラマ『全領域異常解決室』(毎週水曜22:00~ ※きょう4日は休止、FODで第9話先行配信中)。完全オリジナルの今作の脚本を手がけるのは、2009年の『LIAR GAME Season 2』を皮切りに、最近では『グランメゾン東京』(19年)や『TOKYO MER~走る緊急救命室~』(21年)、実写版『ゴールデンカムイ』シリーズに、メガヒット劇場アニメ『ONE PIECE FILM RED』(22年)など、ジャンルを問わず注目作を送り続ける黒岩勉氏。そして、報道記者出身のフジテレビ・大野公紀氏がプロデュースを務めている。

そんな両氏に、今作へのこだわり、残り2話となり盛り上がりが最高潮になっているクライマックスへ向けての見どころなどを聞いた――。

  • 『全領域異常解決室』主演の藤原竜也 (C)フジテレビ

    『全領域異常解決室』主演の藤原竜也 (C)フジテレビ

常識では解明できない“不可解”が神の仕業だった

今作は間違いなく、誰も見たことのない全く新しいドラマだと言い切れる。なぜなら“不可解な異常事件”を解決する、タイトル通りの「全領域異常解決室」の活躍を描いたちょっと変わったミステリードラマで、いわゆる事件解決ものなのかと思いきや、全くそうではないからだ。

連続する“不可解な異常事件”の犯行声明文を出す“ヒルコ”の存在を軸に、物語の前半こそ“異常事件”が超常現象ではなく人間による犯行だったことが明かされるものの、回を追うごとに常識では解明できない“不可解”が凌駕し始め、それが日本に存在する八百万の“神”の仕業であるということが分かり、ついには「全決」メンバー全員が“神”であることも判明した。

そこから神と神との抗争が起きているのか!?…という構図を見せた次の瞬間、実は神と人間との戦いなのではないか?という側面も匂わせるなど、二転三転するミステリーでありSFであり、オカルトでもありながら、リアリティーたっぷりの人間ドラマ…ならぬ“神”ドラマへと見事に昇華させている。そんな前代未聞の作品なのだ。

  • (C)フジテレビ

“神話”と“超常現象”の膨大なリサーチからスタート

この誰も見たことのない今作が立ち上がった経緯を聞いてみると、「初めて黒岩さんとお会いした時に『アメリカに“全領域異常解決室”っていう組織があるんですけど、知ってます?』と聞かれたことがきっかけでした」と語る大野氏。

そもそもの出発点について、黒岩氏は「数年前なんですが、伊勢詣の移動でタクシーの運転手さんにいろんな話を聞いていくうちに、日本人が知っているようで知らない日本神話を元に、アカデミックな感じの、ドラマで学びながらもエンタテインメントになる作品を作ったら面白いんじゃないかと思ったんです。そこからもう一人のプロデューサーである成河(広明)さんと、せっかくだったらあまり見たことのないドラマをやりたいねということで、“全領域異常解決室”と“神”の話を一緒にできないかな?と、“神話”と“超常現象”の膨大なリサーチとともに始まっていきました」と教えてくれた。

そんなある意味突拍子もない設定のドラマをどう見せるかには工夫が必要だと考えたそうで、「以前『O-PARTS~オーパーツ~』(12年)というSFのオリジナルドラマをやったんですが、見てくれた人の反応はすごく良かったんです。だけど、やっぱりお客さんを選ぶというか、民放の地上波でSFファンタジーをやることの限界を感じたんです。だから最初はもうちょっと多くのお客さんが見てくれるパッケージの、いわゆるミステリードラマで、一話完結もののフリをしておいて、途中で実はこれまでの事件はすべて神様が人間に気づかれないように丸く収めていたんですと明かしたほうがいいんじゃないかと思いました」と黒岩氏。

大野氏もこの点について、「その打ち出し方についてはギリギリまで精査しました。第1話から神様についてのドラマだと謳(うた)ってファンタジーのように見えてしまうと視聴者の方が離れてしまうんじゃないかという不安もあったんです。だけど、まず事件解決のエンタメとして楽しんでもらった先に、“こんな奥行きのあるストーリーになる”と知っていただきたい思いがあったので、その“ゲームチェンジ”をさせる上で、第5話が象徴的なお話になったかと思います」と明かす。