米労働省が6月7日に発表した5月雇用統計の主な結果は、【1】非農業部門雇用者数27.2万人増、【2】失業率4.0%、【3】平均時給34.91ドル(前月比+0.4%)、前年比+4.1%)という内容であった。
【1】雇用者数
5月の非農業部門雇用者数(季節調整済)は前月比27.2万人増と市場予想の18.0万人増を上回った。この結果、米国の雇用情勢の基調を判断する上で重要視される3カ月平均の増加幅は24.9万人と前月時点の23.7万人から拡大した。
【2】失業率
5月の失業率(季節調整済)は4.0%と市場予想の3.9%を上回り、2022年1月以来の水準に悪化した。フルタイムの職を希望しながらパート就業しかできない人なども含めた広義の失業率である不完全雇用率(U-6失業率)は2021年11月以来の高水準だった前月に続いて7.4%であった。労働力人口に占める働く意欲を持つ人の割合である労働参加率は前月から0.2ポイント低下して62.5%だった。
【3】平均時給
5月の平均時給(季節調整済、全従業員)は34.91ドルと前月の修正値34.77ドルから0.14ドル増加。伸び率は前月比+0.4%、前年比+4.1%で、いずれも市場予想(+0.3%、+3.9%)を上回った。なお、2021年6月以来の低さだった前月の前年比の伸び率は3.9%から4.0%に上方修正された。
まとめ
米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げを巡り注目された米5月雇用統計は、非農業部門雇用者数が予想を上回る伸びとなった一方で、失業率は予想に反して悪化した。事業所が調査対象の非農業部門雇用者数と家計が調査対象の失業率で強弱が分かれる結果となった。一見、好結果に見える非農業部門雇用者数についても、パートタイマーの大幅増に支えられたものである点や、いわゆる「ダブル・ワーク」の就業者が重複して雇用者としてカウントされた可能性がある点を指摘する声は少なくない。このため市場には、米5月雇用統計は見た目ほど強くないとの意見も散見される。しかしながら、平均時給が予想以上に伸びた点は賃金インフレ圧力の根強さをあらためて示したと言えるだろう。インフレ鈍化のためなら多少の景気減速は厭わない姿勢のFRBが、(今回の雇用統計で)賃金の伸びが再び加速したにもかかわらず利下げを急ぐとは思えない。むしろ、利下げに対する慎重姿勢を強める公算が大きい。これを踏まえると、見た目ほど強くない雇用統計との指摘がありながらも、発表後にドルと米長期金利が大きく上昇したのも頷けよう。