開墾や庭の菜園化にあると便利な土ふるい

今の暮らしを始めたとき、家のすぐ目の前にある畑を借りた。といっても地目は田で、いわゆる耕作放棄地である。広さはおよそ500平方メートル。
それまでの私は東京郊外の住宅地で暮らし、日当たりの悪いネコの額ほどの庭で家庭菜園を始め、夢中になっていた。だから、草に覆われた耕作放棄地とはいえ、周りが開けた広い畑を自由に使えるのは、ただそれだけでうれしかった。

畑として借りた耕作放棄地。夏になると腰まで草に覆われる

ところが、いざ畑にしようと草を刈って開墾を始めると、軽く耕したくらいじゃとても野菜が育つような土地じゃないことがすぐにわかった。もともと田んぼだった土地は、土盛りされていたが水はけが悪く、雨のあとはひどくぬかるんだ。逆に乾くとカチカチに固まってしまう。
粘質の土は重く、鍬(くわ)やショベルにべったりとこびりついて、ちょっと耕すだけでもひどく労力を要する。加えて、困ったことには鍬を入れるたびにカツーン、カツーンと硬い石に当たるのである。小石はもとより掘り出してみると一抱えもある大きな石やコンクリートの破片まで出てくるではないか。とんでもない土が盛られていたのだ。

当時は、トラクターや重機はもとより家庭用耕うん機さえ持っていなかったので、開墾は腕一本が頼りのハードジョブ。ショベル3本をダメにして、なんとか500平方メートルを耕した。いやはやしんどかったぜ。

移住当初の畑。鍬とショベルで500平方メートルを耕した

農家だったら絶対に手を出さないようなひどい畑だったが、種をまき、苗を植えつけるとそれなりに野菜は育った。耕すたびに出てくる石をコツコツと拾い集め、たっぷりと堆肥を入れて土づくりにも励んだ。そのかいあって野菜の育ちは年々よくなっていったが、土の中から湧くように出てくる石だけはいつまでたってもなくならない。そこで私は、あることを心に決めた。この畑の土を全部ふるいにかけて、石を取りのぞくことにしたのである。
その大事業にあたって作ったのが、今回紹介する「土ふるい」だ。

畑の土を1回ふるいにかけるだけでこれだけの石が出る

ふるう力を軽減するローラーと残った不要物を簡単に捨てられる扉

この土ふるいには二つの優れたギミックがある。

一つは、ふるいを載せる台につけたローラーだ。その上でふるいを前後させれば軽い力で一度に大量の土をふるえるのである。

直径の異なる二つの金属パイプを組み合わせたローラー

ローラーは直径の異なる二つの金属パイプを組み合わせたもの。扉はちょう番とローラーキャッチで開閉を容易にしている。作業を楽にするためには、ふるいをなるべく軽く作ることも大切だ。そのためには強度を確保しながら材料の太さや厚みをなるべく抑える必要がある。

もう一つはふるいの前方を開閉式の扉にしたことだ。扉を開けてふるいを少し前に傾ければ、中に残った石などの不要物を簡単に捨てられるのである。いちいちふるいを持ち上げてひっくり返す必要がないのだ。

扉を開けてふるいを傾ければ中に残った不要物を簡単に捨てられる

土ふるいの作り方

改めて、今回紹介する土ふるいの完成形はこちらである。

上部には枠の底に網を張ったふるいがあり、それを三角屋根のような脚が支えている。脚の頂点部分の棟木の上には先ほど紹介したローラーが載っている。

では、材料と作り方を紹介しよう。

材料

➀金属パイプ(軸) (直径16×910ミリ)1本
②金属パイプ(ローラー) (直径25×910ミリ)1本
③バーベキュー用の焼き網 (500×800ミリ)1枚
④台の棟木 SPF2×4(38×89×650ミリ)1本
⑤ふるいの底枠(横) スギ角材(30×40×1000ミリ)2本
⑥ふるいの枠の柱 スギ角材(30×40×90ミリ)2本
⑦脚 スギ角材(30×40×800ミリ)4本
⑧ふるいの支え(横木) スギ角材(30×40×590ミリ)1本
⑨ふるいの底枠(前・後) スギ角材(30×40×440ミリ)2本
➉ふるいの支え スギ角材(30×40×400ミリ)2本
⑪ふるいの枠(前板・背板) スギ板(12×90×500ミリ)2枚
⑫ふるいの枠(側板) スギ板(12×90×780ミリ)2枚
⑬脚の横板 スギ板(12×90×650ミリ)2枚
⑭電気配線用ステップル 6個
⑮ちょう番 1組
⑯ローラーキャッチ 1組
⑰パイプブラケット 1組

作り方

1.木材は必要なサイズにカットする。DIY初心者はホームセンターのカットサービスを利用する方法もある。⑦脚は一方の端を30°の角度でカットする。

2.④台の棟木に角度をつけてカットした脚を取り付ける。

3.左右の脚を⑬横板でつなぐ。位置は下から100ミリくらい。

4.ローラーの軸になる➀直径16ミリのパイプを605ミリにカットする。ローラーになる②直径25ミリのパイプは580ミリでカット。切断には金ノコ(※1)やジグソー(※2)、ディスクグラインダー(※3)などを使う。

5. 台の棟木の一方の端に⑰パイプブラケットを取り付ける。

6.②直径25ミリのパイプに①直径16ミリのパイプを通して、台の棟木に取り付けたパイプブラケットにはめる。

7.反対側のパイプブラケットをパイプの長さに合わせて台の棟木に固定する。

8.写真の位置に➉ふるいの支えを取り付ける。このとき、ローラーより少し低くなるように角度を決める。写真では水平器(※4)を使っているが、感覚的にちょっと下がっていればOK。ふるいを置いたときに安定する。

9.ふるいの支えに⑧横木を取り付ける。

10.写真のように⑤⑨ふるいの底枠を組む。

11.底枠の前側の部分に⑮ちょう番をつけ、⑪枠の前板を固定する。ちょう番の位置は外側から左右80ミリ程度。

12.ふるいの底枠に③網を置き、⑭ステップルで固定する。

13.⑫ふるいの枠の側板と⑪背板をコの字型に組む。角に⑥ふるいの枠の柱を置いて、ビスで固定する。

14.網を挟むようにしてふるいの底枠とコの字に組んだ枠を固定する。底枠からビスを打つ。

15.枠の側板に⑯ローラーキャッチの受け側を固定する。位置は上から20ミリ程度。ローラーキャッチの受け側に位置を合わせて、差し込み側を枠の前板に固定したら完成。

※1 金属が切れるノコギリ
※2 上下運動する刃で木材や金属を切断できる電動工具
※3 高速回転するディスクでさまざまな素材を研削、研磨、切断できる電動工具
※4 気泡によって地面との水平を見るための道具

土ふるいの使い方

庭や畑の土をふるうときは、その場所を事前にトラクターや管理機で耕して柔らかくしておくとよい。台にふるいを置いたら、ショベルで3~4杯の土を入れる。力がない人は1~2杯でもいい。台の前にはふるいの残った石を受けるための手押し車(一輪車、ネコ車)を置いておき、いっぱいになったら、決めた場所にもっていって捨てる。私は庭の片隅に山にしておき、庭作りやコンクリートを練るときの、砕石の代わりに使っている。

土が湿っているとふるいにくいので、乾いているときに行う

ローラーや残った不要物を簡単に捨てられる扉をつけたとはいえ、ふるいはキツイ肉体労働だ。500平方メートルを一気にやるのはとてもじゃないが無理だ。そこで、私は毎朝15分のふるいをルーティンにした。これくらいの短時間なら気持ちのいい汗がかける。トレーニングと考えたっていい。背筋や上腕二頭筋を鍛えるにはもってこいだ。畑の石がなくなって、体づくりもできると考えれば一石二鳥である。500平方メートルの畑は、見渡せば気が遠くなるような広さだが、続けていればいつかは終わる。

そうやって毎日ちょっとずつ畑の土をふるいにかけ、500平方メートルの広さを深さ約30センチで1年かけてふるった。今はもう鍬を入れても嫌な音はしない。耕すのが気持ちいい。ニンジンやダイコンもまっすぐ育つ。粘質で重い土は相変わらずだが、そんな土壌を好むサトイモは毎年豊作だ。ナスもよくできる。まだまだ決していい土とはいえないが、それでも家族が食べるくらいの野菜は、ほぼ自給できている。この畑と、ここでできる野菜は、私のちょっとした誇りである。