1月期のドラマで話題を集めた『不適切にもほどがある!』で、主人公・小川市郎(阿部サダヲ)のひとり娘・純子を好演し、支持を集めた河合優実。高い注目度そのままに、4月期からは地上波連続ドラマでは初主演となる『RoOT / ルート』(テレビ東京/毎週火曜24:30〜 ※坂東龍汰とのW主演)が始まった。

2019年の俳優デビューから、今年で5周年を迎えた河合。その実力は早くから認められてきた。出演作には映画『サマーフィルムにのって』『由宇子の天秤』(21年)、『PLAN 75』(22年)、ドラマ『17才の帝国』(22年)、主演を務めた『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』(23年)と秀作が並ぶ。

そんな河合が「自分が多くの作品に感動してきたように、自分の作品を見て何かを感じてもらえたら嬉しいし、影響を与えられる仕事なんだとちゃんと自覚していたい」と語った。

  • 河合優実

    河合優実 撮影:望月ふみ

『RoOT / ルート』は実写ドラマならではの作品に

――『RoOT / ルート』は、2021年に放送されたテレビアニメ『オッドタクシー』と同じ世界の出来事を、別の主人公、別の角度から描く実写ドラマ。河合さんは探偵事務所の調査員・玲奈役です。

参加できてすごく嬉しいです。やっぱり実写にするなら、映像にする意味や映像にしたからこその面白さが出るほうが、いいと思いますし。『オッドタクシー』のように、もともとのキャラクターが強い作品だと、見ていた方々が大事にされているものもあります。この作品は(アニメで描いていた世界を)新たな視点で描くので、そことはまた別に、新たな面白さを探ることができて楽しかったです。

――玲奈を演じるにあたって意識したことはありますか?

アニメにも登場しているキャラクターではありますが、ドラマ『RoOT / ルート』の世界の真ん中にいる人物として、新たに作ることを意識しました。坂東さん演じる佐藤とのバランスや、“街”で起こっている事件の生々しさを、ちゃんと19歳の玲奈として体感しようと思っていました。『オッドタクシー』の関連作ではありますけど、演じる身としては普段の向き合い方と変わらなかったです。

――玲奈の衣装も素敵です。

探偵って、どこにいても馴染むものを選ぶらしいんです。玲奈は、ほぼ黒の衣装でしたが、本来のリアリティからはちょっとスタイリッシュにしています。土屋貴史監督とも「黒すぎて逆にこれ、目立たない?」と会話したりしたんですけど(笑)。かっこいい方を選ぶことになりました。

坂東龍汰との関係性が、芝居の空気にも出ている

――W主演の坂東さんとは、河合さんのテレビドラマ初レギュラー『夢中さ、きみに。』(21年)でも共演されていましたが、今回は全く違った間柄。バディです。

そうですね。坂東さんは事務所の先輩でもありますし、最初から仲良くさせてもらっていたので、バディというポジションを築くのも、問題ありませんでした。全く知らない方だと、少し時間がかかっていたかなと思いますし、この空気感はなかなか出なかったかなと。普段からよく話している関係性が、お芝居の空気にも出ていると思います。脚本の細かいことを確認しあうといったことも、気軽にできたのでとてもやりやすかったです。

――実際の年齢とは逆に、役柄と同様「河合さんのほうがお姉さんぽい」「坂東さんは弟キャラ」といったことはありますか?

坂東さん自身の持っている人懐っこさは天性のものだと思います。今回も撮影の組全体に対して、その力を発揮していました。でも、私がお姉ちゃんみたいなことは全然ないです。先輩ですから(笑)

これまでの作品とは「引き寄せるもの」があった

――今年デビュー5周年です。数々の素敵な作品に出演してきましたが、作品選びはご自身でされているのでしょうか。

まだキャリア5年ですし、最初は当然、オーディションを受けて出させていただいていました。その際に、どういったオーディションを受けるのか、周囲が考えて選んでくれていたと思います。その上で、役や作品とは巡り合わせでここまできました。選んだわけではなくても、自分が興味を持てる作品や、面白いと思う方々と一緒にやれてきたので、何か引き寄せるものがちゃんとあったのかなと思います。最近は、どういった作品に取り組むかその都度相談してもらうことが増えてきたという段階です。

――今は「こういう感じのお芝居をやっていきたい」と周囲に伝えているのでしょうか。

話すこともありますが、それよりも最近どんな映画を観たといった会話の中から、私の好みや、「こういう役をやれたらいいね」といったことを一緒に見つけていってもらっています。

  • 河合優実

――1月期の『不適切にもほどがある!』出演が大好評でした。こちらはオファーですか?

そうです。大人計画の舞台に2回出させていただいていますし、宮藤官九郎さんのオーディションも受けたことがあったので、そういった面を知ってくれている方がいたのだと思います。それと『家族だから~』をプロデューサーの方が見てくださっていて、声をかけていただいたとも聞きました。私自身も人を笑わせることが好きですし、そういった部分を『家族だから~』などから感じ取ってもらえたのかなと思います。

――ご自身が注目を浴びている感覚を受けて、変化したと感じることはありますか?

たしかに地元の友達とかから、いろいろなところで「見たよ」と連絡をもらうと、多くの人に届いたことを感じます。反響の大きさを実感しました。ただ『RoOT / ルート』は以前に撮影したので、そういった反響を受けての芝居ではありませんし、リラックスして臨めました。完成作を見て、すごく良かったので、『不適切にもほどがある!』で私を知ってくださった方が『RoOT / ルート』を見てくださるといった作用が生まれるなら、作品にとっても良かったと思います。注目度が高くなったことが自分の表現にどう関わってくるのかは、まだ分かりませんし、別に何かを変える必要もないかなと思っています。

――作品を重ねてきましたが、周りの方が見ていてくれていることを感じますか?

そうですね。業界の方でもファンの方でも、けっこう見ていただいていると感じます。最初のころはオファーをいただくなんてなかったですし、この『RoOT / ルート』もそうですが、お声がけがだんだん増えてくると、これまでやってきたことが繋がっているんだなと実感します。すごく嬉しいです。

――以前、主演映画『少女は卒業しない』でお話を伺ったときに、2022年にニューヨークに行って刺激を受けたことで、「自分の中で新しいゾーンに入った」とお話されていました。

え! 私、そんな大きなこと言ったんですか。恥ずかしい……。あれから2年くらい経って、もちろんそこは通過点でしかないんですけど、でもちょっとずつ自分の見ている世界を広げられてきた感覚はあるし、もっとこういうことをやってみたいといった気持ちがさらに出てきています。

――お芝居にも影響していますか?

突然何かができるようになるといったことはないですけど、取り組み方が変わってきました。たとえば、演じる役や自分のお芝居に限らず、その作品自体が世の中でどういう風に見られるか、どういう位置づけでどんな人に見てもらえるのかといったことも、感じるようになってきました。それによって、また自分の役柄に対しても、以前では感じなかったことを感じるようになってきました。

  • 河合優実

――河合さん自身が、大きく心を動かされた原体験と言えるようなエンタメ作品をひとつ教えてください。

たくさんありますが、「映画ってすごい!」と思ったのは、高校1年生くらいのときに観た『ダンサー・イン・ザ・ダーク』です。つらい作品ですけど、悲惨なだけではない、心を強く揺さぶられるものがありました。小説でも舞台でもなく、映像でここまで心を動かされるんだ! と思いました。あと全く違ったテイストの作品ですが、『ラ・ラ・ランド』もすごく心を動かされました。

――今は観る人の心を揺さぶる側の立場ですね。

ドラマや映画は、誰かに対して説教するものでもないし、教えを説くとか啓発するようなものでもないと思うんです。あくまでもエンターテインメント。ただそれでも、作品が持っているメッセージに共感すればするほど、自分がどう伝えられるかという意欲も出てきます。映画なのかドラマなのか。放送される時間帯や、上映される地域、国、どんなテーマなのかといったことも考えます。

社会的なことに限らず、作品は観ている人に影響を与えていると思うので。笑わせたり、感動させたり、嬉しくなったり、直接的じゃなくても、見る人の生活や考え方、心に影響を与えている。自分が多くの作品に感動してきたように、自分の作品を見て何かを感じてもらえたら嬉しいですし、影響を与えられる仕事なんだということをちゃんと自覚しながら、楽しんで向き合っています。

■河合優実
2000年12月19日生まれ、東京都出身。2019年にデビュー。2021年、映画『サマーフィルムにのって』『由宇子の天秤』などの演技で、第64回ブルーリボン賞新人賞等の賞に輝いた。その後も、『ある男』『PLAN 75』『愛なのに』『ちょっと思い出しただけ』(22年)といった作品で多くの受賞歴がある。2023年、連続ドラマ初主演を務めた『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』が放送批評懇談会「ギャラクシー賞」テレビ部門の7月度月間賞と2023年度奨励賞を受賞。2024年1月期放送のドラマ『不適切にもほどがある!』に出演。坂東龍汰とW主演の『RoOT / ルート』で地上波連続ドラマ初主演を果たす。

(C)P.I.C.S.・此元和津也 / RoOT 製作委員会