時代劇専門チャンネルで放送される松本幸四郎主演の連続シリーズ第3弾『鬼平犯科帳 でくの十蔵』(8日19:00~、9日13:00~ほか)。今作でスポットが当てられるのは、タイトルの通り、平蔵(幸四郎)の部下である小野十蔵だ。

火付盗賊改方同心・小野十蔵はとある女との出会いから“情”と“使命”の間で揺れ動く。平蔵はそんな十蔵を案じつつも事件の核心に迫っていく。十蔵の選択と、その行く末に平蔵が抱く思いとは…。そんな十蔵を演じる柄本時生が、今作に臨んだ心境などを語った。

  • 『鬼平犯科帳 でくの十蔵』に出演する柄本時生

    『鬼平犯科帳 でくの十蔵』に出演する柄本時生

「監督の言っていることが、たまに分からなかった(笑)」

今作について、「とても悲しい話で考えて臨まなければならない難しい役柄だと思った」という柄本。「時代劇をあまり知らず、同心役も初めてだったので、撮影現場では知識不足、勉強不足を痛感する毎日でした」「毎日正解を探しながら、探し切れたか…という感じでしたが、とてもいい経験だった」と振り返る。

中村吉右衛門さん主演の『鬼平犯科帳』で十蔵を演じたのは、父・柄本明。それについては、「正直恥ずかしくて嫌だった」と本音を明かしながら、「やると決めたからにはやるという気持ちでした」と決意して臨んだそうで、そこにプレッシャーはなかったという。

この十蔵がのめり込んでしまうのが、おふじ。演じる藤野涼子については、「素直な方でとてもしっかりとしている印象で、若くして自分の感覚に鋭敏な方はそんなにいないと思いました」「声も素敵で、演じていて面白かったです」と印象を語る。

「(山下智彦)監督の言っていることが、たまに分からなかった(笑)」という柄本。それでも、「それを考えながら演じるのが俳優なので、現場は楽しく、たくさんのことを学びました」と充実の様子だ。また、「僕は結末を知っているせいか、一歩早いような演技をしていて、そういったときに“今”の状況を教えてくれて戻していただいたことは、とてもありがたかった」と感謝する。

「正しいところに戻してくれる」京都の撮影

そんな京都での時代劇の撮影は、「やはり職人の方たちの仕事のスピード感などが素晴らしいし、俳優に対して、正しい扱いをしてくれるような印象があります」とのこと。「俳優は、いろいろなことをやってもらえることがどうしても“当然”の世界になってしまう中で、現場の一部、現場のひとりだ、といった“仲間”であるという正しいところに戻してくれるところに魅力を感じます」と、気が引き締まったようだ。

今回は3~4か月の撮影期間だったが、「火付盗賊改方チームとの撮影は非常に楽しかった」というだけに、「撮影の合間にしゃべったり食べたりすることなど、これからは自分だけ思い出が共有できないと思うと正直寂しく、うらやましいと思う」と語った。

最後に、『鬼平犯科帳 でくの十蔵』の見どころを聞くと、「十蔵という人間が生きた過程を観ていただくストーリーです。何とも言えない物語ですが、観終わった後に何かを感じていただけたらと思います」と呼びかけた。

『鬼平犯科帳 でくの十蔵』本編後には、柄本のほか、松本幸四郎、本宮泰風、山田純大、浅利陽介、久保田悠来という火付盗賊改方のキャストが登場する『鬼平犯科帳アフタートーク「でくの十蔵」編』も放送。緊張感あふれる本編とは一味違ったリラックスした空気の中で、撮影時の思い出や互いの素顔などについて語っている。