今回の朝ドラ出演はヒロインの相手役ということで撮影期間も長い。「朝ドラは1週間に撮る分量が多かったり、撮影期間が長い分、大変だと思います。でもその分、役にじっくりと向き合える時間があるし、いろんなゲストの方が出たり入ったりしてくれることで、自分の役が育っていく感覚が朝ドラならではだと思いました」と大いにやりがいを感じている。

そして、「現場の雰囲気が非常に良くて、他の現場にはないような温かさを感じます。1週間の撮影の最後のカットを撮り終えたら、みんなで拍手をしたりして、このチームで『ヒロインと作品を盛り上げていくんだ』というとても良い空気が流れているなと感じます」と他にはないチームの一体感を語る。

伊藤とはドラマ『拾われた男』(22)でも夫婦役を演じている仲野。伊藤について「沙莉ちゃんとは、あうんの呼吸と言いますか、打ち合わせをせずともお芝居がしやすくて、こちらがどんな表現をしても、すべてを受け入れてくれます。寅ちゃんがずっと寅ちゃんでいてくれるので、脚本からはみ出た瞬間でさえも、『虎に翼』の世界観が損なわれない気がしますし、すごくありがたいです」と絶大な信頼を置く。

「沙莉ちゃんが何かをしようとしても、やりたいことがわかるというか、すごくコミュニケーションがとれるんです。隣に沙莉ちゃんがいてくれるだけで安心できます。特に夫婦役なので、全く知らない人とやるとちょっとぎこちなくなってしまうこともあると思うのですが、沙莉ちゃんだからこそ思いっきり飛び込めました」

朝ドラならではのやりがい実感「貴重な経験をさせてもらっている」

また、演じる気弱で優しい優三役について「優三が持つ、柔和で温かい空気感を大事にしたいなと思いました。寅ちゃんが真っ直ぐに物事と向き合っていく人なので、それと対照的に頼りないという一面もありつつ、彼の中にも太い芯があるという表現ができたらいいなと思って演じました」と語った。

自身と優三との共通点を尋ねると、「夢に向かってひたむきな姿というか、やりたいことがあるという点はすごく自分に近いのかなと思います。ただ、僕は優三ほど柔和なキャラクターじゃなくて、どちらかというとクラスの中では騒がしいタイプなので(笑)。そこは違うかもしれません」と答えてくれた。

今回の優三役で得たものも大きかったと言う仲野。「時系列に沿って撮影するわけではなく、前後が入れ変わったりして、『あれ? 今って何歳だっけ?』となることもありますが、衣装やヘアメイクで完璧に役の年齢を表現してくれるので、自分の中にあるものだけじゃなくて、本当にいろんなことに助けてもらっています。また、今回は自分で優三役をやり遂げられるという喜びはすごくあるなと。年代ごとに違う俳優が演じる作品もありますが、1人の役を、時間や時代の変化を感じながら演じられるのは本当に朝ドラならではで、貴重な経験をさせてもらっているなと思います」

今年31歳の誕生日を迎えた仲野に、30代の展望についても聞いた。「何が起こるかわからないので、予測はできないのですが、今は恵まれた環境でお芝居をさせてもらっているなと思うので、良い40代を迎えるために30代でできることをやれる限りやって、もっと成熟していけたらいいなと思っています。いい俳優になりたいです!」

■仲野太賀
1993年2月7日生まれ、東京都出身。2006年にドラマ『新宿の母物語』にて13歳で俳優デビュー。『すばらしき世界』(21)で第45回日本アカデミー賞優秀助演男優賞、第64回ブルーリボン賞助演男優賞などを受賞。近年の主な出演作は、映画『生きちゃった』『泣く子はいねぇが』(20)、『あの頃。』(21)、『ある男』(22)、『ゆとりですがなにか インターナショナル』『愛にイナズマ』(23)、『笑いのカイブツ』(24)、ドラマ『コントが始まる』『#家族募集します』(21)、『拾われた男』『初恋の悪魔』『ジャパニーズスタイル』(22)、『季節のない街』『いちばんすきな花』(23)など。

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