伊藤沙莉主演の連続テレビ小説『虎に翼』(NHK総合 毎週月~土曜8:00~ほか ※土曜は1週間の振り返り)で、伊藤演じる主人公・佐田(猪爪)寅子の夫となった佐田優三役を演じている仲野太賀。書生時代の優三は、なかなか高等試験(司法試験)に合格できず、挫折を味わうが、仲野自身も10代から20代の前半では、仲野いわく「うだつのあがらない俳優」として、いろんな葛藤やジレンマを抱えていたと言う。そんな黎明期の自身を振り返りつつ、本作の魅力と共に30代の展望も語ってもらった。

  • 佐田優三役の仲野太賀

伊藤演じる寅子のモデルは、日本初の女性弁護士で、後に裁判官となった三淵嘉子。本作では寅子とその仲間たちが、困難な時代に道なき道を切り開き、迷える子どもや追いつめられた女性たちを救っていく。朝ドラ出演は『あまちゃん』(13)以来となった仲野は、優三役のオファーを受けて「率直にすごくうれしかったです」と喜びを口にした。

「日本で初めて女性の弁護士、そして裁判官になった方の話ということで、女性が社会進出していく姿が描かれていき、それは現代にも通ずる話になっていくのかなと思い、すごく素敵だなと、とても楽しみでした」

また、「脚本がとても面白いので、僕が優三を演じることで、足を引っ張りたくないなという気持ちもありつつ、本当にこの作品に参加できて良かった、佐田優三という役に出会えて良かったなと思います。朝ドラは朝ドラそのものを好きな人も多いと思っているので、そういう方々にも楽しんでいただきたいです」と笑顔を見せる。

そして、若き頃に出演した『あまちゃん』時代の自分と今を比べ、「当時は20歳そこそこで、右も左もわからず、すごくがむしゃらにやっていたと思いますが、それから10年以上経って、いろんな現場に参加させてもらったので、今はもう少し頭は冷静に、でも心は熱く現場と向き合えているのかなと思います」と語る。

葛藤を抱えていた若手時代…尊敬する人たちの言葉が心の支えに

早くに両親を亡くした優三は、猪爪家に下宿し、弁護士だった父と同じ道を進むべく、昼は銀行で働きながら夜間は大学で勉学に励むも、難関の試験は突破できなかった。仲野自身も俳優としての黎明期には、優三と同じようにいろんな葛藤を抱えていたようで、共感する部分も多かったという。

「僕は10代の頃からこの仕事をやっていて、数えきれないぐらいオーディションを受け、たくさん落ちました。割とたくさん受かっていた時期もありますが、もらえる役がすごく小さかったり、台詞がなかったりした時間がずいぶん長かった気がします。チャンスがないわけではないのに、どうにもならないという感じの10代~20代前半でした。ただ志はあったし、情熱が絶えることもなかったので、本当にしがみつくようにしていろんな現場で自分の可能性を試させてもらっていました」

当時の自分について仲野は「負のオーラに満ちていたと思います。周りから見て『こいつ悩んでいるんだろうな』というのが一目瞭然だったかと」と苦笑する。

そんな中で、仲野を支えたのは自分がリスペクトする人たちの言葉だったという。「宮藤官九郎さんや石井裕也さん、岩松了さんなど尊敬する大好きな方々が、仕事がなくても、売れてなくても『太賀、面白いよ』と言ってくださったことが、心の支えになっていました。みんなの注目を集めることは難しいけど、自分の好きな方々からの『お前は大丈夫だ』という言葉に救われて、今があるという気がします」

時を経て、演技への向き合い方が変化したか? と聞くと「もっともっといい芝居をしたいという気持ちは高まる一方です」と向上心を見せる。「そのために何が必要なのか、今の自分には何が足りてないのかと、日々ぼんやり考えたりしますね。でも、これをすれば芝居が上手くなるというようなことはないので、このままやっていくしかないのかなとも思います」