そうした中で、『おはよう!ナイスデイ』『とくダネ!』『めざまし8』と、朝の情報番組を担当するアナウンサーが支援国を現地取材し、番組でレポートするというスタイルが確立。2005年に志願し、インドネシア、マラウイ、パプアニューギニア、ガイアナの4カ国を取材したのが、『とくダネ!』でMCを務めていた佐々木恭子アナだ。

佐々木アナが志願した1つの理由は、阪神・淡路大震災。実家が全壊するという経験をしたものの、当時は大学生で横浜に住んでおり、知人が亡くなったり、周囲から「毎日悲鳴のような電話を受け取った」りした中で、「ある種の贖罪意識が芽生え、入社して、とにかく現場を取材する人になりたいと思っていたんです」という。

入社4年目で『とくダネ!』のMCに抜てきされるが、「2時間の生放送で、回っている大縄跳びにずっと入れない感覚があったんです。今みたいに丁寧に役割を与えてくれる時代ではなかったので、何も発言できない自分がいました」と壁にぶつかる。そこで、「自分が変わらない限り、一生この大縄跳びに入れない」と思い立ち、FNSチャリティキャンペーンで、スマトラ沖地震による大津波の被害を受けたインドネシアの取材に立候補した。

当時、情報番組の女性MCを長期の海外取材に派遣するのは異例のことで、上層部は「何かあったらどうするんだ」と反対。しかし、取材を担当する女性ディレクターが「私に行けと言っておきながら、佐々木アナは行かせないって、どういうことでしょう?」と交渉してくれ、無事取材に行けることになったそうだ。

劣悪な衛生環境も…毎回1人は体調崩す

取材期間は、約2週間程度。今回ネパールを訪れた倉田アナは「毎日朝早くユニセフの車に乗って取材に出発するのですが、日没になると真っ暗で危険になるので、18時くらいまでしか動けないんです。それと、移動時間もかかります。今回、山火事で朝に搭乗予定だった飛行機が飛ばなくて、車で別の空港に移動して夕方に飛ぶということもありました」と、予定通りにいかない海外取材の難しさを明かす。

劣悪な衛生環境を取材することも珍しくなく、毎回1人はスタッフが体調を崩し、食事が原因でクルー全員がお腹を下すこともあれば、レポーターが高熱を出してしまうことも。水や生の食材には特に気をつけ、ユニセフの車に積んである水のみを飲んだり使用したりするという。そうした様々な制限がある中で日程をフルに使って取材し、放送されるVTRは12~13分に凝縮される。

それでも、倉田アナは「やっぱり現地での生活に慣れることも必要になります」といい、佐々木アナは「シャワーの水に住血吸虫が湧いてくるから最小の時間で浴びてくれと言われましたし、水も透明じゃないけれど、現地の人がその環境で暮らしているのだから、自分が通用するのに時間はかかるかもしれないけれど、大丈夫」という発想になったという。

その結果、「私がFNSチャリティキャンペーンの取材に行って良かったと思っていることの1つは、自分のキャパシティが広がる感じがあったことです。交通もご飯も、思った通りにはいかないことが多いですが、究極を言うと“それでも生きていられる”と感じるようになりました」(佐々木アナ)と、自身の中で変化が生まれたそうだ。