5月25日に放送されたサッカー番組『FOOT×BRAIN』(テレビ東京系、毎週土曜24:25~)は、パリ五輪で悲願のメダル獲得を目指すサッカー日本代表について、元日本代表の田中マルクス闘莉王と大津祐樹が持論を展開した。

U-23アジアカップを制し、その勢いのまま約2か月後に迫ったパリ五輪に臨む日本代表。しかし、闘莉王と大津はまだまだ克服しなければならない課題があると指摘する。実際に、日本代表は8大会連続でオリンピック出場を決めているが、1968年のメキシコ大会以来、メダルからは遠ざかっている。

闘莉王が提起したのはディフェンスのあり方で、「ビルドアップがうまいとか、技術の高い選手を選ぶということにちょっと目線が行き過ぎて、もともと一番大切である“守ること”を忘れがち」と力説。選手の選考基準が守備力よりも足元の技術になってしまっていると主張した。

大津も「今の若い選手たちは技術が高い分、個人で守るというところは確かにちょっと欠けているのかなっていう印象があります」と、闘莉王の意見を支持。また、アジアカップで日本代表の失点した3ゴールはすべてヘディングで決められていることも懸念材料となっており、闘莉王は高さと競り合い方が甘いと分析する。MCの勝村政信も「セットプレーになると怖いんですよね、見ていて。闘莉王が出ていた頃は、またファールしたのかよみたいな、でもなんとか返してくれるみたいな、そういう安心感はありました。けど、今はやっぱりちょっと怖いですね」と、不安をこぼしていた。

わずか1点が命取りになる世界との戦いにおいては、ゴールを守る意識を高めるべきという意見で一致。大津はさらに、オリンピックならではのチームづくりの難しさにも言及する。23人の選手を登録できる一般的な大会とは異なり、オリンピックでは選手を18人しか登録できない。過去には日本でも熾烈なメンバー争いが繰り広げられ、ロンドン五輪やリオ五輪では予選を戦った23選手のうち、およそ半数が落選。海外組が増えた東京五輪では、実に16人もの選手がメンバーから漏れている。

大津は「監督が選ぶメンバーももちろん重要ですし、チームとしてそのメンバーになったときに、どういう風にチームとして戦うか。オーバーエイジを中心にどういう風にチームづくりを考えるかっていうのは、優勝するためには大事なポイントだと思っています」と自身の考えを明かした。

また、Jリーグウォッチャー・平畠啓史からの「ずっとアンダー世代で一緒に戦っていたメンバーでしょ。やっぱり(仲間の落選は)ちょっと寂しいというか、辛いところもありますよね」という問いかけに、大津は「僕らの代では比嘉祐介選手がすごく試合に出ていた中で落選してしまったんですけど、彼は落選しているのに本選に向けてビデオレターを作ったんですよ」と、エピソードを披露。「もちろん絶対悔しいじゃないですか。自分がずっと引っ張ってきていたのに。ただ、そういう選手が落ちたときもチームのためにやってくれたことによって、僕らはまとまることができた。一緒に戦っていたという感覚はありましたね」と振り返った。

そして、大津も指摘する通り、チームづくりの要となるのがオーバーエイジだ。24歳以上の選手を3名使える特別ルールだが、必ず起用しなければいけないわけではない。日本は、近年の過去7大会のうち、5大会でオーバーエイジを招集。アテネ五輪の小野伸二や東京五輪の吉田麻也など、大会ごとに即戦力となる経験豊富な選手を起用している。

しかし、番組がサッカーファン118人に聞いてみると、オーバーエイジは「必要」という意見と「必要ない」という意見がほぼ半々という結果に。経験豊富な選手を入れるべきか、それとも若い力だけで挑むべきなのか。出演者の4人は、全員がオーバーエイジは「必要」という意見でまとまり、大津は「すごく助かるなっていう印象を受けたんですよね。オーバーエイジに引っ張られることが僕らはすごく多かったです。学べることも多かった」と回顧。

一方、闘莉王は「絶対に必要だと思います。オーバーエイジの選手にも責任感が出てくるし、若い選手が見ていることによって、引っ張らなきゃいけない、こういう道に進まなければいけないんだなというところを見せてくれる」と、オーバーエイジ側にもメリットがあると強調した。

闘莉王と大津の2人は、パリ五輪に呼ぶべきオーバーエイジの選手についても具体的な名前を挙げる。大津が選んだのは、カタールW杯でも活躍した欧州リーグで活躍する選手たち。中でもキーマンに挙げたのは遠藤航だった。大津は遠藤について、「僕らでいう吉田麻也選手みたいなバランスが取れる選手なんじゃないかなって。周りにもちゃんと気を使えて、かつパフォーマンスがある。すごくレベルの高いチームでやっていて、日本の今のレベル感とは違う位置が見えている選手なので、もっとレベルを引き上げたところでまとめてくれるんじゃないかなっていう期待感を持っている」と絶賛した。

闘莉王はディフェンスに冨安健洋と板倉滉のA代表コンビと、フォワードには現在A代表から遠ざかっている大迫勇也をチョイス。「軸になるフォワードをどうしても選ばなきゃいけない」という闘莉王の意見に、平畑も「僕もフォワードで大迫選手を見たいんですよね。キープ力もそうですし、競り合いでも本当強いじゃないですか。やっぱり世界で戦ってきた選手ですし」と同意。大津も「本当に大賛成です! 確実にボールの起点にもなるし、得点も取れる」とヒートアップしていた。

また、招集の見送りが報じられた久保建英についても議論が白熱。闘莉王が「良い選手は呼ぶべきです。それを機能させないのであれば、監督の腕が足りないってだけの話なんで」と物申すと、大津も「一切迷いがないです。絶対に入れてくださいっていう」と賛同。平畑は「やっぱり東京五輪で久保選手、すごく悔しい思いをしていると思うので、もし呼べば相当気持ち込めてプレーするんじゃないかなっていうところも含めて、ちょっと見たいですね」と期待を寄せた。

次回6月1日の放送は、引き続き闘莉王と大津がゲスト出演。パリ五輪におけるグループリーグの戦い方について徹底的に討論する。