1台あたり数千万円~数億円の希少車が集い、世界の大富豪が注目する「高級車オークション」。めったに足を踏み入れられない世界だが、日本で開催されるとの情報をつかんだので、プレビューデーに会場を偵察してきた。そこには、クルマ好きなら卒倒しかねないめくるめく空間が広がっていた。

  • BINGOの高級車オークション会場

    高級車オークション会場に潜入!(本稿の写真は撮影:原アキラ)

どんなオークション?

株式会社BINGO(BH AUCTUION)は7月28日、「シティサーキット東京ベイ」(CITY CIRCUIT TOKYO BAY、東京都江東区)でオークションを開催した。

2017年に日本発信型の本格オークションハウスとして活動を開始したBINGO。それぞれの“個”が持つ価値を高いレベルでつないでいくことをテーマとし、希少価値の高い国内外のコレクタブルカーやレーシングカー、自動車パーツなどのオークションを行ってきた。

今回の会場には計31台の出品車両が集結。その中から最も高いクルマ、古いクルマ、気になったクルマをピックアップして紹介したい。オークションにはどんな人が参加するのかも聞いてきた。

  • BINGOの高級車オークション会場

    オークション会場にはクルマ好き垂涎の希少車が大集結していた

フェラーリ275GTBはケタ違い!

出品車両には「Estimate」(落札予想金額)を記したステッカーが付いていて、どのくらいの金額で売買が成立するのかを想像することができた。出品車両の中でEstimateが最も高かったのが、1966年式のフェラーリ「275GTB」だ。

  • フェラーリ「275GTB」
  • フェラーリ「275GTB」
  • フェラーリ「275GTB」
  • 1966年式のフェラーリ「275GTB」

250GT系の後継モデルとして1964年のパリサロンでデビューした275は、ショートノーズの初期型が236台、1965年からロングノーズに変更された275GTBが206台、1966年にSOHCからDOHCエンジンに変更された275GTB/4が331台生産された。この個体は1966年製で、SOHCエンジンを搭載する275GTBの最後から2番目に生産された1台だという。

  • フェラーリ「275GTB」
  • フェラーリ「275GTB」
  • フェラーリ「275GTB」
  • フェラーリ「275GTB」
  • 275GTBの最後から2番目に生産された1台

流麗なピニンファリーナデザインのスカリエッティ製スチールボディを纏うこの個体は、1966年9月にイタリア・ボローニャのオーナーのもとに納車。1970年代にカナダ、カリフォルニアへと渡り、1989年から1990年にかけては外装色をブルー、内装をタンカラーにするなど22.5万ドルという大規模なレストレーションを敢行した。

その後はスイスへ渡り、2014年にエンジン、ギアボックス、イグニッションなどの主要部分をオーバーホール。2016年には「フェラーリクラシケ」を獲得し、さらに10万ドルをかけて出荷時のシルバー外装色、ブラックレザーの内装に戻してある。

こうした高い水準で維持、メンテナンスが行われているだけでなく、ユーザーマニュアルやそれを入れるレザーカバー、車載工具、記録簿などの重要なアイテムがきちんとそろった由緒正しい個体であるため、落札予想金額は5億円~6億円となっていた。

戦後アルファロメオ初のロードカーを発見!

出品車両で最も古かったのは1947年式のアルファロメオ「6C 2500 Sport Fressia D’Oro」(スポルト フレッチア・ドーロ)。戦後アルファロメオが初めて販売したロードカーで、生産台数680台という希少なモデルだ。

  • 1947年式のアルファロメオ「6C 2500 Sport Fressia D’Oro」(スポルト フレッチア・ドーロ)

その価値は、ボルテッロのアルファロメオ自社工場で手作業で生産されたモデルであること。他モデルも含め、ここでは2,200台しか生産されていない。それと、テレスコピックショックアブソーバーを備えたトーションバー式リアサスペンションや油圧ブレーキなど、当時としては革新的な技術が盛り込まれていているところも魅力だ。

映画『ゴッドファーザー』で、アル・パチーノ演ずるマイケル・コルレオーネがシチリア島に滞在した際、彼の妻に運転を教えたのがこの6C 2500(ボディは黒)だった。そのクルマ、裏切り者によって爆破されてしまうのだが、「なんともったいないことを!」と思ったのは筆者だけではないはずだ。

出品された個体の走行距離は4万827km。ブルーの外装塗装やメッキパーツに大きなサビは発生していない。ベージュの布張り内装に多少のシミが見られる程度で、メンテナンスが行き届いた状態だ。落札予想金額は2,000万円~2,200万円となっていた。

たくさんあるぞ! 気になったクルマたち

このほかに気になったモデルを順不同で紹介していきたい。

  • のポルシェ「356Aスピードスター」
  • のポルシェ「356Aスピードスター」
  • のポルシェ「356Aスピードスター」
  • ドイツ車では1957年のポルシェ「356Aスピードスター」。ジェームス・ディーンの愛車として有名なモデルで、レッドの外装とブラウンレザーの内装の状態は極上。走行距離はわずか1,132マイルで予想価格は5,500万円~6,500万円だった

  • アルファロメオ「ジュリア スプリント スペチアーレ」
  • アルファロメオ「ジュリア スプリント スペチアーレ」
  • イタリア車では1963年のアルファロメオ「ジュリア スプリント スペチアーレ」。ボディを見てわかるように、ベルトーネによる先進的なデザインは有名な1900 C52“ディスコボランテ”がルーツで、Cd値は驚異的な0.28を誇り、最高速度は200km/hを超えるという。オドメーターは2万9,578km、予想価格は2,500万円~3,500万円

  • ランチア「フルヴィア クーペ1600HF」
  • ランチア「フルヴィア クーペ1600HF」
  • ランチア「フルヴィア クーペ1600HF」はアルミのドアとボンネット、プレキシガラスのリアウインドウ、ワイド化したリアフェンダー、純正のバンパーレス仕様などで武装するCorsaモデル。生産台数はわずか400台という希少車だ。オドメーターは6万5,244km、予想価格は1,500万円~1,800万円

  • ランチア「デルタHFインテグラーレ」

    ランチアではおなじみの「デルタHFインテグラーレ」も発見。こちらは日本向けに250台だけ生産された最終モデル「デルタHFインテグラーレ エヴォリューションⅡ コレツィオーネ」だ。ボルドーレッドに青と黄色のストライプが他との識別点で、エディションナンバーは124。オドメーターは3万1,872km、予想価格は2,700万円~3,300万円

  • シボレー「コルベットC1」
  • シボレー「コルベットC1」
  • 米国車では1961年の初代シボレー「コルベットC1」後期型に目を奪われた。4.6LのV型8気筒エンジンから5.72LのV8に換装されたエンジンを搭載するこの個体は1,800万円~2,500万円

  • シボレー「コルベットC3」

    「スティングレイ」の愛称を持つ1972年の「コルベットC3」も800万円~950万円で出品されていた

  • 日産自動車「R32スカイラインGT-R」

    日本車では相変わらず根強い人気の日産自動車「R32スカイラインGT-R」が出品されていた。走行距離はわずか2.806km。純正ホイールとポテンザRE71(純正装着タイヤ)を装着していて、まるで新車のような状態だ。価格は2,000万円~2,500万円

  • フェラーリ「365GTB/4デイトナ スパイダー コンバージョン」
  • フェラーリ「365GTB/4デイトナ スパイダー コンバージョン」
  • フェラーリ「365GTB/4デイトナ スパイダー コンバージョン」
  • ちょっと“お買い得(?)”と思われたのが、1972年のフェラーリ「365GTB/4デイトナ スパイダー コンバージョン」。通常なら1億円近い価格で出ていそうなものだが、値札を見ると5,000万円~6,000万円になっている。聞けば、ベルリネッタボディの365GTB/4のルーフを取り払ってスパイダー仕様にコンバージョンしたため、とのこと。仕上がりはすばらしく、オリジナルにこだわらないなら手に入れたい個体だ

  • フェラーリ「512BB」

    オリジナルフェラーリではクラシケ付きの1981年製「512BB」に出会った。走行距離21,452kmのこの個体は7,000万円~8,500万円となっていた

  • BMW「320i(E21)」

    高額モデルの出品が多い中、筆者が手に入れられそうなのはここからの2台だ。まずは1979年製のBMW「320i(E21)」。MT左ハンドルでシャモニーホワイト/ブルーインテリア、5万3,756kmの個体は250万円~350万円

  • ローバー ミニ・クーパー

    もう1台は1993年の「ローバー ミニ・クーパー」。1.3Lのインジェクションエンジンを積んだMTモデルは、エンブレムやテールランプ、ハンドルやメーター類などを変更し、クラシカルなMk.1ルックに仕上げられていた。価格は200万円~250万円

こうした超高級車のオークションに参加するのはどんなメンバーなのか。関係者に聞いてみると、やはり会社経営者やお医者さんなどでクルマのコレクターが多いそうだ。ただ、本気で購入する方はそれぞれのエージェントに任せるので、会場にご本人が参加することはないのだという。