いよいよ残り2週となった連続テレビ小説『虎に翼』(NHK総合 毎週月~土曜8:00~ほか ※土曜は1週間の振り返り)。このたび脚本を手掛けた吉田恵里香氏にインタビューし、本作でさまざまな立場の女性を描いた思いを聞いた。

  • 『虎に翼』花江役の森田望智

連続テレビ小説(朝ドラ)第110作となる『虎に翼』は、日本初の女性弁護士で後に裁判官となった三淵嘉子さんをモデルにした主人公・佐田(猪爪)寅子の人生を描く物語。伊藤沙莉が寅子を演じている。

女性の社会進出を描いた本作では、寅子のみならず、山田よね(土居志央梨)や竹原(大庭)梅子(平岩紙)ら明律大学女子部のメンバー、寅子の親友で寅子の兄・直道(上川周作)の妻・猪爪花江(森田望智)など、さまざまな女性の生き方が描かれてきた。

吉田氏は「自分の人生を自分で決めるということをテーマに書いていて、寅子だけでは描ききれない部分が多かったので、女子部のメンバーを最後まで出演させようというのは最初から決めていました。役者さんや演出の皆さんの力もあってメンバーがすごく愛される存在になったのはすごく幸せで、視聴者の反応もうれしく思っています」と反響に喜んでいる。

そして、女性たちを描く配分に気を付けたと語る。

「自分自身が働いているので、働いている側に立ってしまうと視点が狭くなってしまう。それは嫌で、バリバリ働きたい人、程よく働きたい人、家庭に入ってみんなを支えたり家のことを守りたいなど、心から望んだところにみんながいけることが一番だと思っているので、それになるためにはどうしたらいいか考えたときに、花江ちゃんなど、すべてのところから書かないとフェアじゃないと思い、配分を気を付けました」

また、「寅子だけが正しくないし、寅子も間違えるし、みんな間違えるし、みんなダメなところがある。あまり美化しないというのは、すべてのキャラクターにおいて気を付けました」と説明。登場人物の誰かに感情移入できるくらいさまざまな生き方が描かれているが、吉田氏は「そうなったらうれしいです。誰かに寄り添うと、見えてなかった視野や目線が見えてきたりするので、そういう体験を作れたらいいなと思って書きました」と思いを明かした。

また、森田演じる花江について「この作品のもう一人の主人公だと思っている」と語る吉田氏。

「朝ドラの中は何かを成し遂げた男性の奥さんがヒロインという物語がありますが、それにもなり得る人だなと。そういう朝ドラがあってもおかしくないように書いたつもりです。花江ちゃんは、外に出たいとか働きたいという気持ちは一切なく、家庭のために生きることに幸せを感じている人。そこは一貫して最初から最後までそうで、働きに出るという描写はやめようと。彼女が働いたのは戦後の縫い物の内職ぐらいで、そこはすごく気を付けました」

さらに、「社会構造的に、バリバリ働く人には誰かケアする人がいなきゃいけない構造になってしまっていると思いますが、なんとなく支える人が二軍扱いされるのが腹立つなと。家庭を円満にするかということがどれだけ大変で大事で、ご飯があるとかシーツがピンとしているとか、心地よい生活が送れるのはその人の努力であり、花江がそういうことを担っています」と花江に託した思いを述べ、「でもそれを全部担うのも違うと思っていて、家庭のことだからみんなが支え合うことだと思うので、猪爪家は途中からみんなで支え合う方向に変わっていっているんですけど、その主戦力は花江であるという風に描きました」と語った。

■吉田恵里香
1987年11月21日生まれ、神奈川県出身。脚本家としての代表作はドラマ『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』『花のち晴れ~花男 Next Season~』『君の花になる』、映画『ヒロイン失格』『センセイ君主』『ホリック xxxHOLiC』など。小説『脳漿炸裂ガール』シリーズは累計発行部数60万部を突破するなど、映画、ドラマ、アニメ、舞台、小説等、ジャンルを問わず多岐にわたる執筆活動を展開している。ドラマ『恋せぬふたり』で「第40回向田邦子賞」を受賞した。

(C)NHK