5月6日、東京ドーム『Prime Video Presents Live Boxing 8』まで、あと2週間を切った。4団体(WBA、WBC、IBF、WBO)統一世界スーパーバンタム級タイトルマッチを闘う王者・井上尚弥(大橋)、挑戦者のルイス・ネリはともに最終調整に入っている。

  • 34年ぶり「東京ドーム・プロボクシング興行」のメインで闘う井上尚弥(左)とルイス・ネリ。試合の模様は「Prime Video」で生配信される(写真:SLAM JAM)

4月21日に来日したネリは、その2日後の23日に帝拳ジムでメディアに練習を公開した。そこで彼が口にしたこととは? そして“番狂わせ”を起こすための秘策はあるのか?

■「いずれが勝つにせよKOで決まる」

「5カ月間しっかりと練習をしてきてMAXのコンディションだ。世界戦に必要なメニューをすべて消化してきた。ここまでに出来に満足している。減量も順調で、過去の試合前よりも10~20倍良くカラダが仕上がっている」
公開練習直前、顎に髭を蓄えたネリは落ち着いた口調でそう話した。

集まったメディアから、さまざまな質問が飛ぶ。
──ドーピング検査は受けたのか?
「3回受けて、すべて陰性で何の問題もない。最後に受けたのは20日前だ」

──井上に対する現在のあなたの評価は? 以前のインタビューでは「井上は過大評価されている」とも話していたが。
「イノウエは、グレートなボクサーだ。スピードがありパワフルでキャパシティもある。
それでも過大評価されているとは思う。(マーロン・)タパレス(フィリピン)を倒すのに10ラウンドまでかかってしまう選手に過ぎない。バスケットボール界におけるマイケル・ジョーダンのような特別な存在ではないということだ」

──今回、井上と闘うことにはどんな思いがあるのか?
「4年前からずっと、イノウエと闘いたいと思っていた。彼と闘うために3回も次期挑戦者決定戦をクリアしたのに実現しなかったからね。WBSS(ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ/バンタム級で井上が優勝)への出場も希望したが出られず、凄く長く待った。ようやく闘える、とても嬉しい」

──「井上優位」の声が大きいが、それについては?
「当然だと思う。井上は無敗の世界王者だ。でも私にも勝機はある。2人にとって厳しい試合になるだろう。厳しさを感じるのは私だけではなくイノウエもだ。いずれが勝つにせよKO決着になる」

  • 東京・新宿区にある帝拳ジムで行われたネリの公開練習には多くのメディアが集まった(写真:SLAM JAM)

■「イノウエの弱点を見つけた」

挑発的な質問もあったが、ネリは至って冷静に受け答えをしていた。
そして、彼の隣に座ったチーフトレーナーのサニール・ロサーナ氏も幾つか発言している。興味深いと思ったのは次の件だ。
「5月6日、イノウエは驚くことだろう。彼のスパーリングパートナーを務めたメキシコ人選手から話を聞いて意見ももらった。研究は終えており、すでに幾つかの彼のウィークポイントも把握している」

ネリも言った。
「私たちが見つけたウィークポイントが何かは、いまは言えない。そこは試合でわかると思う。楽しみにしていて欲しい」
ネリ陣営が見つけた井上の弱点とは何か?
この日、帝拳ジムには大橋ジムの大橋秀行会長、井上尚弥の父・真吾トレーナーも姿を見せていた。
その前でネリは各1分のシャドーボクシングとミット打ちを披露。公開練習は短時間で終了した。

  • シャドーボクシング、ミット打ちを公開した後にチーフトレーナーのサニール・ロサーナ氏と言葉を交わすルイス・ネリ(写真:SLAM JAM)

その直後、井上真吾氏は言った。
「(公開練習を)本気では動いていないと思いますけど、パワフルではあってもキレは感じませんでした」
弱点があると指摘されたことについても「みんな、そう言うんですよ」と一蹴。
さらにスパーリングパートナーから情報が漏れたとされることについても触れる。
「どうなんですかね。スパーリングパートナーが何か言ったのかどうかも知りませんが、そこは何とも思わないです」と意に介していない様子だった。

ネリ陣営が本当に井上の弱点を見出したのか、井上のスパーリングパートナーから情報提供があったのか…いずれも確かではない。
ただ一つ強く感じたのは、ネリの中に迷いがないこと。この日の落ち着いた様子から、すでにやるべきことを決めているように思えた。
ネリの「やるべきこと」とは何なのか? 井上のこれまでの対戦相手とネリは何処が違うのか? そして勝つのはどっちだ!?
次回(4月25日)、「井上尚弥vs.ルイス・ネリは、こうなる!『5・6東京ドーム決戦』」をお届けする。

▼井上真吾氏、ネリのミット打ちを視察し「キレとかは感じなかった」井上尚弥の現在の状態にも言及『Prime Video Presents Live Boxing 8』公開練習

文/近藤隆夫