JR東海は、マンガ・アニメ・ゲームなどさまざまなコンテンツと連携し、ユーザーに新たな楽しさを提供する「推し旅」キャンペーンを展開中。その一環で、昨年6月に創業40周年を迎えたカプコンとコラボし、観光プロジェクト「CAPCOM TRIP TOKAI」を2024年2月1日から実施している。
4月24日から7月31日まで、現地企画第3弾にしてプロジェクトの目玉企画「豊橋へ 一狩りいこうぜ!」を展開。豊橋市内を走る豊橋鉄道市内線(東田本線)で、同プロジェクトのキービジュアルを使用したラッピング電車も運行される。
今年3月に20周年を迎えた人気ゲーム『モンスターハンター』が豊橋駅周辺エリアをジャックする企画の「狩猟解禁」(4月24日)に先立ち、報道関係者・インフルエンサーらを対象とした「豊橋へ 一狩りいこうぜ!」オープニングセレモニーおよびプレスツアーが4月23日に開催された。全作品ではないものの、筆者も『モンスターハンター』シリーズを遊んだことがあり、その知見を生かして豊橋市と「モンハン」のコラボを体験した。
新幹線で豊橋駅へ、新幹線車内限定クイズを体験
「豊橋へ 一狩りいこうぜ!」の舞台となる豊橋市内まで、東京駅から東海道新幹線で移動した。移動中の車内で、主催者であるJR東海の営業本部需要創出グループリーダー、伊藤悟氏が、「カプコンと長い期間、打ち合わせ等させていただきながら、今回の企画を作ってまいりました」と挨拶した。
新幹線車内だけで楽しめる限定コンテンツ「カプ旅クイズ100」も紹介された。東海道新幹線(東京~新大阪間)に乗車した上で、スマートフォンの位置情報によって一定速度を検知すると体験可能なクイズとなっている。初回参加時に無料のアカウント登録が必要で、クイズは1日最大5回まで挑戦可能(1回10問)。クイズや現地企画参加によって獲得したポイントに応じてランクが上がり、景品の抽選に応募できるようになる。
乗車中、筆者も「カプ旅クイズ100」に挑戦。筆者が知っている作品については難なく正解できたが、知らなかった作品からの問題には苦戦を強いられた。正解か不正解か発表される際、カプコン作品にちなんだ有名なフレーズが表示され、遊び心が垣間見える。車窓を眺めるかクイズに挑むかで車内での過ごし方が変わるが、ときにはこのようなひと時も面白いだろう。
新幹線車内での昼食として、豊橋の名物駅弁「三色稲荷寿し」(壺屋)も配布された。通常の発売額は720円。甘口の稲荷寿しになっており、甘辛い油揚げに酢飯がよくマッチする。「三色稲荷寿し」では、通常の稲荷寿司3貫に加え、ちりめん山椒入りが2貫、わさび菜入りが2貫。ちりめん山椒入りの稲荷寿司はちりめんじゃこと白ごまが香ばしく、わさび菜入りの稲荷寿司は甘味の残りがちな口内をピリッとした辛みですっきりさせる。
豊橋駅の各所に実店舗を構えるほか、名古屋栄三越本店、名鉄百貨店などにも出店している。都内なら西武池袋本店を訪ねてみると良いだろう。そば・うどん店としても、豊橋駅、豊川駅、蒲郡駅に出店している。
豊橋市内の各所で「モンハン」コラボ、ラッピング電車も
豊橋駅到着後、実際に豊橋市街地を回遊するプレスツアーに移行。コラボ期間中に行われるデジタルスタンプラリー「トヨハシクエスト」で、参加者が訪れることになる施設の中から4カ所を訪問した。「トヨハシクエスト」も、キャンペーンサイトにて無料アカウント登録を行った上で挑戦することになる。
まずは、豊橋駅の新幹線改札前に位置する豊橋観光案内所。ここに「トヨハシクエスト」の報酬引換えカウンターが設置されている。5カ所以上でクエストをクリアし、引換えカウンターを訪れると、クリアしたクエストに応じた「カプ旅ステッカー」がもらえる。「カプ旅ステッカー」は、カプコンゲームのキャラクターたちが東海エリアの魅力を体験・紹介する様子を特製イラストで描いたステッカー。5カ所クリアで5枚プレゼントされ、以降はクエストを1つクリアするごとに1枚ずつ、全部で10枚のステッカーがもらえる。
ちなみに、引換えカウンターの背景はリバーシブル仕様になっており、片面は『モンスターハンターライズ』でハンターの拠点となる「カムラの里」集会所をモチーフにしたパネル、もう片方は同作品に登場するキャラクターを散りばめたパネルになっていた。近年発売された作品ということもあり、目に留まる人も多いだろう。まさに作中の「クエストカウンター」を再現したような雰囲気に見受けられた。
階段を降りて在来線改札前に進むと、「豊橋へ 一狩りいこうぜ!」のキービジュアルとともに、「トヨハシクエスト」の10種類のクエストが「クエストボード」として貼り出されている。実際のゲームでは、ハンターはさまざまな依頼人から出される依頼を受注して狩りに出発する。その依頼には、クエスト名、難易度、目的地、成功条件、依頼主の名前または特徴と、依頼文が書かれている。「トヨハシクエスト」も、地元要素を取り入れながら作中の依頼と同じように作成されており、今回のコラボに対する本気度がうかがえた。
キービジュアルは豊橋市公会堂や豊橋鉄道市内線など地元要素を取り入れ、同市発祥の手筒花火を打ち上げた背景になっている。そこへ『モンスターハンター』の看板モンスター「火竜 リオレウス」と、20周年記念サイトのユーザー人気投票で1位に選ばれた「雷狼竜 ジンオウガ」が雄叫びを上げており、にぎやかで迫力満点。イラストは「モンハン」シリーズのノベライズ・コミカライズ等で実績のあるイラストレーター・漫画家の布施龍太氏、題字は「モンハンライズ」で筆文字ロゴを担当した書道家・アーティストの青柳美扇氏が手がけた。
1つ目のクエストに挑戦するための二次元コードは、新幹線改札口の正面に、記念パネルと一緒に設置されている。これをスマートフォンやタブレットで読み取ることでクエストに挑戦でき、指定された条件を満たせばクエストクリアとなる。ここを起点に、あと4カ所以上の施設を回遊し、クエストを攻略しよう。
続いて豊橋鉄道市内線の駅前電停に移動。市内線で活躍するモ800形(モ803号)の外観に、イベントのキービジュアルを使用したラッピングが施されていた。駅前方に「リオレウス」、赤岩口・運動公園前方に「ジンオウガ」を配置しており、各前面に両者のカラーリングを取り入れている。車内の降車ボタンにも変化があり、ボタンの部分が、猫のような獣人族「アイルー」の肉球を模したデザインになっていた。
「トヨハシクエスト」では、市内線の路面電車そのものがクエストスポットのひとつとなり、すべての車両に二次元コードが設置される。「モンハン」ラッピング電車は、市内線および豊鉄バスの位置情報サイト「のってみりん」にて、駅前方面は「リオレウス」、赤岩口・運動公園前方面は「ジンオウガ」のアイコンで表示される。コラボ期間中、記念デザインの1日乗車券も販売されるとのこと。運用上の都合により走行しない日もあるので、その場合は他の車両でクエストに挑戦してほしい。
その後、駅前電停から北へ進んだところにある「ときわ通り商店街」へ。ここはクエストスポットではないが、商店街一帯に「モンハン」記念装飾を施し、コラボを盛り上げている。通路脇には14種類の武器を構えるハンターをあしらったのぼり、アーケード天井には歴代シリーズで登場したモンスターたちのバナーを飾っている。パッケージに登場するモンスター以外に、マニアックなモンスターも展示された。
なお、商店街をまっすぐ進んだ先にある「こども未来館ここにこ」が、クエストスポットのひとつに設定されている。館内に「ジンオウガ」のバルーンも展示されるので、あわせて見てみると良いだろう。筆者もツアー終了後に「ジンオウガ」バルーンを見に訪れたところ、武器があったら構えたくなるほどの強い迫力を感じた。
最後は「穂の国とよはし芸術劇場PLAT」前にある水上ビルを見学。一般的なビルに見えるが、じつは暗渠化した牟呂用水の上に建っており、豊橋ビル・大豊ビル・大手ビルからなるビル群だという。その芸術劇場に面した外壁に、壁を蹴破って出現したかのような「リオレウス」の装飾が施された。
「火竜」と呼ばれる通り、炎ブレスを放ってハンターに襲いかかる「リオレウス」だが、それに加えて毒を含んだ爪も脅威となる。ゲーム中、空中を飛行する「リオレウス」が繰り出す毒キックを食らったことがある人は多いだろう。その緊張感を思い起こさせる、迫力ある装飾と見受けられた。
実際の「トヨハシクエスト」では、今回訪問した以外にも、吉田城(豊橋公園)、豊橋市公会堂、豊橋駅西側のサーラプラザ豊橋1階「グリーンカフェ」など、さまざまな場所にクエストが用意されている。ぜひ豊橋の街めぐりを楽しみつつ、クエストに挑戦してみてほしい。各施設のアクセスや営業時間・定休日は、現地で配布されるリーフレットに記載されている。コラボ期間中、豊橋駅直結「ホテルアソシア豊橋」にて1日1室限定で「モンハン」コラボルーム(スタンダードツイン)も設定される。
「豊橋へ 一狩りいこうぜ!」オープニングセレモニー、記念オブジェ除幕
「穂の国とよはし芸術劇場PLAT」では、「豊橋へ 一狩りいこうぜ!」オープニングセレモニーが行われた。『モンスターハンター』テーマ曲「英雄の証」をBGMにセレモニーが始まり、主催者であるJR東海の執行役員・営業本部長、榊原篤氏が、「豊橋の皆様に多大なるご協力を賜り、これまでにない規模感でのコラボが実現しました」と挨拶した。
榊原氏に続いて豊橋市長の浅井由崇氏が登壇し、「私たちの町・豊橋が、『モンスターハンター』の新たなる冒険の場所に選んでいただいたことを感謝申し上げます」と歓迎。『モンスターハンター』シリーズプロデューサーを務めるカプコンの辻本良三氏は、「多くのハンターの皆さんがこの豊橋に来ていただくことを願っています」と挨拶した。
代表者らの挨拶に続いて、「トヨハシクエスト」の遊び方を実演する映像が放映された。豊橋市内にやって来た「アイルー」が、豊橋市観光プロモーション課職員の助けを借りて市内を巡る。「こども未来館ここにこ」で「ジンオウガ」バルーンと対峙したり、「グリーンカフェ」でコラボメニューを堪能したりしつつ、スマートフォンを二次元コードにかざしてクエストを進めていく。
プロモーション課職員が仕事のためにパーティーから解散したところで映像は終了したが、ここでその「アイルー」が会場に登場。壇上の浅井市長に招かれ、最後の二次元コードを読み込むと、BGMとともに見事クエストクリアを達成した。実際の「トヨハシクエスト」も、このように二次元コードを読み込みながら巡っていくことになる。
セレモニーでは、芸能界きっての「モンハン」ファンというタレントの後藤真希さんも登場した。「モンハン」の魅力について、「自分のやり方でどこまでも楽しめる要素がある」と語る後藤さん。豊橋駅には初訪問と話しつつも、「街を楽しんでもらいたいし自分も楽しみたいというような、好きなものがあふれているような街を散策できるって素敵だなと思いました」とコメントした。
最後に後藤さんと、JR東海の榊原氏、豊橋市の浅井市長、カプコンの辻本氏の4人が壇上に上がり、記念オブジェの除幕が行われた。このオブジェは、豊橋市初の「とよはしニャンバサダー」に迎えられた「アイルー」が、豊橋市発祥の手筒花火を打ち上げる姿を立体化している。このオブジェはセレモニー終了後、豊橋駅の在来線改札前に設置された。
多数の地元名産品がコラボに参加
最後に、コラボに参加している地元名産品の実物を紹介していく。「モンハン」要素を取り入れたパッケージや、「CAPCOM TRIP TOKAI」ロゴマークをあしらったパッケージが中心となっている。
まずは、1827年創業のヤマサちくわから「豆ちくわ詰合せ」。豆ちくわ・生姜豆のセットに、わさび漬けが添えられている。そのまま食べても美味しいが、わさび漬けをつけると違った味わいになる。作中の「肉焼きセット」でハンターがちくわを焼いているコラボパッケージで、価格は780円。「帰りの新幹線も思い出にしてほしい」と担当者は話していた。
駄菓子コーナーでよく見る「ブラックサンダー」の生みの親、有楽製菓は、「豊橋ブラックサンダーミニバー モンスターハンターパッケージ」(価格972円)を販売。名前の「サンダー」にちなみ、雷属性の要素を持つ「ジンオウガ」を起用したコラボパッケージとなっており、オリジナルカードも付属する。担当者によると、「『ブラックサンダー』で他社キャラクターとのコラボは初めて」とのこと。
「八雲だんご」を運営する丸八製菓は、「モンハンライズ」でクエスト出発前に食べられる「うさ団子」をそのまま再現。3色団子となっており、上段にあるピンク色の団子はほのかに甘い「あんこオトもち」。備え付けのあんソースとも好相性。真ん中の団子は、中にガナッシュチョコが入ったチョコミント味の「サイミント大福」だった。
下段の黄色い団子は「雷山椒だんご」。和菓子ではめったに使われない山椒を使用し、雷属性のピリピリ感を表現した。生姜を使用した白あんが入っており、鋭い辛さを抑えながらピリッとする風味を残していて美味しい。2本入りの冷凍販売で、価格は1,620円。ゲーム内のハンターはひと口で豪快に食べるが、実際は餅なので、のどに詰まらせないでほしい。
老舗コーヒー専門店のワルツからは、氷を司る古龍「冰龍 イヴェルカーナ」をラベルに起用した「水出し専用アイスコーヒーバッグ」(価格1,243円)や、「CAPCOM TRIP TOKAI」コラボラベルの「豆菓子(かき醤油味)」(価格543円)を販売。菓匠華月の「うずらプリン」(価格390円)も、7月31日まではコラボラベルを使用する。
日本酒は3種類がコラボに参加。地酒蔵・伊勢屋商店「大吟醸 延年」(価格2,700円)は、巨大な古龍「老山龍 ラオシャンロン」をラベルに採用し、すっきりした飲み口の後にゆっくり移り行く香りを表現。福井酒造の、2種類の青梅を使った「鳳来寺山 梅酒」(価格1,485円)は、泡でハンターを翻弄する「泡狐竜 タマミツネ」を起用している。代表銘柄「四海王 特別純米酒 夢吟香」(価格2,035円)は、「海王」の名前にちなんで「海竜 ラギアクルス」をラベルに採用した。
時間の都合上、すべてを取材することはできなかったが、豊橋名物のあん巻きや、ご当地スイーツ「ピレーネ」、本物の藁で箱を編んだ「手筒まんじゅう」など、多くの名産品が「モンハン」とコラボしている。おもな販売場所は、豊橋観光案内所、ベルマートキヨスク、豊橋駅ビル「カルミア」。クエスト開始前にチェックしてみると良いだろう。他にも「チーズの佃煮」(濱金商店)や、帆前掛け(エニシング)、手ぬぐい(間瀬織布)、豊橋米食べ比べセット・ペットボトルライス(清須ライスセンター)がコラボラベルおよびデザインで発売準備中とのこと。
筆者は翌日まで豊橋市内に滞在したが、豊橋駅構内では早速、「トヨハシクエスト」挑戦者や、記念オブジェ等を撮影する人、その後ろで歴代作品のムービーを見る人の姿が見られた。引換えカウンターに並ぶ人はまだいなかったが、スタッフが声高らかにイベントを宣伝しており、これからの盛り上がりに期待が高まる。
かくして「豊橋市街地」と呼べるフィールドが、2024年7月31日までの期間限定で「狩猟解禁」となった。「モンハン」経験者の筆者から見ても、作中の要素を忠実に再現しつつ、地域一体で力を込めていることがうかがえ、満足感の高いイベントと感じた。使える交通機関を駆使し、地元の食を楽しみながら、クエストを巡ってみてはいかがだろうか。ただし、遠方からのハンターにとっては冒険の舞台であっても、地元住民らにとっては大切な生活の場である。住民や各店舗の迷惑にならないように配慮しつつ楽しんでほしい。