2018年放送の『西郷どん』の小松帯刀、2021年放送の『青天を衝け』の土方歳三に続き、『光る君へ』(NHK総合 毎週日曜20:00~ほか)で3度目の大河ドラマ出演となった俳優の町田啓太。出演発表の際には「大河ドラマは、本気でやれば本気で応えてくれる挑戦の場」と語っていた町田が、撮影を終え、今回“挑戦”したことについて振り返った。
町田が演じたのは、芸事に秀でた公家・藤原公任。関白の父と、天皇家に繋がる血筋を持つ母という一流の家系に生まれたサラブレッド的な存在だが、藤原道長(柄本佑)には出世争いで後塵を拝し、政治の世界ではやや一歩引きつつも、非常に近しい関係性で支えるという役柄だ。
町田は公任という役について「公任は引かざるを得ない立場だったのかなと思うんです」と自身の解釈を披露すると「父が関白を辞めたとき『お前はお前で頑張れ』と言われて、それから紆余曲折ありましたが、やっぱり後ろ盾がある人が出世していく世界。それが公任は身に染みて分かっていたんだと思います。でも資料を見ると仕事はできたし、芸事には秀でた人。どこか政治とは違うところで戦えると思ってシフトしていったのかなと思います」と役への理解を述べていた。
そんな公任と良いコンビを見せたのが、秋山竜次演じる藤原実資だ。町田は「すごく面白かったですね」と撮影を振り返ると「結構真面目なシーンが多い中、秋山さんとのシーンは楽しみでした。いつもちょっとずつ秋山さんは何の前触れもなく芝居を変えてくるんです。最後見切れる部分で含みを残した表情を見せたり、(金田哲演じる藤原)斉信と2人で話しているシーンで、向こうからこっちをずっと見ていたり……。次はどんなことをするんだろうと、ちょっとビクついていました。スタッフさんにも何か突拍子もないことが起こるのかも……という何とも言えない空気感があって。それがいいんですよね」と笑う。
和歌や龍笛、漢詩、打毬などに挑戦「大きなチャレンジでした」
町田にとっては3度目となる大河ドラマだ。『西郷どん』、『青天を衝け』では幕末の偉人を演じたが、本作では、平安時代の公卿と役割は一変。しかしどんな役でも「大河ドラマは挑戦の場」と町田は語る。
今作でも、町田はさまざまなことにチャレンジした。「特に序盤は挑戦ごとが多かった」と語ると「和歌や龍笛、漢詩、打毬など、これまでやったことがなかったことが多く、すべてしっかりと魅せられるようにしなければいけないというのは、とても大きなチャレンジでした。そこに説得力がないと平安の世界観が崩れてしまうので」と振り返る。
特に苦戦したのが漢詩。「ナレーションに被るところもあり、オンエアされているよりも長く覚える必要がありました。『これはちょっと危ないかも』と危機感はありました」と苦笑いを浮かべる。
それでも各々指導を行う人たちが熱意を持って取り組んでくれることで、町田自身もやる気が増していった。劇中では“芸事に秀でている公任”を見事に体現。町田は「先生方から『とても公任に見えました』と拍手してくださったことは、すごく勇気づけられました。一生懸命挑戦したことに対して、応えてくださるというのは、僕にとって大きなエネルギーになりました」とすがすがしい表情で語っていた。
役を通じて得たことが、自身の人生を充実したものにしてくれる――というのも俳優の醍醐味の一つ。町田は「なかなかプライベートで継続するのは難しいのですが、書は今後も学んでいきたい」と語ると「大人になっても書く機会って結構あるんですよね。自分のサインも漢字で書いているのですが、下手くそな字なので、もっと流ちょうな字になればいいなと思っているんです」と思いを馳せていた。