日産自動車が赤ちゃん本舗と組んで開発した運転中の子守り支援ロボット「INTELLIGENT PUPPET イルヨ」(コンセプトモデル)に新機能「マダイルヨ」を実装した。クルマに子供を置き去りにしてしまう事故を防止するとのことだが、どんな機能? デモを取材してきた。

  • 日産「イルヨ」

    日産「イルヨ」に新機能追加

そもそもイルヨとは?

イルヨは後部座席のチャイルドシート横に設置するロボット「イルヨ」と、運転席横のドリンクホルダーに設置するロボット「ベビー イルヨ」の2体1組で構成。ドライバーが自身の近くにある「ベビー イルヨ」に特定の言葉を投げかけると後部座席のイルヨが作動し、手を振る動作や「いないいない、ばぁ」などの動きでチャイルドシートの赤ちゃんをあやす仕組みだ。イルヨの近くにはカメラがあり、赤ちゃんの目の開閉を認識。赤ちゃんが目を閉じている(寝ている)とベビー イルヨも目を閉じて、親に赤ちゃんの状態を知らせる。

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    「イルヨ」がチャイルドシートの赤ちゃんを見守り、親のボイスコマンドに合わせて「いないいない、ばぁ」など「あやす」動作を行う。赤ちゃんが目を閉じるとイルヨがカメラで読みとり、運転席の「ベビー イルヨ」が連動して目を閉じる

日産と赤ちゃん本舗が共同で行ったアンケート調査によれば、6割以上がドライバーと子供のみでのドライブを週に1~2日以上経験している。そうしたドライブ中の悩みとしては、8割以上が「赤ちゃんが泣いた時にあやせない」と回答。この悩みの背景には、安全のため、生後15カ月未満の赤ちゃんは後部座席に「後ろ向き」に設置したチャイルドシートに乗せなければならないため、親子がお互いの姿を見られなくなる「チャイルドシートの壁」があるというのが日産らの考察だ。そこで開発したのがイルヨである。

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    後部座席の後ろ向きチャイルドシートに座っている赤ちゃんが泣き始めてもとっさにあやすことができないし、静かにしていればしているでなんだか気になる。イルヨは、そんな親の心理的負担を軽減するためのロボットだ

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    「イルヨ」が赤ちゃんを見守るためのカメラ

新機能のマダイルヨとは?

「マダイルヨ」は後席のチャイルドシートに赤ちゃんを残したまま親がクルマを離れてしまうことを防ぐ機能。イルヨのカメラで赤ちゃんが車内に残っていることを認識しているとき、親がクルマから3m離れるとスマートフォンの「LINE」に通知を飛ばすシステムだ。イルヨと親の携帯はテザリングでつなげる。通知は一度だけで終わるのではなく、クルマから親(のスマホ)が3m以上離れている限り飛ばし続ける仕組みとなっている。同機能はイルヨを体験した人やSNSでの要望に対応して実装したとのこと。もともと、イルヨにスマホ連携機能は備わっていなかったが、マダイルヨ実装にあたり同機能を追加したそうだ。

  • 日産「イルヨ」

    左がLINE内の通知画面。右の画像のように、赤ちゃん(クルマ)と親(スマホ)の距離が離れている限りは通知を送り続ける。ただし、スマホとイルヨはテザリングでつながっているため、距離が離れすぎると通知は届かなくなる。通知の音や消音モード時に通知が鳴るかどうかなどはスマホ(LINE)の設定次第だ。ちなみに、「マダイルヨ」の通知を送っているとき、「イルヨ」は手を振るジェスチャーで親に注意を促し続ける

  • 日産「イルヨ」

    「イルヨ」の開発では北里大学の協力を得て、赤ちゃんの関心を引きやすい色や姿を検討。いくつかの案の中からこの姿を選んだそうだ。開発にはぬいぐるみ作家も関わっているとのこと。カラーバリエーションはレッド、ピンク、バニラの3色

日産によるとイルヨを販売するつもりは現時点でないらしい。「親子でのドライブを楽しくする」という文脈で赤ちゃん本舗との協業を進める中で浮上したひとつのプロジェクトがイルヨの開発なのだという。

2024年9月15日には新機能「マダイルヨ」のお披露目およびトークイベントを日産グローバル本社ギャラリー(神奈川県横浜市)にて開催し、同15日~16日には一般向けにイルヨ体験会も実施するそうだから、どんなものなのか気になる人は足を運んでみてはいかがだろうか。