『源氏物語』を生み出した紫式部の人生を描く大河ドラマ『光る君へ』(NHK総合 毎週日曜20:00~ほか)はいよいよ後半に突入。吉高由里子演じる主人公のまひろ/紫式部が『源氏物語』の執筆をスタートさせ、内裏に上がって道長(柄本佑)の娘・彰子(見上愛)の女房として働き出すという大きな節目を迎えた。今後ますます書道シーンに注目が集まりそうだが、吉高は書道に苦戦しつつも成長を実感しているという。吉高にインタビューし、役や書道とどのように向き合っているか話を聞いた。

  • 『光る君へ』まひろ/紫式部役の吉高由里子

利き手ではない右手で特訓「向き合う時間だけ応えてくれる」

2014年に連続テレビ小説『花子とアン』で主演を務めてから10年というタイミングでの大河ドラマの主演を務めている吉高。2022年5月に制作・主演発表会見が行われ、昨年5月にクランクインしてから約1年3カ月経った。

「1つの作品にこれだけ長く携わるというのは朝ドラ以来。朝ドラは10カ月で、それ以上になりますが、生まれて初めて経験することって大人になるとなかなか出会えない。今回巡り合わせでこういう機会をいただき、初めての一歩を継続中の日々です。『私が紫式部よ!』なんて思ったことはないですが、“パープルちゃん”と呼んだりして皆さんに愛されるキャラクターになればいいなと思いながらやっています」

利き手ではない右手で書道シーンに挑んでいる吉高。放送が始まる前は「泣きそうになりながら書いています」「書くシーンをなるべく減らしてほしい」と吐露していたが、今回のインタビューでは「目で見てわかる成長というのは書かなと思います」と手ごたえを口にした。

「作品が始まる半年前ぐらいからコツコツ練習してきましたが、第2回の書くシーンは今見ると目も当てられない字だったと思います(笑)。当時はまひろも10代で、今は40歳代まで演じていますが、役と一緒に吉高も成長したということですねと言われているので、向き合う時間だけちゃんと応えてくれるものだなと思いました」

紫式部として『源氏物語』を書き進めることになるが、吉高は「集大成が始まる」という感覚があると明かす。

「まひろとしては、仮名文字を中心に、道長との文通は漢字をやってみたりしましたが、仮名と漢字どちらも集大成が始まるなと。『源氏物語』は漢字も仮名も両方出てきますし、現代ではあまり使われていない変体仮名も出てきます。不思議なのがその変体仮名も読めるようになって、身についているのが怖いです。身についているのか、こびりついちゃっているのかわかりませんが(笑)。書に対するプレシャーもあったし、わからないものを覚えていく楽しみもありましたし、できないものができていくという、10代の頃に見ていたような自分の成長が30代半ばで経験できるとは思ってもなかったのですごくワクワクすることもありますが、本番は公開テストのような感覚で怯えながらやっています」

柄本佑も「めっちゃ紫式部」と書道姿を大絶賛

本作では琵琶や乗馬などにも挑戦したが、一番苦労したのはやはり「書」だという。

「乗馬も難しくて、ジョッキーってすごいんだなと改めて思いましたが、一番難しかったのはやっぱり書かな。思ってもみない方向に線が行ってしまったりするので。この役をやる醍醐味でもあり、視聴者の皆さんが注目している部分だと思うので、緊張しますね」

書道シーンは手の震えとの戦いでもある。

「手の震えは日によって違うんです。練習時間は本番の10分前で、10分で仕上げてくれという謎のプレッシャーがあって(笑)。本当は30~40分ぐらい稽古すると手が温まって線が安定してくる感じがありますが、現場を30~40分も止められないので、10分でちゃんとできるようにするには家でコツコツやるしかないんです。家でできても本番だとスタジオの湿度とか風とかで墨の乾き方が変わってきて、家と同じようにいかない時があるので、スタッフの皆さんに『お祈りしていてください!』と言って本番に臨んでいます」

今でも緊張しながら書道シーンと向き合っている吉高だが、利き手の左手よりも右手のほうがうまく書けるほどになっているようだ。

「今、左手で筆は無理だと思います。右手で持つのと左手で持つのとでは筆の毛先の向きが変わるみたいで、左で書いたら全然違う字になっていくと思います。自分もそうですが、筆も育てている感じがすごく楽しいです。嫌ですけどね(笑)。いつも『いや~!』って叫びながらやっています」

道長役の柄本佑も「めっちゃ紫式部」「超紫式部」「以前、目にした紫式部の石像そのまんま」と大絶賛している吉高の書道姿。紫式部らしさを出すために意識していることはあるのか尋ねると、「会ったことないのでわからないですよ! 日本で一番有名な歴史上の女性なのに、こんなに情報ないの!?」と笑い飛ばした。

女房装束の大変さを吐露「どこで何しているのか全部丸出しに」

彰子が暮らす藤壺へ上がり、女房として働きながら執筆することに決めたまひろ。吉高は衣装が女房装束に変わって身動きが取りづらくなったと吐露する。

「為時邸にいた時のほうがはるかに身動きが取りやすい。(衣装の)幅が大きいので隠れていようと思っても隠れられない。どこで何しているのか全部丸出しになってプライベートがないよ! って感じです(笑)」

9月1日放送の第33回「式部誕生」から藤壺での新たな生活が描かれていく。吉高は「いよいよだなと。衣装も変わりましたし、場所も変わりましたし、毎日見ている風景もガラッと変わったので、自分で用意せずとも第2章に押し出されたような気がしました」と話していた。

■吉高由里子
1988年7月22日生まれ、東京都出身。2006年、『紀子の食卓』で映画デビュー。2008年に『蛇にピアス』で主演し注目を集め、2014年にはNHK連続テレビ小説『花子とアン』でヒロインを務める。近年の主な出演作は、ドラマ『最愛』(21)、『風よ あらしよ』(22)、『星降る夜に』(23)、映画『きみの瞳が問いかけている』(20)、『風よ あらしよ 劇場版』(24)など。

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