脱サラして成功した人を目にすると、「自分も独立してビジネスがしてみたい」と憧れるものです。しかし、脱サラしてうまくいく人もいれば、残念ながら事業が失敗に終わってしまう人もいます。

では、脱サラに失敗してしまう人にはどのような特徴があるのでしょうか。今回は、脱サラのメリットやデメリット、失敗する人の共通点や独立を成功させるためのポイントを解説します。脱サラを考えている人は、独立のリスクをあらかじめ知り、成功の秘訣を探ってみましょう。

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■脱サラのメリット、デメリットとは

脱サラとは、会社員を辞めて独立することを指す言葉です。多くの人が自分の夢を追い求めるため、またはより良い生活を目指して脱サラを考えます。しかし、脱サラにはメリットとデメリットが存在しますので、それぞれをよく理解したうえで慎重に決断する必要があります。脱サラにはどのようなメリット、デメリットがあるのでしょうか。

<脱サラのメリット>

・自分のやりたい仕事ができる

脱サラをする最大の魅力は、自分のやりたい仕事に自由にチャレンジできることです。会社員の場合、必ずしもやりたい仕事ができる時ばかりではありませんが、独立して起業すれば、自分のビジョンに基づいてキャリアを築き、自己実現を図ることが可能になります。仕事に対する満足感が高まるだけでなく、人生の質も向上し充実した日々が送れるでしょう。

・高収入を得るチャンスがある

月額固定で給料を受け取る会社員とは違い、独立すると収入の上限がなくなります。成功すれば、会社員時代には考えられなかったような収入を得ることも可能です。

特に、特別なスキルがある人や成功のビジョンがある人、多く働きたい人には大きなチャンスがあるでしょう。脱サラして起業すれば、努力や才能が直接収入に反映されるため、モチベーションの向上にもつながります。

・定年がない

定年がなく、自分が働きたい年齢まで働ける点も脱サラのメリットです。企業に勤めている場合、一般的には60歳や65歳が定年となりますが、脱サラして自分のビジネスを持つことで、そうした定年の概念がなくなります。

健康であれば自分のペースで働き続けることができ、長期的なキャリアプランを立てることもできるでしょう。特に、「人生100年時代」と言われる昨今、公的年金や退職金だけで長い老後生活を送るハードルは高まるばかりです。定年がなければ65歳以降も働けるため、老後資金への不安を和らげることにも役立ちます。

・節税対策になる

脱サラして起業すると、会社員時代よりも節税対策ができるようになります。会社員も確定申告によって必要経費を控除してもらえますが、個人事業主や法人のほうが経費計上できる範囲が広くなるからです。

たとえば、脱サラして自宅で仕事をしている場合、家賃の一部を経費として計上できるケースがあります。また、家族を役員や従業員とすれば、役員報酬や給与を支払うという形で所得を分散し、所得税率を下げることができます。

<脱サラのデメリット>

・収入が不安定になる

脱サラの最も大きなデメリットは、収入が不安定になることです。自分次第で高収入が得られる可能性もありますが、一方で決まった収入はなくなってしまいます。

また、会社員のような有給休暇や福利厚生もないため、体調を崩すなどして働けなくなった時のリスクは高くなります。安定した収入がなくなる分、生活費や事業資金の確保が大きな課題となるでしょう。

・失敗した時のダメージが大きい

ビジネスに失敗した時のダメージが大きいこともデメリットです。仮にビジネスがうまくいかなかった場合、収入源だけでなく出資した資金も失い、さらには負債を抱える恐れもあります。また、金銭的な損失だけでなく、精神的な打撃を受ける可能性もあるでしょう。

会社員なら減俸や始末書の提出で済むようなミスも、独立すると生活の基盤を失うほどのダメージにつながるかもしれません。

・本来の業務以外の仕事がある

独立すると、日々の経理作業や確定申告など、本来の業務以外の仕事も自分で行わなければなりません。業務が終わってもこれらの作業に取り掛かる必要があるため、働く時間が長くなったり、休みを取ることが難しくなったりすることもあります。

独立すると、会社員時代は会社がやってくれていたさまざまな雑務を自分で行う必要があることを理解しておきましょう。

・起業直後は社会的信用が低い

脱サラして起業すると、これまでの会社の後ろ盾がなくなり、一時的に社会的信用が低くなることがあります。そのため、ローンやクレジットカードの審査に通りにくいといった経験をするかもしれません。ただし、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」を利用したり、法人用のカードを作ったりすることはできますので、うまく活用しましょう。

■脱サラに失敗してしまうパターン10選

脱サラして起業し、10年後も事業が続いている割合は全体の3〜6%程度とも言われています。とても厳しい数字ですが、脱サラに失敗してしまう人にはどのような特徴があるのでしょうか。特によくみられる共通点を厳選してご紹介します。

1.いきなり法人化してしまう

法人化は、事業を正式にスタートさせる重要なステップですが、準備不足のままいきなり法人化してしまうと、予期せぬ税金や法的責任が重くのしかかります。また、法人化には運営コストもかかり、個人事業主としての柔軟性を失う可能性もあります。

まずは個人事業主として事業を始め、成果が得られた時点で法人化するなど、タイミングをよく見極めましょう。

2.初期投資をし過ぎる

多くの起業家が陥りがちなのが、必要以上の初期投資です。高価なオフィスや最新の機器に投資することは魅力的かもしれませんが、収益が安定する前に大きな負債を抱えるリスクがあります。そうした事態を避けるには、まずは最小限の投資で事業を始め、徐々に拡大していく戦略を取りましょう。

3.資金計画や管理ができない

脱サラすると安定的な収入ではなくなるため、自身でしっかりと資金計画を立て管理する必要があります。予算を超える支出や不十分な資金調達、不透明な会計処理は、事業を脅かす大きな要因となります。資金計画や管理は事業を継続させるために不可欠なスキルですので、脱サラする前によく心得ておくことが大切です。

4.営業やマーケティングが苦手

営業やマーケティングは、事業を成長させるための重要なカギです。これらのスキルが不足していると、顧客の獲得が困難になり、事業は停滞してしまいます。市場調査や顧客ニーズの理解、効果的なプロモーション戦略を学び、事業に合った営業や集客を行いましょう。

5.仕事の取り方がわからない

仕事の獲得方法がわからないことも、脱サラ後の大きな障壁となります。たとえば、自分の専門分野についての問い合わせが来ているにもかかわらず、「どのように受注に結びつければいいのかわからない」というケースです。

案件獲得につなげるには、あらかじめプランを複数用意して案内できるよう準備を整えておきましょう。また、自分が提供できるスキルを整理しておくと、問い合わせに対して明確に対応でき、結果的に多くの仕事につなげられます。

6.数字に弱い

数字に弱いことも、脱サラ後の起業に失敗しやすい要因の一つです。起業すれば、基本的には売上や経費を考慮しながら収益をあげていく必要があります。しかし、数字に弱く、そこから目を背けてしまうと、事業を継続することや事業の健全性を評価することができません。

起業して自分でビジネスを行うなら、経済の動向や自社のお金の流れは最低限把握できる力を身に付けましょう。

7.人やツールに頼れない

人やツールに頼れず、全て自分一人でこなそうとする人も失敗しやすい傾向にあります。チームワークやツールの活用は、効率的な事業運営には不可欠です。全て自分一人で行おうとすると、作業の質が低下したり、事業規模が大きくなるにつれ挫折を招いたりすることもあるでしょう。

自分のスキルや強みを生かすことは大切ですが、適切に人材を採用し、効率化ツールを導入することも考えましょう。

8.スキルが不足している

そもそも、必要なスキルが不足していると、脱サラして起業しても事業はうまくいきません。中には、「会社を辞めたい」という理由で勢いで脱サラしてしまう人もいますが、知識や経験が浅く、結果的に廃業に追い込まれることもあります。

独立して生き残るためには、継続的な学習とスキルアップは不可欠です。独立はゴールではなくスタートですので、常に学び続けることを意識しましょう。

9.資金不足

資金不足で脱サラ・起業に失敗するケースも多くみられます。特に、人件費や物件費、運転資金など固定費が多くかかる事業の場合、売上が軌道に乗るまで予想以上に時間がかかり、その間に資金不足に陥ることもあります。

また、たとえ融資などで資金を確保していても、資金繰りや事業の見通しが甘く、結果的に資金不足になってしまうケースも珍しくありません。資金不足にならないためには、事業計画や資金計画をしっかり立てたうえで、資金調達の選択肢を理解し、余裕を持って資金を確保しておくことが重要です。

10.計画性がなく準備不足

計画性のないまま脱サラすると、思うように売上が上がらなかったり資金がショートしたりして、事業が失敗する原因になります。また、準備不足で商品やサービスの質が劣っている、納期に間に合わないなどの事態になれば、顧客からの信頼を失ってしまいます。

脱サラに成功するには、事前の綿密な計画と準備が欠かせません。

■脱サラに失敗しないための対策4つ

脱サラに失敗してしまうパターンはさまざまありますが、そうした失敗をせず独立を成功させるにはどのような対策が取れるのでしょうか。特に大切な4つのポイントを解説します。

1. まずは副業から始める

脱サラの失敗を回避するには、安定した収入源を持ちながら、まずは副業として事業の基盤を築くことをおすすめします。副業であれば、リスクを最小限に抑えつつ、ビジネスの知識と経験を積むことができます。

副業として成功すれば、本業への移行もスムーズに余裕を持って行えるでしょう。

2. フランチャイズを活用する

独立の際、フランチャイズを活用するのも一つの手です。フランチャイズは、すでに確立されたビジネスモデルを利用できるため、起業のリスクを減らすことができます。また、ブランドの知名度や運営ノウハウを活用し、事業を加速させることも期待できます。

起業が初めての場合、サポート・研修体制が整っている本部がおすすめです。自分一人での起業に不安がある方は、フランチャイズも検討してみましょう。

3. 入念に事業計画や資金計画を練る

事業計画や資金計画を事前にしっかりと立てることは、脱サラ後の成功に不可欠です。まずは情報を集め、どの分野なら成功できる確率が高いか、どのようなリスクが想定されるかを検討します。そして、予期せぬ出費や市場の変動に対応できるよう、余裕を持った計画を作成しましょう。

4. 経営しやすい事業を選ぶ

事業を成功させるには、自分のスキルや経験のほか、市場の需要・規模を総合的に考慮し、経営しやすい事業を選ぶことが重要です。自分のやりたいことだけを優先せず、現実的に経営できる事業を選ぶことで成功に近づきます。

■脱サラは慎重に検討しよう

脱サラ・起業は、誰でも成功できるものではありません。しかし、綿密に計画を立て、長い時間をかけて徹底的に準備を進めた人ほど、独立に成功しやすい傾向にあります。事業が成功するか不安な方は、副業として試しておくと安心できます。いざ会社を辞めてしまえば、元の状態に戻ることはできませんので、脱サラは慎重に検討を重ねましょう。