明日に行われる第82期名人戦七番勝負(主催:毎日新聞社・朝日新聞社)第3局において、藤井聡太名人との対局を控えている豊島将之九段。藤井一強時代と呼ばれる現状をどう研究し、どう戦っていこうとしているのか。

本稿では、2024年5月2日に発売される、『将棋世界2024年6月号』(発行=日本将棋連盟、販売=マイナビ出版)掲載の「私の戦い方」連載4回目より、豊島九段のコメントを一部抜粋してお送りいたします。

  • 『将棋世界2024年6月号』より

    『将棋世界2024年6月号』より

(以下抜粋)

実力があっても結果を出すのは難しい

―この度はA級順位戦を勝ち抜いて名人挑戦を決められました。おめでとうございます。

「ありがとうございます」

―このコーナーで皆様に共通して聞いている質問がありまして、それを最初に伺いたいと思います。現在、将棋界において、藤井聡太竜王・名人が八冠を独占しておられるという状況になっていますが、どのようにご覧になっていますか。

「自分も結構、重要なところで負けてしまっているので、悔しさはあります。例えば最近であれば王座戦がそうでした。実力差があったとしても、それを結果に反映させていくというのはすごく難しいことだと思うので、非常に充実されていると思います。  

将棋自体がかなり難しいものなので、実力に差があっても、必ずしも強いほうが絶対に勝っていけるというものでもないですし、そういった中で全冠制覇されているというのは、すごく大変なことです」 

王将戦、棋王戦の感想は?

―今年に入ってからのタイトル戦について伺います。まず王将戦についてです。全局振り飛車となりましたが、このシリーズをどうご覧になりましたでしょうか。

「徐々に藤井さんの側が有利になって、そのまま押しきるような将棋が多かったですね。ペースをつかんで、ちょっとずつよくしていくっていう展開だと、ほとんど逆転負けがない方なので。菅井さんは振り飛車特有の将棋で、逆転勝ちが多いタイプなんですけど、そういう菅井さんのパターンが出なかったという感じなのかなと思いました。  

第1局は互角に近い局面で、藤井さんがどんどん時間を使っていた展開だったので、そこで何かもう1手2手、互角を保つような手を指せていたら、また違った展開になったのかもしれません」

―棋王戦についてはいかがでしょうか。

「伊藤さんがすごく研究が深い方ということで、序盤で藤井さんの側が変化をして角換わりを避けたりという将棋もあったりとか、ちょっといままでの藤井さんのタイトル戦とは違った形になったのかなと思います」

―その角換わりを避けた将棋というのが第4局だと思うんですが、その直後の藤井棋王のインタビューでは、まさに豊島先生の将棋も参考にしたとおっしゃっていました。

「そうですね。私も何回か指しています。非公式戦のSUNTORYオールスターで途中まで似たような展開になったんですけど、伊藤さんの研究がすごく深いのを感じました。持将棋の将棋も研究の深さを感じさせましたね」

豊島九段が考える「将棋の結論」

―その持将棋のことですが、角換わりでは先手番が有利なのではないかという観測もある中で、後手番から持将棋に誘導したことは大変話題になりました。

「伊藤さんは、別の形でも持将棋を目指すような展開を指されていますね。持将棋のルールが、コンピューター対局で採用される27点法というルールと、人間の棋士の対局で採用される24点法とで変わってくるということはあります。こうなったら持将棋になります、ということを結論として確立するのは相当大変だと思いますが、それでも画期的な将棋だったのかなと思います」

―それに関連して、この『私の戦い方』の中で、『将棋の結論をどう思いますか』と中村太地八段に伺ったことがあり、『千日手だと思う』とおっしゃってました。先生はどのようにお考えでしょうか。

「いまのところは先手が押していて、後手がどう戦うかというところはあります。千日手に誘導するのも難しいイメージです。角換わりの先手番の定跡では、結論とまではいかないですけど、それに近いものが出つつあるという風に見られているところもあります。しかしこれまでも、結論めいたものが出そうになっても、またひっくり返る、ということを何回も繰り返しているので、もうちょっと可能性があるんじゃないかなという感じもしています。

確かにソフト同士で指すと先手が勝つことが多いですが、角換わりの定跡でも、際どい形になることが多くて、詰む詰まないが関わると、ソフトも判断できないということもたまにあります」

(連載インタビュー私の戦い方vol.4 豊島将之九段「わかりそうでわからないものに惹かれる」 インタビュー/會場健大)

『将棋世界2024年6月号』は、2024年5月2日発売!!

『将棋世界2024年6月号』
発売日:2024年5月2日
特別定価:920円(本体価格836円+税10%)
判型:A5判244ページ
発行:日本将棋連盟
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