ミュージカルでの活躍はもちろん、最近はドラマ『こっち向いてよ向井くん』(日本テレビ系)、『アンメット ある脳外科医の日記』(カンテレ・フジテレビ系)などの映像作品でも、見る人の印象に残る重要な役どころを演じ、女優としての幅を広げている生田絵梨花。現在放送中のABCテレビ・テレビ朝日系ドラマ『素晴らしき哉、先生!』(毎週日曜22:00~)では、地上波連続ドラマ初主演を飾っている。

今作は、不本意にも担任を持たされ、辞め時を逸してしまった2年目の高校教師・笹岡りおが、なんだかんだ生徒のために奮闘を続ける中で人間として変ぼうを遂げていく成長物語。感情表現豊かなりおについて「これまでとは違うアプローチ」で挑んでいるという生田に、今作の魅力や学生時代の思い出を聞いた。

  • 生田絵梨花

    女優の生田絵梨花 撮影:泉山美代子

完璧ではない主人公で安心感与えたい

――今作の魅力に感じたところを教えてください。

題材は教師ですが、家族の物語も描かれていて、教師の方はもちろん、どんな方にも共感できる作品になっているところです。たとえば親や誰かの上司、先輩という立場の方であれば、一人の人間としての姿と、子ども、後輩や部下の前で見せる姿、どっちが本当の自分で、どうあるべきか、葛藤することがあると思います。りおも一人の人間として、教師として揺れ動きながら、決して完璧ではなく弱さを抱えて、迷いながら奮闘していて。そんな姿を見て、自分と同じだと安心したり、立ち上がるきっかけにしていただけたら、すごくうれしいです。

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先生の威厳や存在感の出し方が課題

――教師という職業への、イメージの変化はありましたか。

教師といえば、お手本であり、人格者というイメージがありました。でも今回りおを演じているうち、生徒が不安にならないように、生徒の支えになれるように堂々と教壇に立っているように見える教師も、悩んでいるし傷ついているし、改めて一人の人間なんだと実感しました。

――教師役を演じるにあたって、難しいと感じているところを教えてください。

生徒役の方と歩きながら話すシーンがあったのですが、撮影後にモニターを見たら、先生の威厳が1ミリもなくて!(笑)

――いやいや! でも、年齢があまり変わらないキャストの方もいらっしゃいますもんね。

そこがりおの新米教師ぶりとリンクしているとは思うのですが、教師らしい存在感を出せるかどうかは、課題だなと感じました。

生田絵梨花

高校時代は行事にしっかり参加

――生田さん自身の、学生生活の思い出を教えてください。

高校時代は行事にしっかり参加していて、体育祭実行委員会を務めたり、文化祭では音楽喫茶で友達と連弾したり歌ったりと、思い出がたくさんあります。高校時代の友達ともたまに会うのですが、私のいいところも悪いところも知ってくれている存在です。

今作の役作りでは新たなアプローチ

――最近の生田さんといえば、『こっち向いてよ向井くん』の美和子や、『アンメット ある脳外科医の日記』の麻衣という、一筋縄ではいかない、胸の内に思いを抱えたミステリアスな難役が続いていますが、反響や手応えは感じていますか。

別の現場でも「見たよ」と言っていただけることがすごく多くて、反響を感じています。毎回、悩みながら役と向き合うのですが、感想をいただけると安心しますし、楽しんでもらえていたら、報われたなと思えます。

――役作りで悩むポイントは。

台本を読んだとき、このキャラクターはなぜここでこんな行動を取ってこんなことを言うんだろう、と心情をスッと理解できずいつもつまずくんです。考えすぎてがんじがらめになって、監督さんたちにたくさん相談して、時間をかけて飲み込んでいます。でも今作のりおの胸の内は、シーンや台詞にそのまま表れているので、「なぜ、そんな行動を取ったの?」という疑問はわかないんです。台本を読んでいるだけで、りおの気持ちと自然とフィットしていくというか。

――りおの思いは、きっと視聴者にも伝わりやすいですよね。確かに『向井くん』の美和子は、序盤では何を考えているか分からないミステリアスなところが、作品の軸そのものになっていて。

そうなんです!(笑)美和子は、心情を分析して、想像で埋めていく作業がたくさん必要な役どころでした。今までは、「完全にこのキャラクターを理解した」と思わないと、役としてその場にいられない感覚に陥ってしまって、怖くて演じられませんでした。でも今回は、完璧に役を作り上げる前に、りおを信じて実際に演じてみることが必要で。演じながら実感できるもの、演じていて変化していくものを大切に役に飛び込んでいく感覚は、この作品、この役ならではだなと、これまでとのアプローチの違いを感じています。

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■生田絵梨花
1997年1月22日生まれ、ドイツ出身。乃木坂46の1期生として活躍し、2021年末で同グループを卒業。女優としても幅広く活躍し、代表作はミュージカル『レ・ミゼラブル』『ロミオ&ジュリエット』、映画『コンフィデンスマンJP 英雄編』『Dr.コトー診療所』、ドラマ『PICU 小児集中治療室』『こっち向いてよ向井くん』などに出演。2017年に第8回岩谷時子奨励賞、2019年に第44回菊田一夫演劇賞を受賞した。また、ソロアーティストとして全国ツアーを今年開催中。NHKの音楽番組『Venue101』ではMCを務めている。2024年は、ドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』に出演。『素晴らしき哉、先生!』で地上波連続ドラマ初主演を飾る。
スタイリスト:有本祐輔(7回の裏)、ワンピース:Arobe、他スタイリスト私物、ヘアメイク:北原果(KiKiinc.)