跳ね馬のエンブレムを付けた、世界に7台しか存在しないベスパ

5月10日~11日、RMサザビーズのモナコでのオークションは「ヒストリック・レース・ウィークエンド」と同時期に開催される。5月23日~26日にかけてはモナコF1グランプリも開催されるので、両レースを満喫する方々もいらっしゃることだろう。かつてはミッレミリアの経由地がヒストリック・レース・ウィークエンド開催中のモナコ、ということもあったが、モナコ市内の混雑を避けるためか最近は時期をずらしている。

【画像】世界にわずか7台!ベスパのフェラーリ・エディションのディテール(写真45点)

そんな時期に開催されるRMサザビーズのオークションで気になるバイクを見つけた。ピアッジオ・ベスパLX 125の「フェラーリ・エディション」である。

「フェラーリ・エディション」は2001年にベスパET4にラインナップされたことがある。前年のF1での活躍を記念したモデルで、フェラーリ・レッドのボディに、フェラーリ車にも使用されるレザーシートが奢られた。ベスパET4のフロントには「ルカ・コルデロ・ディ・モンテゼーモロ」、「ジャン・トッド」、「ミハエル・シューマッハ」、「ルーベンス・バリチェロ」のデカールが貼られ、各20台ほどが生産された、と言われている。そして、スクーデリア・フェラーリのドライバーやクルーが世界各地のサーキットで、ベスパET4フェラーリ・エディションで疾走する姿が目撃された。

ベスパET4のフェラーリ・エディションはオークションでもたまに登場するが、驚くほど価値が見出されているわけでもないようでほぼ新車でも100万円ほどで流通している。だが、今回オークションに出品されているものはもっとレアなもののようだ。

2005年に登場したベスパLXはET4の後継モデルで、ベスパ誕生60周年を記念してローマ数字の「LX」をモデル名にした。フェラーリ・エディションは翌年デビューし、たった7台しか作られなかったという。ET4の時と同様、フェラーリ・レッドに塗られたボディに、スウェードと本革であつらえられたシートが奢られた。なお、シートの素材は1983年から2004年までスクーデリア・フェラーリのマシンで用いられたものと同じスケドーニ製なのだという。

ベスパが発行した原産地証明書によると当該個体は2005年にポンテデーラ工場で完成し、2006年6月にピアッジオからフェラーリに売却されたことが記されている。その後、マラネッロのフェラーリ・ショップを通じて販売されたと考えられている。このベスパはほとんど使用されておらず、現在の走行距離はわずか2,128kmで新車時の取扱説明書とフェラーリのポーチ付きで販売される。

RMサザビーズがカタログに掲載している「Documentation」によると、直近のオーナーはカリフォルニア州のハーレーダビッドソン・ディーラーであったようだ。オーナーは「マクラーレンよりも高い」と謳っていたようだが、実際のところは側面修復歴有りのもので7万ドルで取引されたことがある模様。ただ、7台しか存在しないバイクゆえに相場らしい相場が存在しない、とも言える。

落札予想価格はやや控えめに聞こえる1万5000~2万ユーロと見積もられているが、モナコという場所柄、競りは多いに盛り上がる予感がしてならない。

文:古賀貴司(自動車王国)

Words: Takashi KOGA (carkingdom) Photography: Tobias Kressman ©2024 Courtesy of RM Sotheby's