SixTONESの森本慎太郎が主演する日本テレビ系ドラマ『街並み照らすヤツら』(毎週土曜22:00~)。当初予定していた小学館漫画原作ドラマの制作が中止となったことから、急きょ立ち上がった企画だ。

連ドラは通常1年以上準備をかけて撮影に臨むが、企画の立ち上げからクランクインまでの期間はわずか1か月。このチャレンジングな作業に挑んだ監督の前田弘二氏と脚本の高田亮氏に、話を聞いた――。

  • 『街並み照らすヤツら』(C)日テレ

    『街並み照らすヤツら』(C)日テレ

“人がどう動くか分からない”という作りにすればできる

今作の立ち上げについて、前田氏は「制作期間がなかったから、ガッツリとしたストーリー展開で見せるというのは難しいだろうと思ったので、“人がどう動くか分からない”という作りにすればできるんじゃないかと最初スタートしました」と回想。そこで、シャッター商店街の人たちが偽装強盗の保険金で店を立て直そうと思ったら、集まった人がポンコツで様々なトラブルが起こる――という企画の骨子が作られた。

これを前田氏から聞いた高田氏は「前々からクライム・コメディをやりたいという話は(前田)監督ともしていて。でも、連続ドラマだと長い話を作らなきゃいけないのに、1店舗の偽装強盗のトラブルで10話ももつのかなと不安があったんですけど、商店街を巻き込む騒動になるというアイデアが出たんです」と明かす。

この商店街の登場人物のキャラクターを作るときに、「街を牛耳ってるも商店会長が二世な感じでお仲間だけ優遇してるとか、街全体を日本の縮図みたいにできるかもしれない」と思いついた高田氏。「すごくバカバカしいところと、日本の現状を映すようなところが両方同時にできるというのが面白いんじゃないかと思ったら、すごく気持ちが高まってきて、1話は先のことも決めずに興奮しながら書いた覚えがあります」と、ハイ状態で一気に筆が進んだという。

だが、「5話目を書き終わったところで、猛烈に疲れが襲ってきました(笑)。前半は伏線をばらまいて、後半に行くにつれてそれを閉じる段階になって“何やってないんだっけ!?”と思うようになり、僕的には今、ピンチです(笑)。今までは1週間でプロットを書いて、1週間で台本を書くぐらいのペースだったんですけど、最終話は結構時間かかってます(笑)」と、終盤になって苦戦しているそうだ。

  • 5月25日放送の第5話より (C)日テレ

スタジオセットの完成度が大きな刺激に

前田氏と高田氏が、映画『婚前特急』『わたしのハワイの歩きかた』『セーラー服と機関銃―卒業―』などでタッグを組み、互いの自主製作映画を手伝い合う間柄だったことも、急ピッチの作業でプラスに働いた。

高田氏は「脚本って、監督の好みが見えてないと、あんまり思い切ったことがやりづらいんです。短期間でなるべく早くOKをもらわないといけない状況だと、わりと安牌を狙ってしまうようなことがあるかもしれないんですけど、前田監督だったら“おかしな人間を出せば出すほど喜んでくれるだろう”っていう感じがありますし、ロープの結び方を思い出そうとしたら影絵が出てきちゃう(=第1話)みたいなことをやっても、笑ってくれるだろうなと思ったので(笑)、わりと思い切って書けるのがすごく楽でしたね」と実感を語る。

前田氏は「ドラマで言えばクドカン(宮藤官九郎)さんとか、福田雄一さんとか、いろんなタイプのコメディがある中で、どうせオリジナルでやるなら彼らとはまた違うタイプのものをやりたいなと思うじゃないですか。その時に、(気心の知れた仲の)高田さんとやりたいなと思ったんです」とオファーしたのだそう。高田氏と、もう1人の脚本担当である清水匡氏は、別の仕事がたまたまずれ込んだことで奇跡的にスケジュールが確保でき、今回の作品を受けることができた。

撮影まで時間のない中で作られた商店街のスタジオセットを見て、驚きを隠せなかったという2人。前田氏は「主人公のケーキ屋さんの前のアーケードの延長線上の道を作ってほしいと言ったら、すごく良いセットを作ってくださって、それでまたテンションが上りましたし“これは本当に良い作品にしなきゃダメだな”とモチベーションが上がりました」といい、高田氏は「セットを見た時は、“これ、もうできてるんですか!?”ってびっくりしました。ビリヤード場の飾り込みもカッコいいし、それで我々脚本チームも盛り上がりました」と、大いに刺激になったようだ。