女優業がグラビアに与えた影響
5年ぶりのグラビアで、新境地に達することもできた。
「水着の撮影は主に沖縄で行いました。久しぶりでしたが、それまでに時間をかけて、じっくり、ゆっくりと撮影してきてもらっていたので、恥ずかしさは特になく、自然な流れで撮ることができた。ただ、カメラの前だと決めちゃうというか、繕ってしまう。そういうとき、佐内さんはシャッターを押さない」
「私自身、そういう繕った姿ではなくて、にじみ出るような瞬間を撮ってもらえたらという共通認識があったので、そうだよね、今は押さないよねって。ニュアンスですけど、余計なものがそぎ落ちた状態。長年のクセとかを忘れて、新たな気持ちで撮ってもらうことができました」
女優として、演じることを突き詰めてきた5年間があって、演じないありのままの自分をグラビアで表現する。女優業に注力したことが、グラビアにも影響した? そう聞くと、「そうだなあ……」と考え込んだあと、「うまく言えないんですけど」と遠慮がちに前置きしながら、自身の感覚を言葉にしてくれた。
「グラビアだけをやってた頃と違って、お芝居でいろんな役を演じると、その分、たくさん人のことを知れるような気がする。自分の視野もどんどん広がっていくし、5年前と比べて、私自身が人を見る感覚も変わってるので、おのずと自分を見せるときの感覚も広がっているのかなと」
篠山紀信さんの“金言”
過去にグラビアを経験し、唯一無二の存在になっている女優も少なくない。女優業がグラビアに影響を与えたように、その逆もあるのだろうか。
「昔、篠山紀信さんに写真を撮ってもらったとき、『心のパンツを脱いでね』とおっしゃっていて。当時はまだ19歳くらいでしたが、感覚的にその言葉の意味はなんとなく理解できた。場所は違えど、根性的なことではなく、自分の殻を破るというか。それをグラビアで経験させてもらったなって。写真なら写真に対して、映画なら映画に対して、心がつながっているところがある。なので、お芝居にグラビアの経験はかなり生きているなと思います」
2018年公開の映画『犬猿』では、要領は悪いが、容姿と人当たりの良さで人気者の妹という役を演じた。ニッチェ・江上敬子演じる、見た目は悪いけど、頭がよく勤勉な姉と激しい感情をぶつけ合うシーンは圧巻だった。そう伝えると、筧は少し照れくさそうに微笑みながら、当時を振り返った。
「当時、技術的なことがまだ何も分かっていないときに、あの役をやらせていただくことになったので、本当に心のパンツを脱ぐしかなくて。体当たりで挑んでいくしかなかった。でも、あの作品が、これからもお芝居をやっていきたい、本格的に学びたいと思うきっかけになったので、そう言っていただけて、うれしいです」
グラビアで培ってきたもの、女優業で培ってきたもの、そして、写真が好きという気持ちがギュッと詰まっているという写真集の見どころはズバリ?
「写真集を作る上で、力みたくないと思っていたので、本当にいつも通り。むくんでる日もあるし、熱を出したあとで、すごくげっそりしてる日もある(笑)。普段は作品前に、自分のいい状態に持っていくように調整したり、体調に気をつけたりしているのですが、この写真集には、そうじゃない姿が随所に出てくる。これ、女優? ってなると思います(笑)」
(C)佐内正史/集英社
筧美和子
1994年3月6日生まれ、東京都出身。2013年、リアリティ番組『テラスハウス』(フジテレビ系)に出演し、注目を集める。2014年から2019年まで、ファッション誌『JJ』(光文社)の専属モデルを務める。2014年、ドラマ『最高の離婚Special 2014』(フジテレビ系)で女優として本格デビューを果たし、その後もドラマ・映画と話題作への出演が続いている。