表参道と明治通りが交差する神宮前交差点に、新たな商業施設・東急プラザ原宿「ハラカド」が4⽉17⽇に開業する。開業に先立ち、4⽉9⽇には開発背景などについて紹介する記者発表会とプレス向け内覧会が実施された。
"クリエイティブの聖地化"を目指す
発表会に登壇した東急不動産の⿊川泰宏本部⻑は、はじめに同社の広域渋⾕圏(東急グループの渋⾕まちづくり戦略において定めた、渋⾕駅から半径2.5kmのエリア)における取り組みについて説明した。
「東急不動産では広域渋谷圏において、今回の東急プラザ原宿 ハラカドなど、4つの新規開発プロジェクトを推進しています。1960年代、原宿セントラルアパートや竹下通りなどにおいて、多様なカルチャーが創造されてきた原宿・神宮前エリア。その歴史を踏まえ、当社は2012年の東急プラザ表参道『オモカド』の開業以降、エリア一体の開発に本格的に取り組んでいます」
原宿・神宮前エリア全体で新たな文化創造発信を行うプラットフォームを整え、同エリアの"クリエイティブの聖地化"を目指すなか、このほど東急プラザ原宿 ハラカドの開業に至ったという。
ハラカドでは主に3つの特徴的な取り組みを行っています。「クリエイターを育成・支援・共創するプラットフォームの強化」と「新しい3つの体験型メディアの実装」、そして、「継続的に発展していくための新しい運営方式の導入」です。ハラカド3階には100席を有する会員制カフェラウンジ『BABY THE COFFEE BREW CLUB』を軸に、クリエイターを支援するラボや、博報堂ケトル社が手掛けるSNS発信のための撮影スタジオなどを設置。クリエイティブ活動をワンストップで支援する仕掛けを整えました」
5階・6階の飲食フロアは"原宿のまちの食堂"としてデザイン。様々な人が集まり、交流が生まれ、クリエイティブを刺激するたまり場と考え、岡本太郎氏の絵画「夢」も展示する。
続けて、本施設の特徴のひとつである「新しい3つの体験型メディアの実装」については、次にように紹介した。 「緑豊かな庭園空間を持つ7階テラスのイベントスペースは、オモカドに新設したオモカドビジョン・屋外広告と連携し、神宮前交差点をジャックするようなプロモーションが可能です。開業期にはウイスキー『デュワーズ』のプレミアムイベントの開催などが決定しています」
無料で誰もが気軽に落ち着ける場所を提供
「2階の神宮前交差点に面した二層吹抜けの空間は、大きな窓面を活用した広告掲出が可能な体験型メディアとなっています。出版社の枠を超え、多様な世代やジャンルにまたがる雑誌特集記事とのタイアップにより、鮮度の高い情報発信を行います。開業期には『AERA(アエラ)』の特集イベントを実施する予定です」
地下1階には日本の伝統文化「銭湯」と湯上がり文化を通じ、コミュニティをつくりや文化の創造・発信につなげる新たな体験メディアとして「チカイチ」を展開。銭湯と親和性のある多様な企業・ブランドをパートナーに、約72坪の湯上がりスペースを備えた「小杉湯原宿」を開業する。
「ハラカドではこうした取り組みを継続的に発展させるため、新しい運営方式を導入しています。従来の商業施設では個々のテナントがそれぞれ独自に店舗のプロモーション・運営をしてきました。ハラカドでは開業前からテナント同士が連携し、イベントやコンテンツを共同で企画。各テナントがSNS等で積極的に発信することで、施設全体のプロモーションにつながっています。
ハラカドは約1年前からSNSでの発信を開始しましたが、開業前にも関わらずInstagramアカウントのフォロワー数は現在8,500人を超え、フォロワーの拡大とともにテナント同士の協業施策も活発化してきました」
明治神宮や代々木公園などの豊かな自然環境に程近い立地を鑑み、本施設では都心だからこそ提供できる環境サステナブルな取り組みへの接点づくりも行う。
環境指標種シジュウカラの巣箱設置のほか、本施設4階には再生可能エネルギー拠点等と連携し、カフェも併設する「ハラッパ」と呼ばれるエリアを設けた。ハラッパではサステナブルに関するさまざまなアートを展示。都心の誰もが気軽に入れる場所を提供し、環境・サステナブルとのタッチポイントとする。
「東急プラザ表参道 オモカドでは6階にシジュウカラの巣箱を設置し、2012年の開業から年に数回、昆虫類の生息や鳥類の飛来状況の変化をモニタリングしています。「いきもの東急不動産プロジェクト」と題し、開業を機にハラカドでもオモカドと同様の取り組みを行っていきます」
地下に「銭湯を中心とした街」が誕生
プレゼン終了後、地下1階では「小杉湯原宿」「チカイチ」の内覧ツアーも実施された。小杉湯は高円寺で91年続く老舗銭湯。神社仏閣を思わせる宮造りの木造建築が特徴で、2021年には国の登録有形文化財に登録されており、初代から続く真っ白なタイル張りの浴場も特徴だ。
イベントなどを通じてコミュニティを創出し、白いタイルと富士山の銭湯絵という関東型銭湯を代表する場所として人気の小杉湯。だが、大規模修繕などの影響もあり、財務的に厳しい状況が続いているそうで、小杉湯原宿はそうした環境下での新たな挑戦となる。
小杉湯原宿は本施設 地下1階のチカイチをプロデュース。「銭湯を中心とした街」に見立て、誰にでも解放された、肩の力を抜いて"素"に出会える場所、"そのまま"でいられる場所を原宿につくることをフロア全体のコンセプトに掲げた。
チカイチには花王やアンダーアーマー、サッポロビール、美容家電のMYTREXといった企業・ブランドがパートナーとして参加。
番台を中心に各区画が設けられ、ロッカー付きのランニングステーションやストレッチスペース、サッポロ黒ラベルのドリンクスタンドなどを展開する。また、マイトレックスの美容家電や花王の新製品などを、浴場も含めてさまざまかたちで試すことができる。
入浴料金は大人(12歳以上)520円、中人(6歳以上12歳未満/小学生)200円、小人(6歳未満/未就学児)100円。スーパー銭湯などのような自由価格が認可されているそうだが、あくまでも目指すのは毎日通える街の銭湯とのことで、東京都の入浴料金に合わせるかたちで運営していくという。
浴場はピンクや白のタイルを基調とする内装で、水風呂も含めて3つの浴槽を備えている。初代から続く小杉湯名物のミルク風呂も用意し、44℃のお風呂と交互に入る温冷交互浴が楽しめる。
女湯と男湯で異なる銭湯絵は全国で2人しかない銭湯絵師の1人、中島盛夫氏によるもの。
通常の銭湯よりも天井が低いため、銭湯絵を近くで鑑賞可能だ。光を上に反射させる照明とすることで、天井の低さが気になりにくい工夫も施されている。
4月17日〜5月12日のプレオープン期間は、神宮前1丁目〜6丁目エリアの住人や勤務地とする人が入浴できるかたちで、7時〜12時/18時〜23時の営業。5月13日のグランドオープン以降は、朝7時から夜23時までの通し営業となる予定だという。