2024年度グッドデザイン賞の受賞結果が10月16日に発表された。とくに優れたデザインと評価された「グッドデザイン・ベスト100」のひとつに、JR西日本「“特急やくも”のブランディング(273系電車と停車駅などトータルデザイン)」が選ばれた。
JR西日本の特急形電車273系は2024年4月6日にデビュー。同社とイチバンセン一級建築士事務所の川西康之氏、近畿車輛デザイン室が車両デザインを手がけた。
それまで「やくも」に使用された特急形電車381系は、製造後40年以上が経過し、老朽化していた上に、自然振子車両ゆえに乗り心地が悪いとの声も多く、多様化するニーズに対応できていなかった。「やくも」専用の新型車両として開発された273系は、乗り心地の良い最新の振子式車体傾斜システムを搭載。従来のイメージを一新するとともに、普通車の座席間隔を1,040mmとして居住性を高め、グループ向け座席やフリースペースなど新しい設備を配置した。バリアフリー設備もきめ細かい改良を実施している。
273系の投入を契機として、地域を巻き込んだエリアブランディングにも取り組んだ。関係者ワークショップでの成果を設計に反映し、車内外に沿線地域の「らしさ」を盛り込んだ。移動時間全体の満足感を高める取組みとして、待合時間を有意義に過ごせるよう主要停車駅の待合室を改修し、ビジネス向けカウンター席やグループで楽しめる椅子等の制作を地域木材・家具職人に依頼したという。JR西日本として地域共生の実現をめざし、「車両~駅~地域の点と線から面へと移動時間全体をトータルでデザインした」とのこと。
2024年度グッドデザイン賞の受賞対象は全1,579件。この中で、さまざまな分野でとくに優れたデザインと高く評価された100件が「グッドデザイン・ベスト100」に選ばれる。「“特急やくも”のブランディング(273系電車と停車駅などトータルデザイン)」に関して、審査委員は「振り子式列車にはよいイメージがないかもしれないが、やくもは独自の技術による自然な遠心力で乗っていて違和感がない」「駅と列車を一体として捉えた新しいやくもから空間デザインの力を感じる」などと評価。一方、今後の課題として「使いやすいチケット購入システム」も挙がった。