皇居東御苑の皇居三の丸尚蔵館で、「皇室のみやび―受け継ぐ美―」第4期が始まりました。2023年11月に30周年を迎え、新たに「皇居三の丸尚蔵館」として開館したのを記念して約8カ月にわたって開催されている同展。締めくくりの第4期のテーマは「三の丸尚蔵館の名品」。皇室に献上された品を中心に選りすぐりの名品が紹介されています。

皇室に代々伝えられてきた美術工芸品、とくに明治以降に行われた献上による数々の美術工芸品を収蔵する同館は、1989年(平成元年)に上皇陛下と香淳皇后により国に寄贈された品々を保存・研究・公開するための施設として、1993年(平成5年)11月に皇居東御苑内に開館。現在約2万点の作品を収蔵しています。

  • 大手門

館名の「尚蔵」は、古代律令制において蔵司(くらのつかさ)の長官「くらのかみ」を指し、“大切に保管する”という意味を持つそうで、旧江戸城三の丸に建てられたのに由来して、「三の丸尚蔵館」と名づけられました。2019年(令和元年)からは、収蔵庫と展示室の拡充と活動の充実を目的に、新たな施設の建設も進められています。昨年10月に宮内庁から独立行政法人国立文化財機構へと管理・運営が移管し、11月に「皇居三の丸尚蔵館」と名称が変更。ちなみに拡張工事は現在進行形で、全館開館は2026年(令和8年)を予定しています。

これまでに皇室に受け継がれてきた多種多様な名品を4期に分けて紹介する同展。今期のテーマは、これまで皇室に献上された名品です。献上の機会というのは、即位の礼や立太子の礼、御結婚といったお祝い事や国内各地へ天皇の行幸、それから皇族方のご訪問など。また長く保護されることを願って、旧公家や旧大名家、寺院などからの献上もあり、それらの中には国宝や重要文化財も含まれています。

  • 《粘葉本和漢朗詠集》伝 藤原行成

  • 国宝《春日権現験記絵》高階隆兼

展示では、国宝《春日権現験記絵》、国宝《唐獅子図屏風》、国宝《動植綵絵》など、同館を代表する名品が多数登場。高階隆兼による《春日権現験記絵》は、春日大社の創建と霊験を語る中世絵巻の傑作です。三頭の唐獅子が金地の大画面に描かれた《唐獅子図屏風》は、右隻は桃山時代の狩野永徳、左隻はそのひ孫の狩野常信が江戸時代に制作したもので、旧荻藩主・毛利元徳の献上品。

  • 国宝《唐獅子図屏風》狩野永徳

  • 国宝《動植綵絵》伊藤若冲

また伊藤若冲の代表作《動植綵絵》は、30幅からなる大規模な花鳥図で、もとは京都・相国寺に寄進され儀式に用いられていたもの。1889年(明治22年)に明治天皇へ献上されました。同展では30幅のうち4幅を公開しています。右隻に八人の王侯騎乗図とポルトガル地図、28の都市図が、左隻には世界地図と諸国の人物が描かれた重要文化財《萬図絵図屏風》は、明治天皇の御学問所にあったとされる一品です。

  • 《宇治川蛍蒔絵料紙箱》初代 飯塚桃葉

  • 《双鶏置物》戸島光孚ほか

こうした献上品を中心に、皇室に受け継がれてきた絵画、書跡、工芸品から選りすぐりの名品を紹介する同展は、6月23日まで公開です。

■information
皇居三の丸尚蔵館 開催記念展「皇室のみやび―受け継ぐ美―」
第4期「三の丸尚蔵館の名品」

会場:皇居三の丸尚蔵館
期間:5月21日~6月23日(9:30~17:00)/月曜休/会期中一部展示替えあり
料金:一般1,000円、大学生500円、高校生以下・満18歳未満・満70歳以上および障がい者手帳をお持ちの方と介護者1名は無料