NTTグループの女性役員らによる有志の会「チームSelf as We」が中心となり、横須賀市教育委員会の後援で実施した体験型イベント「ICTの仕事とわたしの未来 in横須賀2024」が6月23日に開催された。

これは中学生向けのイベントで、ICTが生み出す世界の魅力を、チームSelf as Weのメンバーによるトークセッションや、技術を応用した体験コーナーを通じて伝えようという試みとなる。どのような内容のイベントとなるのか、取材してきたので早速紹介しよう。

  • チームSelf as We:左から、NTT 執行役員 広報部門長 関根万紀子氏、NTT東日本 執行役員 神奈川事業部長 兼 神奈川支店長 相原朋子氏、NTTデータ 執行役員 第四公共事業本部長 青木千恵氏

理系女子の先輩から学ぶ『技術』の活かし方とは?

今回の取り組みはNTTグループの女性役員が中心となり発足した「チームSelf as We」が主導したイベントだ。

チームSelf as Weは、NTTグループが制定した「NTTグループサステナビリティ憲章」の基本となる「Self as We」を柱とし、「自然(地球)との共生」「文化(集団・社会~国)の共栄」「Well-being(幸せ)の最大化」の3テーマで、持続可能社会の構築に貢献するという考えのもと、この変革を加速させるために同グループの女性役員らが発起人となり、起ち上がった団体となる。

その活動のひとつとして、今回の体験型イベント「ICTの仕事とわたしの未来 in横須賀2024」を企画。対象となる中学生およびその保護者らに、ICT技術がどのように社会に活かされ、求められているかを知る機会を周知する狙いがある。

横須賀市のNTTグループ拠点のひとつ、「ICT教育施設 スカピア」の設けられた会場に到着すると、すでに満席状態の参加者らが開演を待ちわびているのが目に入った。

「今回は技術系の学校へ進学したらどんなことが学べるのか、そしてそこで学んだ結果、どんな仕事ができるのかを具体的な経験談やICTを使った事例から体験したいただき、皆さまが今後進路を選択していく際の参考にしていただければと思います」と話すのは、冒頭のあいさつに立ったチームSelf as Weの青木氏。

  • 会場であいさつをする青木氏

最初のプログラムは、同じくチームSelf as Weの相原氏によるトークセッションとなる

「国語が苦手だから、理系や数学は苦手だからというのではなく、将来どのようなことをやってみたいと思っているのか、それは何の役に立つのか、そのためにはどのような勉強が必要なのかを考えるきっかけになるとよいなと思っています」と語る相原氏。

  • 続けて登壇した相原氏

自身が高校2年生のときに今後はこの世の中でコンピューターがとても大事なものになる、と考えるに至り、大学では情報工学を学ぶことにしたという相原氏。

「そこで学んだことを培って、日本を豊かな国にしたいと思いNTTに入社するという決断をしました」と同氏は自身を振り返る。

入社後はシステム開発から新規事業開拓などを手掛け、13の部署を体験してきたそうだ。

同氏は「仕事と育児をこなしつつ、現在は企業の方々や自治体としての横須賀市の方々と一緒に、ICTを活用した街づくりの課題解決の取り組みをしています」と説明を続ける。

その後、NTTが社会インフラを構築する事業者であり、それらの維持には多くのテクノロジーが活かされていることを説明。

「横須賀市の皆さまとは2020年に協定を結びそれ以来、さまざまな事業をしてきました。技術系で代表的な取り組みではeスポーツがあります」と解説。

横須賀市はeスポーツが盛んな地域であり、これによって人とのつながりを得たり、テクノロジーを学ぶきっかけをつかんだり、エンジニア、理系の知識が活かしやすい地盤でもあると言う。

他にも、AI活用、スマートアグリ、リモートテクノロジーなどの事例を分かりやすく示しつつ、ICTが社会でどのように活かされているかを説明。

「最初は学校同士をつないで授業できる環境をつくる仕事をやらせていただきました。深い学びを得られる環境づくりに貢献できたことは、私のその後の人生にも大きく影響を与えています。社会人になっても理系の技術・知識をアップデートさせつつ、営業や経営の仕事にも携わっています。技術の知識があると、社外の方へ説明や提案がしやすいので、実はテクノロジーの知識はどんな仕事でも使えるのです」と相原氏は語り、特別トークショーを終了した。

大興奮の体験コーナー

次の時間は中学生がチームごとに分かれておこなう体験授業だ。今回用意されたカリキュラムは「プログラミング」「脳波による感性分析(脳波)」「手首の筋肉を使ったゲーム体験(筋電)」だ。

  • 各コーナーではNTTグループのスタッフらが講師として生徒たちにアドバイス

  • プログラミングコーナー 提供:NTT

プログラミングのコーナーでは、IoTブロックを使い、さまざまなアプリケーションを実行させるという体験になる。

ブロックにプログラムを実行させ、タブレットを通じて出力先であるLEDブロックに「光る」「色指定」「明滅回数」などの命令を実行させることがゴールだ。

  • プログラミングを楽しむ生徒達と見守る保護者達

単純な「点灯する」から、「青色に変更する」、「点滅させる」といったプログラムから、「信号機を作る」といった応用まで、どんどんプログラミングは高度になっていく。

最終的には、身の回りのものからこの仕組みを応用して自分で独自のプログラムを組むところまで体験できる。

  • この命令であっているかな? 試行錯誤しながら楽しくカリキュラムは進んでいく

中学生ということで、プログラミングは体験済みという生徒も多く、最初こそ躓きがちではあったのもの、コツをつかんでしまうと、どんどん自分たちでプログラムを完成させていく。この世代の吸収力が非常に高いことに改めて感心させられた。

  • 脳波コーナー 提供:NTT

脳波コーナーでは、脳波を測定するヘッドセットを頭部に装着し、刺激に対する脳波を測定。画面に表示される映像や音から、その感じ方をマッピングして傾向を見るという体験が用意されていた。

  • この脳波測定器とタブレットで自分の脳波を確認していく

担当スタッフから脳波測定時の注意事項を聞くと、しばらくして全員の脳波が安定してくる。そのタイミングで、次々と表示される食べ物を見るとその時感じた刺激を脳波として取得していく。

最終的にそれらを解析し、マッピングすることで、今回は類似性を感じるもの感じないものに分けられ、自身の反応をみていくといった内容になる。

これによって、人によって同じ食べ物でも感じ方が違うことや、自分ではそう思っていても本心では違うように感じていたといった傾向を知ることができる。思ったとおりだった、いや違った、知らなかったと、生徒たちは大いに盛り上がっていた。

  • 画面に出てくる写真を見てイメージするだけ

  • 結果はこのように表示される。近い位置にあるものを近しいと感じている

  • 筋電コーナー 提供:NTT

筋電コーナーでおこなうのは実にシンプルなゲームだ。二人一組となり、片方は左右の動きを担当し、もう一方はジャンプを担当する。

一般的な入力デバイスなら、どんな中学生でも、あっという間にクリアしてしまうような内容だ。しかし今回は手首の筋肉の活動を計測し、「筋肉に力を入れる」「その力を抜く」といった筋肉の微弱な電力を使った入力によってこれらの操作をおこなうことになる。

  • 手首にセンサーを取り付けるところからゲームがスタート

入力装置を手首に巻き付け、いざゲームスタート。左右の動きが遅れることもあれば、ジャンプのタイミングや飛びあがる力の入れ具合がうまくいかず、最初はみんなが大苦戦。

しかし、さすがに飲み込みも早く、次第に独特の入力方法に慣れ、数分後には全員がクリアしていた。

  • ジャンプと左右の動きをうまく同調させて上部エリアを目指す

この入力方法が確立されることで、四肢不自由者のeスポーツ参加が可能となる支援技術として応用できる。このことがスタッフより説明されると、生徒も保護者も目を輝かせていたのが印象的だった。

全員がすべての体験コーナーを終えたところで、今回のイベントは終了となった。相原氏による体験談や、最新技術の数々を体験できたことは、今回集まってくれた中学生たちにとって大きな糧となるだろう。

最後にチームSelf as Weのメンバーらに少しだけインタビューすることができたので紹介して記事を閉じたいと思う。

スペシャルインタビュー

――チームSelf as Weとしては初の外部イベントだそうですが、この時期にやろうと思った経緯を教えてください。

関根: チームSelf as Weが起ち上がったのが2022年。コロナ禍の騒動は落ち着いていましたが、イベントはまだ自粛という雰囲気の頃でした。

私たちのチームでは、二つ分科会があり、まずはNTTグループの中で女性の活躍を応援するもの。もうひとつが地域社会と一緒にやれることを探していくものなのですが、コロナ禍もあってなかなかやれる雰囲気になってはいなかったというのが実情です。

しかし、昨年ぐらいからイベントも徐々に開催され、地域コミュニティと一緒にやれることを検討していこうということで実施できたということです。

――今回、中学生を対象にされたそうですが、どのような理由があったのですか?

関根: イベントの企画を立てるときに、若年層の理系離れをNTTグループという立場で対策が立てられないかと考えました。若者が将来を考えるのは、どれぐらいからはじめるものなのかを調べたところ、中学生ぐらいからが適切だということになりました。

チームメンバーの相原さんが横須賀市と連携できるネットワークがあったので、最終的には横須賀市の中学生に集まってもらうことになりました。

――やっぱり理系を志してほしいという思いがあるのですか?

関根: NTTグループの中でも、今日は研究所のメンバーがたくさん来てくれています。基礎研究もいろんな分野をやっていて、理系といっても幅が広いのですが、NTTグループとしても、若い層から応援していかないと、企業の人材戦略も今後厳しくなるので、そういった課題解決につながればと考えています。

――今後はどのような展開をしていきますか?

関根: 今回横須賀市さんの協力があってイベントが実現できました。今後は、他の地域へ広げることはもちろん、他企業でも若年層向けにイベントをやられているところもあるのでそういうところと声を掛け合ってみるといったことも検討できればなと思っています。

相原: 社会の動きを知ってもらうための探求学習や総合学習みたいなものを学校でやっているところも増えています。私たちもそこに加わり、そういう機会を通じて社会はこういうことで動いているといったお話をしていきたいですね。今回のような活動を続けることで、皆さんの視野も広がるのではないでしょうか。

青木: 来年もこの会は続けていきたいと考えています。会場にいて、地域の方とNTTグループは、やはり密接につながっているのだなと実感しました。皆さまの生活を支えていく位置付けにある会社だと思うので、地域活性化につながる何かを女性目線で実施できたらいいですね。