東京・日本橋の名建築、重要文化財の日本橋三井本館と日本橋三井タワー1階で、10代と写真作家による写真展『between A and B』が開催されています。国内外で活躍する写真作家4組の新作展示に加えて、10代のためのクリエーションの学び舎「GAKU」で写真の授業を受講した12名の10代による成果展。気鋭のアーティストと10代による実験的でユニークな作品が、レトロ建築や日本橋の街角など複数会場にまたがって登場しています。

  • 日本橋で写真展『between A and B』が開催

日本橋三井タワー1階アトリウムには、暗室を模した4つの空間で、オノデラユキ、 迫鉄平、Nerhol、 濱田祐史という4組の写真作家が自由に構成した新作を展示。この会場では写真現像に用いる暗室に入り込むような感覚で黒い幕を開けて中に入り、作品を鑑賞するスタイル。作品を紹介する案内情報が極めて少ないため、鑑賞者は自分が見ているこれは何を表現しているのだろう? どんな意味を持つんだろう? と思い巡らせながら自由に想像し、自分なりの答えを探していきます。

  • オノデラユキ「World Is Not Small 1826」

カメラの中にビー玉を入れて写真を撮影したり、事件や伝説からストーリーを組上げ、それに従って地球の裏側にまで撮影に行ったりと、あらゆる手法で「写真とは何か」「写真で何ができるのか」という実験的な作品を発表するオノデラユキ氏の新作は、世界中の地名を集めて作った標識を様々に配置したインスタレーション。長時間露光中にパフォーマンスを行って撮影したり、撮影した日に食べたものでフィルム現像するなど、自身の記憶や偶然などを介して写真の多様な表現機能に根ざした作品を制作している濱田祐史氏は、本企画のキュレーターも務めています。

  • 自身の作品「light there」で作品を解説する濱田さん

展覧会のタイトル『between A and B』は“AとBの境界線”を表している……のではなく、「物事のもの自由さを示すときに、鑑賞者や制作者の自由に置き換わることが可能ということを示した意味でのA and B。見る人が自由に作品を発想して解釈してほしい」という意図から、ガイドや案内はあえて少なく、そういった意味では“不親切な展覧会”かもしれないと、濱田さん。

  • GAKUの修了生たち

本展には、そんな濱田さんがメイン講師を務めたGAKUの写真の授業を受講した、12名の生徒による作品も出展。三井本館の入り口には4名の作家と10代の生徒12名による作品5点がパネル展示され、日本橋の街を行き交う不特定多数の人たちにも問いを投げかけているよう。

  • 三井本館の会場風景

普段はなかなか入れない三井本館も展示会場のひとつ。同館の名物であり“東洋一の大金庫”とも称される、米国モスラー社製の大金庫のある三井住友信託銀行地下1階には、4名の作家たちの創作プロセスをひも解く貴重な資料や初期作品を展示。暗室でネガを掘りながら回想していたもの、普段使っているスクラップブック、制作時に見ていた映画のDVD、初めてシャッターを押したときに祖母にもらった初めてのカメラとフィルム……4名の作家の制作の過程と記憶が展示されています。

  • 会場風景

また、GAKUで4ヶ月間に渡って写真の授業「自分だけの『見方』をつくる」を受講した12名の10代の修了生による作品は、大金庫と同じ空間に展示。カメラで日常的に撮影を行い、自分だけの“見方”を写真から探ってきた生徒たちは、授業の集大成となる大型パネルの写真と、個人が好きなものをまとめるインディペンデントな小冊子「ZINE」も制作。思考と実践を繰り返して“自分だけの見方”を探し、10代のみずみずしい感性で表現した作品は熱量にあふれ、爆発力を放っていました。

  • GAKUの修了生の作品展示

気鋭の写真作家と10代のコラボレーションとなる同展、日本橋三井タワー1階・アトリウムの展示は10月27日まで、三井本館地下1階の展示は26(土)・27(日)の開放、入場は無料です。

  • 三井本館

■information
写真展『between A and B』
会場:日本橋三井タワー1階・アトリウム、三井本館内 三井住友信託銀行地下1階
期間:10月20日~27日(11:00~18:00)/三井本館は20・26・27日のみ