いよいよプロ野球開幕。テレビのスポーツニュース、スポーツ新聞、YouTubeなどで野球評論家たちが順位予想を行っている。セ・リーグでは阪神タイガース連覇の声が大きく、そこに阿部慎之助が新監督になった新生ジャイアンツが、いかに絡むかが焦点になっている。

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だがひとり「中日ドラゴンズが優勝する」と予想するメデイア関係者がいる、スポーツジャーナリストの近藤隆夫氏だ。2年連続最下位に沈んでいるドラゴンズが優勝すると見る根拠は何かを尋ねてみた。

■さらに増した投手陣の厚み

──まずは、近藤さんのセ・リーグの順位予想を。
「優勝が中日ドラゴンズ、2位・広島、3位・阪神、4位・横浜DeNA、5位・ヤクルト、6位・巨人。2位から6位までは変動があると思いますが、今年の中日は優勝できる戦力が整っています。最下位から一気に駆け上がれるチームになっていると思います」

──ドラゴンズの優勝を予想する具体的理由は? あなたがドラゴンズファンだからではありませんか?
「確かに私は、子供の頃から半世紀近くドラゴンズファンです。でも、それが理由ではありません。昨年、一昨年は客観的に見てドラゴンズの優勝予想はできませんでした。ただ今年は違います。立浪和義監督は2年間迷走しましたが、今年は『いかに勝つか』に迷いがなく、そのための戦力も整っています」

──FAで中田翔を獲得、新外国人アレックス・ディカーソンも加わった。ウィークポイントだった打撃陣が強化され戦力が整ったと。
「いや、そうではありません。ドラゴンズはオープン戦首位でしたが、それは打線が強化されたからではありません。実際にオープン戦での中田の打率は.132、ディカーソンも.167。そこには過度な期待はしない方がいいと見ています。
開幕戦から出場できるかどうかは分かりませんが、安打製造機の岡林勇希、昨年2000本安打を達成した大島洋平、それにオープン戦で打ちまくった細川成也、シュアなバッテイングを取り戻している高橋周平らの活躍は見込めます。でも決定力においては未知数、一昨年、昨年よりはマシになったレベルかもしれません」

──では、戦力が整ったと見るのは?
「投手陣です。一昨年、昨年もディフェンスは悪くなかったですが、そこがさらに強化されました。クオリティスタート可能な先発ピッチャーがズラリと並びます。
開幕投手の柳裕也、小笠原慎之介、涌井秀章、高橋宏斗、ウンベルト・メヒア、梅津晃大、復活した大野雄大が先発ローテーション。そこにいつでも割り込める投手が、まだ3人います。根尾昴、仲地礼亜と松葉貴大。
中継ぎには、田島慎二、勝野昌慶、松山晋也、藤嶋健人、清水達也、祖父江大輔、レフティの斎藤網記がいる。そしてクローザーは昨シーズンに32セーブ、防御率0.39を誇ったライデル・マルティネス。投手陣は盤石、セ・リーグ6球団の中でズバ抜けた安定感を誇っています」

  • 今年のバンテリンドームは歓喜に包まれるのか(写真:PIXTA)

■『守り抜く野球』で勝ち切る!

──でも点が入らないと勝てない。
「そこは逆の見方もできます。最少得点しか上げられなくても相手チームに点を与えなかったら勝てるのです。おそらく今年のドラゴンズはロースコアゲームが続くと思います。そこをしっかり勝ち抜いていく。落合博満監督時代の毎回ヒリヒリする戦い方が再現されるでしょう」

──立浪監督が落合イズムにこだわると。
「そう単純な話ではありません。立浪監督は22年にわたる現役選手時代に2度の成功体験をしています。
最初は星野仙一監督の下での優勝。その後が落合監督の黄金期です。
監督就任当初は、髭、茶髪禁止を打ち出すなど厳しい姿勢を見せチームを引き締めようとしました。さすがに時代的にも鉄拳制裁はできませんが、低迷が続くチームの意識を変えることに必死だったんです。これは星野イズムでしょう。
2年目は迷走しました。“令和の米騒動”などと騒がれてしまう状況を自ら作ってしまった。藻掻きに藻掻いて『何とかしなければ』との思いから動いたことが、すべて裏目に出てしまいました。
そして3シーズン目、今年は後がありません。投高打低の現有戦力で勝ち抜くために『守り抜く野球』を選択するはずです。注目されたレギュラー三塁手を長打力の見込める石川昴弥ではなく、守備も安定している高橋周平に決めました。またショートに守備力の高いクリスチャン・ロドリゲスを起用するのも『守り抜く野球』をやり切るためです。
これは落合野球の模倣ではなく、過去2年間の失敗を糧にした立浪監督独自の勝負の仕方でしょう」

──最後に、具体的にはどのような展開になると。
「昨年よりも各チームの力が拮抗していると見ています。シーズン終盤まで優勝争い、CS進出争いは縺れるでしょう。そこにドラゴンズが加わるためには4月が大切です。開幕直後に大きく躓いてしまうと苦しくなりますが、ゴールデンウィークまでを勝率5割で行ければ波に乗れます。
縺れた状況で夏場を迎えたなら、そこで投手陣の厚みが活きてくるのではないでしょうか。粘り強くロースコアゲームで星を拾い、終盤に抜け出す。おそらくヒリヒリ、ヒヤヒヤの接戦が続くことでしょう。そんな中、1点差ゲームを勝ち切る力が今年のドラゴンズにはあると見ています」

果たして、近藤隆夫氏の予想は当たるのか?
2年連続最下位、11年連続してCS進出ができずにいる中日ドラゴンズの下剋上Vはあるのか?