――広瀬さんから見た風間さんはいかがでしたか?
広瀬:風間さんとは、以前パラリンピックのお仕事で何度かご一緒したことがあったので、「熊役は風間さんです」って聞いて、とてもしっくりきたんです。熊さんと風間さんのキャラがリンクしてるというか、風間さん自身すごく話しやすくて、安心感があって。私の体調面とかもいろいろ気に掛けてくれるし、親戚のお兄ちゃんみたいな感じなんです。
風間:いやいや、僕の立場からすると、全然親戚なんかじゃないんですよ! なのに、熊と千紗のあいだには、ロマンスのかけらもないっていうのが、またね……(苦笑)。
広瀬:お芝居をしていると「気持ちがいい間」みたいなものってそれぞれあるとは思うんですけど、今回、北村さんをはじめ、奥田さんや音尾さんを相手に千紗が"戦う"場面では、「あえてそのリズムを崩すことで自分を追い込みたい」という変なモードに入っていたんです。でも、熊さんと一緒にいるシーンだけは、リズムを合わせられるし、千紗の心の中の重いものがフッと軽くなる瞬間でもあったので、私にとってはものすごく心地がよくて。
風間:僕個人としては、広瀬さんが、この作品が持っている暗い部分や辛い物語を慈しめるところも、明るさと表裏一体にある魅力だと感じていたので、今回の現場で"陰と陽"の広瀬アリスを同時に見ることができたことも、僕にとってはすごく贅沢で幸せな時間でした。ただ、ある時、控室のドアが半分開いているのに、僕のことなど全く気にせず広瀬さんが着替えようとしたことがあって……きっとそれも親戚みたいだからなんでしょうね。
広瀬:風間さんって、一緒に居てもまったく違和感がないんです。
風間:ロマンスって、その違和感から生まれるものなのに、風間俊介には違和感がない。シームレス!
広瀬:まさに、それ(笑)!
風間:それで喜んでるようじゃダメなんだけど、でも、それも含めて僕なんですよ(笑)。そういえば、香川で僕らが宿泊していたホテルにスーパー銭湯が併設されていて、「ご宿泊の方は無料でご利用いただけます」ってアナウンスがあって。さすがに僕は行かなかったんですが、広瀬さんは入りに行ったっていうんですよ! 広瀬アリスが地元のスーパー銭湯に普通に現れたら、さすがにビックリしますよね? 衝撃で、香川が揺れたらしいですから。
広瀬:アハハ(笑)! あそこの足つぼマッサージのお姉さん、めちゃくちゃ腕が良かった!
風間:これですよ! 広瀬アリスが人々に愛される理由は。このエピソードにすべて詰まってる(笑)。
――(笑)。お二人とも「大森組」に参加されるのは今回初めてですが、大森監督の演出はいかがでした?
広瀬:大森さんに「いまのだとお芝居になっちゃってるから、もっと力を抜いてやって」って言われて、最初は「えっ!?」と思ってかなり混乱していたんです。でも実際に力の抜けている状態の北村さんを見て、「あ、こんな感じか!」って学ばせていただきました。
風間:右に同じく(笑)。熊としては、キツく結ばれた物語の紐を緩める"コメディリリーフ"的な役割を果たせたら……みたいな下心が僕のなかにはあったんですが、「あ、大丈夫。そういうのはいらないから」って、大森さんにはかなり早い段階で見抜かれて(笑)。
広瀬:自分で観ていてよく分かるんですが、その場で私たちが体感していたリアルな緊張感が画面越しにも伝わってくるんです。そういうのが大事なんだって気づかされました。
風間:実際に会話してるときは、次に誰が喋り出すのかなんて本当はわからないもんね。
広瀬:そうそう。咄嗟に言葉が出なくて少し間があいたりするのも、逆にすごくリアルだし。役者同士の駆け引きや息遣いまで、そのまま本編に乗ってる感じも私は好きですね。
風間:「たまたま居合わせた人」のような視点で観られるドラマになっていて驚きました。
―——最後に、ドラマを楽しみにしている方々にメッセージを!
広瀬:「何が真実で、何が正義なのか」ということより、「信じるとは、どういうことなのか」というところに行きついたことが、自分にとってはものすごく大きくて。観終わった後、「果たして本当にこれで幸せだったのかな……」ってしばらく余韻に浸ってしまいました。皆さんの心のなかにもそんな余韻が少しでも生まれたら、挑戦した甲斐があります。決して明るい話ではないですが、各話ごとにめいっぱい心を揺さぶられてほしいです。
風間:いろんな意味で、すごく「面白い作品」に仕上がっているんじゃないかと思います。それこそ「何も考えずに気楽に楽しめる」という意味での「ライトで面白い作品」は、世の中にたくさんあって。もちろんそれも僕は大好きなんですが、今回の『完全無罪』の場合は、思わず低い声で「面白い……」と唸ってしまうような、そんな作品になっていますので、ぜひとも楽しみにしていて下さい!