日本でいちばん売れている日産車「ノート」がマイナーチェンジした。エクステリアやインテリアのリデザインが大きなポイントで、メカニズムに変更はないとのことだ。なぜ、走りに手を入れなかったのか。それは、現行型ノートの完成度が高く、デビューから3年以上が経過しても走りが新鮮味を失っていないからなのかもしれない。試乗で確かめた。

  • 日産「ノート」

e-POWERは1万回転(!)まで実用域

現行型ノートのパワートレインは、1.2リッター直列3気筒エンジンで発電し、モーターを回して走るシリーズ式ハイブリッド「e-POWER」の一択だ。普通のガソリンエンジン車はラインアップしていない。これが個性を明確にし、デビューした年に国内のカーオブザイヤー三冠受賞を達成するなど、高い評価につながったと思っている。

今回はマイナーチェンジ後のノート(4WD)に乗ったが、メカニズムは変わっていない。4WDはプロペラシャフトで後輪に力を伝える方式ではなく、リアに独立したモーターを置く電動4WD。これも以前と同じだ。最高出力と最大トルクはエンジンが60kW/103Nm、フロントモーターが85kW/280Nm、リアモーターが50kW/100Nmを発生する。

  • 日産「ノート」
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  • 日産「ノート」は「e-POWER」のみ。グレードは基本的に「X」の1種類。駆動方式は2WDと4WDから選べる。価格は「X」の2WDが229.9万円、4WDが258.06万円

とりわけ目につくのはフロントモーターの最大トルクだ。自然吸気エンジンであれば2.8リッター級の大トルクを発生している。しかも、発生回転数は0~2,900rpmとなっており、発進の瞬間から最大トルクが体感できるようになっている。

一方、最高出力の発生回転数は2,900~10,341rpmとのことで、レーシングカー並みの高回転をあっさり出していることに驚かされる。

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    ボディサイズは全長4,045mm、全幅1,695mm、全高1,520mm

e-POWERは多くの電気自動車(EV)と同じようにトランスミッションを持たないけれど、ゼロ回転から1万回転以上まで使えるという数字を目にすると、なくて当然と納得する。そしてこれが、e-POWERならではの気持ちよさにつながっている。

その加速感をひとことで表すとすれば、シームレスだ。発進直後から、速度と比例してモーターが回転を上げていって、継ぎ目なく滑らかに加速していく。力についても、モーターの特性が低回転大トルク型なので、とくに街中でのストレスのなさが印象的だ。

アクセル操作に対するレスポンスにも好感を抱いた。唐突ではなく、タイムラグもない。このあたりは日産の豊富な電動車経験がいきているのだろう。

「生活四駆」から脱却した4WDにも注目

EVではないので力が必要とされる場面ではエンジンが始動するものの、そもそもノートe-POWERの駆動用バッテリー容量は1.5kWhと、同クラスのハイブリッド車と比べて大容量なので、エンジンの出番そのものが少ない。これも心地よさにつながっている。

しかもエンジン音は、ボリュームそのものが抑えられているうえに、雑味のある音をうまくシャットアウトしている。この点はマイナーチェンジでさらにレベルアップしたと感じた。

「エコ」「ノーマル」「スポーツ」の3つがあるドライブモードは違いが明確。ガソリン車に近いノーマルと比べるとエコは加速が穏やかになるだけでなく、アクセルから足を離したときの回生ブレーキが強めになり、スポーツでは加速も回生も鋭くなる。メリハリがあるのでシーンによって使い分けようという気持ちになる。

  • 日産「ノート」
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  • ドライブモードはシフトセレクター右側にあるスイッチで変更できる

さらに回生ブレーキを強くしたいと思うときには、四角いセレクターレバーを手前にクリックして「B」レンジを選べばいい。パドルがあればさらなる微調節が可能になるけれど、クルマにくわしくない人にとっては、このほうがわかりやすいだろう。

ちなみに、ドライブモードスイッチの手前にある「EV」スイッチは、ワンプッシュするとエンジンを止めて走るマナーモード、長押しするとエンジンを回してバッテリー容量を増やすチャージモードが選べる。早朝の出発や深夜の帰宅などで重宝しそうだ。

4WDのメリットについても触れておこう。現行ノートは4WDのリアモーターが先代より約14倍もパワーアップしている。50kWという数字は軽EV「サクラ」の47kWを上回る出力だ。

ノートでは、この余裕を舗装路での加減速やコーナーにも活用している。例えば街中でアクセルから足を離したときには、瞬間的にリアモーターの回生ブレーキを立ち上げることで、ピッチング(前後方向の揺れ)を抑えたりしている。ドライブしていると、たしかに揺れが少ないという印象を抱いた。

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    リアのモーターをうまく使った電動4WDの制御にも感心

現行ノートは、プラットフォームをルノー/日産/三菱アライアンスで開発した新世代の「CMF-B」に一新している。今回の試乗車は、低速ではタイヤの硬さが気になることもあったが、スピードを上げていくと揺れの少なさに感心する乗り味で、同じプラットフォームを使うルノー「ルーテシア」を思わせるフィーリングだった。

個性を伸ばす方向の進化に共感

日産の先進運転支援機能「プロパイロット」は相変わらず出来がいい。ステアリングにあるスイッチはわかりやすく、セットすれば的確かつ滑らかにスピードを制御してくれる。シートの座り心地も日本のコンパクトカーとしては良好で、長距離も楽にこなせそうだ。

  • 日産「ノート」
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  • シートの座り心地は良好

ハンドリングは安定感が高い。剛性感あふれるプラットフォームのおかげで、ステアリングに対する反応は常に素直。コーナーではサスペンションが路面の凹凸を絶妙にいなし、進路を乱さず抜けていく。コンパクトカーだからといって無闇にキビキビさせないところも好印象だ。

電動4WDはこうしたシーンでもメリットを感じる。コーナー立ち上がりでアクセルを踏み込むと、後輪が路面を蹴っていく様子が伝わってくるからだ。雪国に住んでいなくても積極的に選びたくなるキャラクターなのである。

最新の日産のラインアップを見ると、長らく親しまれてきた「マーチ」が消え、コンパクトカーはノートシリーズだけになった。しかも、最初に書いたように、現行型は全車e-POWERとなり、価格は200万円以上となった。

しかし、日産は軽自動車も持っているし、軽自動車以外ではハイブリッド車が一般的になりつつある。そこで現行ノートでは、e-POWERやアライアンス開発のプラットフォームなど、軽自動車とも他の日本のコンパクトカーともひと味違う付加価値でアピールしてきた。

「デジタルVモーション」(マイナーチェンジで変更したグリルのデザイン)によりモダンな雰囲気をプラスしつつ、和のテイストも織り込んだ新しい内外装は、そんな独自の存在感をさらに引き立てていた。万人向けであることより、他とは違う個性をアピールする方向を選んだことに、個人的には共感を抱いている。