こうして急ピッチの作業で無事放送にたどりつくことができた今作。藤森氏は以前、バラエティの制作現場にいたが、「バラエティは、急にゲストが決まって新しい企画を立ち上げなきゃいけないということが結構当たり前で、それがどんどんやってくる感じがあるんです。さすがに今回、ゼロから立ち上げて1か月でクランクインというのは焦りもありましたが、“何とかなるでしょ!”という気持ちで取り組むことができたのは、バラエティの経験があったからかもしれません」と分析する。

また、すべてのキャスト・スタッフから、「自分1人が欠けたら作れないんだ」という高い意識と熱気を感じながら制作しているという。

「もちろんどの作品でも皆さん熱い思いはあるのですが、普通のドラマは毎回チームが代わり、最初は探り合っていてだんだん仲が深まっていく感じのところ、今回は最初の時点で“これは頑張って放送して、みんなでいいものを作るんだ!”というプロジェクトの感じがありました。だから最初からコミュニケーションが取れて、誰一人文句も言わず、とてもいい現場だなとすごく思っています」

そして、今回の経験を通して、「この作品は、私一人が頑張ろうと言っても絶対に作れませんでした。周りの人をいかに信頼できて、信頼してもらえて作っていくかというのが、ドラマはバラエティよりも大事だと思うんです。これからも、周りの人たちに信頼を持ってもらうために、感謝して頑張らなければと、改めて気付かされました」と、思いを新たにした。

ドラマ作りに込める思い「信頼できる人が隣にいるということ」

きょう11日に放送される第3話には、伊藤健太郎が久々に地上波ドラマに登場しており、「正義の運命に関わる人物として出てきて、新たにドラマを引っかき回していく役どころなので、ポイントです」と予告。また、「正義は本当にいい人だったのに、一度悪い方向に行ってしまうとそれがどんどん加速していくので、どこまで進んでどうなってしまうのかにも、注目して見ていただけたらと思います」とも語る。

  • 伊藤健太郎 (C)日テレ

今作で1つの柱として描かれるのは、結婚7年という年月を重ねた夫婦の関係性だ。「ちょっとなあなあな関係になっている中で、妻の日々の鬱憤(うっぷん)が爆発するとともに、シュン(曽田陵介)という新しい男性が出てきてそっちに気持ちが向いてしまったり、リアルな夫婦の感じが3話から5話へどんどん出てきて、結婚して5年以上経った人たちにすごく共感してもらえると思います。パートナーの大切さを感じるかもしれないし、もしかしたら“一緒にいていいのだろうか…”と思うかもしれませんが、自分に置き換えて見ていただければ」と呼びかけた。

ここには、藤森氏がドラマ作りにおいて一貫している思いが込められている。

「人って、自分のためだけだったらなかなか変わらないし、変われないんだろうなと、すごく思うんです。だから、夫婦もそうですし、仲間もそうですし、いつも近くにいる人が本当に大切な人だということにちゃんと気づけることが、すごく大事だなと。それは正義にとっての彩もそうだし、商店街の仲間たちを助けたいという気持ちもそうです。信頼できる人が隣にいるということが、どれだけ大切なことで、かけがえのないことかを伝えたくて、日々作っています」

今作では異例の制作スケジュールによって、多くの仲間たちによる協力を特に感じているだけに、その思いは一層込められているようだ。

●藤森真実
1983年生まれ、千葉県出身。早稲田大学卒業後、07年に日本テレビ放送網入社。バラエティ制作からスタートし、『行列のできる法律相談所』『人生が変わる1分間の深イイ話』『メレンゲの気持ち』『ニノさん』『しゃべくり007』などを担当。ドラマ制作に異動し『ハコヅメ ~たたかう!交番女子~』『祈りのカルテ』『Dr.チョコレート』『となりのナースエイド』『街並み照らすヤツら』などをプロデュースする。GP帯ドラマ初担当の『ハコヅメ』は第48回放送文化基金賞でテレビドラマ番組最優秀賞、個人でも2022年エランドール賞プロデューサー奨励賞を受賞した。