藤井聡太王将への挑戦権を争うALSOK杯第74期王将戦(毎日新聞社、スポーツニッポン新聞社、日本将棋連盟主催)は挑戦者決定リーグが進行中。10月24日(木)には永瀬拓矢九段―西田拓也五段の一戦が東京・将棋会館で行われました。対局の結果、得意の振り飛車ミレニアムを用いた西田五段が141手で勝利。相手の見損じに乗じて3勝1敗と暫定首位に立ちました。

こだわりの振り飛車ミレニアム

永瀬九段1勝0敗、西田五段2勝1敗で迎えた本局、先手となった西田五段は四間飛車+ミレニアム囲いという布陣を採用。この3日前に行われた3回戦・近藤誠也七段戦でも用いている作戦で、西田五段のこだわりがうかがえます。前局と同じく居飛車側が穴熊に組んだとき、西田五段は4筋の歩突きから守りの桂馬も跳ねていく先攻の構えを取りました。

玉側の端攻めから主導権を握った西田五段は一転して左辺に角をのぞいて揺さぶりをかけます。続いて攻めの要に見えた角と銀を見捨てて敵陣に飛車を成り込んだのが驚きの勝負手。形勢は難解ながら、二枚飛車を手にして実戦的な指しやすさを実現した格好です。こうなると振り飛車側はミレニアム囲いの深さが光ります。

急転直下の金星

ジリジリとした押し引きが続くかと思われた終盤の入り口に事件が起こります。1分ほどの考慮ののち、後手の永瀬九段はさりげなく角で拠点の歩を取ったもののこれが失着。直後に先手から詰めろ角取りをかける筋が生じて形勢が大きく傾きました。ここまで丁寧な受けを続けてきた永瀬九段としては一瞬のエアポケットに泣かされた形です。

飛車を犠牲に角金の2枚を取る駒得を果たした西田五段はその後もよどみない指し手でリードを拡大しました。終局時刻は18時41分、最後は自玉の詰みを認めた永瀬九段が投了。最後の詰み筋に入るまで指した終局図に永瀬九段の無念が表れていました。本局に勝利した西田五段は初参加となる王将リーグで3勝1敗と暫定首位に立っています。

水留啓(将棋情報局)

  • 感想戦では西田五段が左辺に角を飛び出した中盤の攻防が重点的に調べられた(写真は第17回朝日杯将棋オープン戦のもの 提供:日本将棋連盟)

    感想戦では西田五段が左辺に角を飛び出した中盤の攻防が重点的に調べられた(写真は第17回朝日杯将棋オープン戦のもの 提供:日本将棋連盟)