藤井聡太名人に豊島将之九段が挑戦する第82期名人戦七番勝負(主催:毎日新聞社・朝日新聞社)は第4局が5月18日(土)・19日(日)に大分県別府市の「割烹旅館もみや」で行われました。対局の結果、横歩取り調の力戦から抜け出した豊島九段が95手で勝利。1勝3敗として名人奪取に望みをつなぎました。

豊島九段の横歩取らせ

3連敗と追い込まれた豊島九段は3手目に端歩を突く趣向を披露。横歩取り後手番の作戦を先手番で応用する意図で、青野流に進んだ場合この端歩突きのおかげで端角が打てる含みが生じています。後手の藤井名人が飛車を引き上げ、まずは豊島九段の注文が通りました。

持久戦に進むかと思われた盤上は豊島九段の決断の一手により乱戦に突入します。敵陣に打ち込んだ角をズバっと切ったのは直後の金打ちに期待したもの。後手陣を乱しつつ飛車の入手を確実にして主導権を握りました。藤井名人も局後これを「まずかった」と認めます。

互角から再度引き離す

飛車を手にした豊島九段は一転して受けに回ります。自陣に作られた馬を捕獲すれば怖いところがないという大局観ですが、藤井名人もこの馬の代償に得た金を自陣に打ち付け「負けない将棋」を展開。激しかった盤上は互角の形勢でいったん仕切り直しとなりました。

2日目の夜に入ったころ、豊島九段は温存していた飛車をついに盤上に投入。玉頭突破を防ぐために後手は貴重な持ち駒である桂を自陣に吐き出すよりなく、ここから先手の体力勝ちが徐々に明らかに。防戦の時間が続く藤井名人は心なしか前傾姿勢が目立ちます。

ついにつかんだ1勝目

攻めが一段落した局面でじっと玉を寄ったのが豊島九段の決め手。飛車を切っての猛攻を可能にするこの玄人好みの好手により、逆転の可能性は限りなく低くなりました。終局時刻は20時49分、最後は自玉の受けなしを認めた藤井名人の投了により豊島九段が勝利。

勝って1勝3敗とした豊島九段は「5局目につながったのでよかった」とほっと一息。藤井名人の先手番で迎える第5局は5月26日(日)・27日(月)に北海道紋別市の「ホテルオホーツクパレス」で行われます。

水留啓(将棋情報局)

  • 豊島九段は今年度初勝利を挙げるとともに対藤井名人戦の連敗を12でストップ(提供:日本将棋連盟)

    豊島九段は今年度初勝利を挙げるとともに対藤井名人戦の連敗を12でストップ(提供:日本将棋連盟)