フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00~ ※関東ローカル)で、17日・24日・12月1日の3週にわたり放送される『炎の中で死んだ父を僕は知らない』。自分の人生を翻ろうし続けた父の足跡をたどるテレビディレクター・落合陽介ギフレさんの“旅”を追った作品だ。
取材・制作したのは、陽介ギフレさんと同じ制作会社に所属する後輩・宗田祐佳ディレクター(ユーコム)。旅に同行して、陽介ギフレさんの複雑な感情が解かれていく様子や、亡き父の愛される人柄が伝わってきたという。『ザ・ノンフィクション』初の3週連続企画で、24日(通常回と異なり13:40~)の第2話放送前に、話を聞いた――。
母は心を病み孤独死、弟は20歳で命を絶つ
2024年4月、画家・落合皎児(こうじ)さんが火事で亡くなった。長野の実家に駆けつけた息子の陽介ギフレさん(44)に遺されたのは、父が描いた1,000点もの絵と約1,500万円の借金。かつて、ピカソやミロといった巨匠と並ぶ「スペインの現代作家150人」に選出された父だが、もし絵画を相続するなら、父の借金も全額相続することになる。父の絵を守る方法を探して、陽介ギフレさんは生前の父を知る人々を訪ね回る旅に出た。
幼い頃から両親は不仲で、中学校から実家を出た陽介ギフレさんは、父のことをよく知らない。その後、母は心を病み孤独死。弟は20歳で命を絶った。そんな家庭で育ち、ただ一人残された陽介ギフレさんは「家族4人の写真」さえ一度も見たことがなかったのだ。
なぜ父は家族をバラバラにしてしまったのか…いつしか息子の旅は、その答えを探す旅へと変わっていた……。
テレビディレクターの仕事をしながら月半分長野へ
今回の企画が立ち上がったのは、陽介ギフレさんから。その真意を、宗田Dは「多額の借金があるけど、絵は残したい。そのためにどうしたらいいのか分からなくて、何とかするために自分を奮い立たせる意味で企画書を書いたのではないかなと思います」と想像する。
そのため、当初は陽介ギフレさんが自分で撮っていく“セルフドキュメンタリー”形式で制作することも考えたが、客観視するディレクターとして同じ会社の後輩である宗田Dを立て、陽介ギフレさんが取材対象者になる形になった。元々陽介ギフレさんは番組にすることを考えていなかったが、記録として残そうと様々な場所で撮影を行っていたことから、今回の番組ではその映像もふんだんに使用している。
父親が大量に残したメモや手紙を手がかりに取材を進めていったが、とても陽介ギフレさん一人で読める量ではないため、宗田Dが一緒に読み込むことも。「元々同じ番組でディレクターとADだった関係なので、今回の取材もディレクターとして追っているというより、ギフレさんが父を知る活動のアシスタントみたいな時期が結構あって、“これで正解なのだろうか…”と悩みながら取材していました」と打ち明ける。
陽介ギフレさんは本業のテレビディレクターの仕事をしながら、この半年間、月の半分は長野に足を運んでいたのだそう。「長野で編集作業もするし、自分の担当番組の打ち合わせもリモートでやっていました」ということからも、父の足跡をたどる旅に大きく力を注いでいたことがうかがえる。