3月24日、東京都渋谷区恵比寿で「マイナビeカレ 〜esports全国大学選手権 2024〜」が開催されました。大学名を背負った大学生がしのぎを削るなか、プロゲーマーの1tappyさんがアンバサダーを務めた慶應義塾大学はどんな結果を迎えたのでしょうか。

  • マイナビeカレに出場した、慶應義塾大学「黒閃 bros」の3人

eスポーツに青春を捧げた大学生たちの熱き戦い

3月24日、大学生eスポーツ大会「マイナビeカレ 〜esports全国大学選手権 2024〜」(以下、マイナビeカレ)の決勝大会がついに開催されました。

  • 東京都渋谷区恵比寿で開催された「マイナビeカレ 〜esports全国大学選手権 2024〜」

2024年の採用タイトルは「Apex Legends」。大学対抗部門では、全国98校から133チームがエントリーし、A~Gブロックに分かれて対戦。7ブロックの各上位2チームと総合ランキング上位6チーム、計20チームが決勝大会へ進出。東京都渋谷区にあるエビススバルビルのイベントスペース「EBiS303」に集結、オフラインで熱戦を繰り広げました。

決勝出場チームには1チームにそれぞれ1人ずつ“アンバサダー”が就任。実力派プロゲーマーから人気のストリーマーまで、「Apex Legends」を知り尽くしたアンバサダーが、チームにアドバイスをしつつ、決勝大会の様子を配信しました。

  • 大学生にアドバイスを贈りつつ、大会を盛り上げたアンバサダー

「マイナビ学生の窓口」編集部 のインタビューに応じてくれた「KINOTROPE gaming」の1tappyさんも、そんなアンバサダーのひとり。1tappyさんが担当することになったのは、Fブロックを1位で勝ち抜いてきた慶應義塾大学の「黒閃 bros」です。

今回は、マイナビeカレ決勝大会の模様をお伝えしつつ、この「黒閃 bros」の様子を追っていきたいと思います! 同じ大学という共通点を持ったメンバー3人は、どのように戦い抜いたのでしょうか?

エキシビジョンで1tappyさんが贈ったアドバイス

決勝戦の流れはエキシビジョン2マッチののち、本戦5マッチとなります。マップはワールズエッジ。操作はキーボード&マウスとゲームパッド、どちらを使用してもOKです。

  • 左から、ゲストの西村歩乃果さん、解説のAleluさん、実況の原口大輝さん

開始前に話題となったチームは、メンバー3名がプレデターで構成された立教大学「立教成敗ズ」。エキシビジョン第一戦は、1位:崇城大学「就活前の本気」、2位:東京大学「U21」、3位:立教大学「立教成敗ズ」となり、最初からその安定した実力を見せていきます。

ここでの「黒閃 bros」の成績は最下位の20位。まだスイッチが入っていないようですが、エキシビジョンと言うことでメンバーもそれほど気にしていないようです。逆に1tappyさんと会話していることに緊張しているようで、会場の様子やゲストの西村穂乃果さんについて話しながら、和やかなムードのまま進みます。

  • まだまだ談笑する余裕のある慶應義塾大学の「黒閃 bros」

続くエキシビジョン第二戦は、1位:東京大学「U21」、2位:新潟大学「薙刀クワガタ」、3位:近畿大学「超メス個体Sturgeons」という結果に。東京大学が2回続けて上位に入るという結果を見せたことで、各チームに動揺が走りました。

  • 東京大学「U21」の活躍で「頭の良い奴はゲームも上手いのか!?」という声も聞こえてきました

そんななか、「黒閃 bros」の順位は19位。実は第二戦で大きな“やらかし”をしており、1tappyさんの「こんたぴしていい?」という言葉とともに、プレイ指南が行われる場面がありました。“こんたぴ”とは配信の「こんにちは1tappyさん」から生まれた言葉で、1tappyさんがキレながら他のプレイヤーに指摘や指示を始める状態を指します。

1tappyさんは「ムーブの根幹が間違ってる」「なにがしたいのかわからない」と言いながらプレイを振り返り、場面ごとの戦術をコーチング。その内容には「黒閃 bros」の3人も納得のようで、話を整理しながら真剣にアドバイスを聞いていました。

そんな3人の姿に、1tappyさんも「がんばれがんばれ、いけるぞ。大丈夫。見てて強かったもん」と激励の言葉をかけます。

  • 真剣な表情を見せるようになった「黒閃 bros」。ようやくエンジンが掛かってきたようです

大学生の声が会場に響き合う熱き5マッチ

休憩を挟み、ここからついに本戦がスタートです。マッチ1は各チームとも様子見と緊張が入り交じる動き。そんな中、明治大学「MeC」が11キルを稼ぎ、マッチ1のチャンピオンに輝きました。2位:東京通信大学「とみまる海賊団」、3位:北海道大学「Time is money」が後を追います。「黒閃 bros」は12位という滑り出しです。

  • 11キルで初戦を制した明治大学「MeC」

マッチ2からは各チームの積極性も増していきます。チャンピオンになったのは北見工業大学「medKIT」、2位:早稲田大学「シャチピーうどん」、3位:広島工業大学「トムとたぬきとkty」ですが、注目を集めたのは15キルを取った5位の北海道大学「Time is money」。キルを取れているチームと取れていないチームがはっきり分かれてきましたが、「黒閃 bros」は8位と徐々に調子を上げてきました。

  • ゲームを席巻し15キルをあげた北海道大学「Time is money」

次のマッチ3を制したのは、東京大学「U21」。エキシビジョンでの強さをマッチ1・2でできていなかった「U21」ですが、ここで12キルをとったことで一気に総合順位を上げました。2位は北見工業大学「medKIT」、3位に新潟大学「薙刀クワガタ」となり、総合順位で頭ひとつ抜けた「medKIT」は完全に各チームにマークされます。「黒閃 bros」は若干動きに迷いが見え、13位という結果に。

  • 結果的に今大会で一番警戒されていた北見工業大学「medKIT」

続くマッチ4は上位層が大きく替わりました。チャンピオンは広島工業大学「トムとたぬきとkty」。そして2位:慶應義塾大学「黒閃 bros」、3位:関西学院大学「親指撲滅部隊」となりました。崇城大学「就活前の本気」も12キルをゲットしましたが、リザルトでは5位。注目の北見工業大学「medKIT」は12位に終わっています。

「黒閃 bros」の躍進には、1tappyさんも「これうちの子たち!」「マジで(チャンピオン)ある!」「うわ、おっしぃぃ……」と興奮気味。チャンピオンは逃しましたが、まだまだ挑戦の可能性があることがわかった一戦になりました。

  • 最後の最後でチャンピオンを逃し、うなだれる「黒閃 bros」

ここまでの総合順位を見てみると、総合1位はかわらず北見工業大学「medKIT」、総合2位:広島工業大学「トムとたぬきとkty」、総合3位:明治大学「MeC」、総合4位:北海道大学「Time is Money」、総合5位:東京大学「U21」。しかし、結果はまだまだわかりません。

そして最終戦、マッチ5。ですが、総合1位の北見工業大学「medKIT」が早々に敗退。上位チームによる激しいファイトを勝ち抜いたチャンピオンは、再び広島工業大学「トムとたぬきとkty」です。2位に東京大学「U21」、3位に明治大学「MeC」となりました。「黒閃 bros」は18位という結果に終わっています。

  • 席が背中合わせだった立教大学「立教成敗ズ」(手前)と「広島工業大学「トムとたぬきとkty」(奥)

  • 「トムとたぬきとkty」が勝利した瞬間

2マッチ連続で広島工業大学「トムとたぬきとkty」がチャンピオンを勝ち取ったことで総合1位も入れ替わり、逆転優勝に輝きました。

  • 優勝カップを受け取る「トムとたぬきとkty」

  • 優勝賞金100万円と、副賞のCoke ON ドリンクチケット1年分、ゲーミングノートPC「Legion Pro 5i」を受け取る3人

「黒閃 bros」の3人に直撃インタビュー

こうしてマイナビ eカレ 決勝大会は終了しました。プレイを振り返ってみれば、どのチームも思うところが沢山あることでしょう。同じ大学という大きな共通点を持ったメンバー3人の奮闘は、見る人の心をも熱くさせてくれました。最後に「黒閃 bros」の3人に本日の感想を伺ってみましょう。

――今日は本当にお疲れ様でした。まず3人の自己紹介をお願いします。

marufoi:サブオーダーのitadakimarufoi(以下、marufoi)です。使用キャラはヴァルキリーで、今回の大会ではサブ火力でした。

ichi5:「黒閃 bros」の一応キャプテン、ichi5_i5(以下、ichi5)です。クリプトを使っていて、メインのIGL(In Game Leade)をやっていました。

erupuri_:Keiokerupuri(以下、erupuri)です。チーム内の役割は安地(リングダメージを受けない安全地帯)移動のサポートだったり、ムードメーカー的なところでした。

  • 左から、itadakimarufoiさん、ichi5_i5さん、Keio_k_erupuri_さん

――3人がチームを組むことになったきっかけは?

ichi5:僕たち3人とも同じアメリカの高校に行っていたんですが、コロナ禍で強制帰国になって、授業がオンラインになったんです。でも授業は午前中しかないし、外出自粛で外にも出れないから没頭できることが何もなくて、惰性で始めたのが「Apex Legends」でした。2019年の夏ごろかな、そこから3人でやるようになりましたね。

――今回の大会でのプレイを振り返って、率直なご感想を聞かせてください。

erupuri_:マッチ3でichi5くんがめちゃめちゃ良い安地移動をしてて、良い場所を取れて、その下詰めるのも良い判断でした。でも配信を見て分かったのは、最後のファイトで僕たちの上にいたチームが結構削られていて、詰めるのが遅かったんですね。

そこで僕たちがもうちょいゆっくり立て直して、ちゃんとアビリティを切っていれば勝てた状況ではあったと思います。やっぱり悔しさもありますし、経験の浅さが出ました。思い返すと、もっとできることがあったなと思います。

ichi5:エキシビジョン第一戦でジャンプマスターをやったんですけど、それで意味の分からないところで降りちゃって、一試合なくしたんですよ。第二戦では1tappyさんがずっと見てくれていて、安地移動がめちゃくちゃ遅くて「中途半端なことしたらダメだよ」ってちゃんと言ってくれました。

僕たちは1tappyさんが本当にめちゃめちゃ好きな選手で、一緒にできることがとにかく嬉しかったので、「めっちゃ勝つ!!」という熱量じゃなく「100万円取れたら取るか~」みたいな感じだったんですよ。でも1tappyさんの一言でスイッチが入りました。結果的に上手くいった場面もいかなかった場面もあって、悔しいし反省するところはいっぱいあったなという感じですね。

――1tappyさんの“こんたぴ”が始まったときはどう思いましたか?

ichi5:1tappyさんも初めは「エンジョイ」みたいな感じで楽しく話してくれたんですけど、良くないプレイがあった瞬間に「ちょっと言葉選ばなくていい?」みたいな聞き方をしてくれました。それに僕たちが「ぜんぜん大丈夫です」と返したら、結構厳しい言葉をかけて貰えましたね。そして次にそういう場面になった時に「移動はめっちゃ良かったから」みたいに褒めてくれて、それはすごく心に響きました。

今回の大会では全体を通してホライゾン・ブラッドハウンドのパーティ構成が多かったので、外でファイトが起こりやすくて、中にいたらやっぱり陣は伸びやすかったし、それをもっと徹底できていればとは思います。後入りか先入りか迷う状況で中途半端なムーブを掛けて、強いチームに一瞬で刈られるというのは、もともとチームの課題だったんですよ。それを1試合見ただけで気づいてくれて……、やっぱりプロってすごいなと感じました。

  • 1tappyさんへのリスペクトを随所で語っていたichi5_i5さん

――これから「黒閃 bros」はなにを目指してプレイされる予定ですか?

ichi5:まずはチャレンジャーサーキットに出て、それから決勝に行ける実力をちゃんと確保して、入れ替え戦に勝って、一度でもいいから1tappyさんと一緒にやれたらと思ってやってますね。

――eカレのような大会への出場を目指す大学生にアドバイスをお願いします。

marufoi:今回挑戦してみて、ランクとスクリムはぜんぜん違うなと思いました。ランクは、詰めが甘くても順位を伸ばすのはそんなに難しくないんですよ。スクリムでめちゃくちゃボロクソ言われて「ランクには勝てるけどスクリムだとぜんぜん勝てないな」みたいなのあると思うんですけど、やっぱり経験を積むことが自信になっていくんです。ゲームで本気になれるいい機会だと思うので、お互い頑張りましょう!

――ありがとうございました。次の大会での活躍を期待しています!