米労働省が5月3日に発表した4月雇用統計の主な結果は、【1】非農業部門雇用者数17.5万人増、【2】失業率3.9%、【3】平均時給34.75ドル(前月比+0.2%)、前年比+3.9%)という内容であった。

  • 4月雇用統計まとめ

【1】雇用者数

4月の非農業部門雇用者数(季節調整済)は前月比17.5万人増と市場予想の24.0万人増を下回った。増加幅は2023年10月以来6カ月ぶりの低水準だった。この結果、雇用情勢の基調を判断する上で重要視される3カ月平均の増加幅は24.2万人と前月時点の26.9万人からやや縮小した。

  • 米非農業部門雇用者数の推移

【2】失業率

4月の失業率(季節調整済)は3.9%と市場予想の3.8%を上回り、約2年ぶりの高水準だった2月に並んだ。フルタイムの職を希望しながらパート就業しかできない人なども含めた広義の失業率である不完全雇用率(U-6失業率)は前月の7.3%から7.4%に上昇。2021年11月以来の高水準となった。労働力人口に占める働く意欲を持つ人の割合である労働参加率は前月から横ばいの62.7%だった。

  • 米失業率と労働参加率の推移

【3】平均時給

4月の平均時給(季節調整済、全従業員)は34.75ドルと前月の34.68ドルから0.07ドル増加。伸び率は前月比+0.2%、前年比+3.9%で、いずれも市場予想(+0.3%、+4.0%)をやや下回った。なお、平均時給は過去最高を更新したが、前年比の伸び率は2021年6月以来2年10カ月ぶりの低さだった。

  • 米平均時給の推移

まとめ

米4月雇用統計は、米国の雇用市場がかつての勢いを失いつつあることを示す結果であった。非農業部門雇用者数は3カ月平均を下回る17.5万人増にとどまり、失業率は2カ月ぶりに3.9%へ上昇。平均時給は前年比の伸び率が2年10カ月ぶりの低水準となる+3.9%に鈍化しており、賃金インフレ圧力の低下が見られた。この雇用統計を受けて米金融市場では、連邦準備制度理事会(FRB)による利下げ開始が9月に前倒しされ、12月に2回目の利下げが行われるとの見方が広がった。雇用統計発表前は年内の利下げについては11月に1回のみの予想が主流であった。利下げ観測の高まりで米長期金利が低下する中、ドルは下落したが、米株は買われた。利下げの前倒しによって米経済の急速な悪化は避けられるとする、やや奇妙な安心感も出ているようだ。なお、ドル/円相場は雇用統計の発表後に一時151円台後半に差し込んだものの、株高を背景とする円売りで反発すると、週明け6日には154円台を回復した。