編集部から「長距離ドライブして新型N-BOXの実力を伝えよ」との命題を受け、3月末にホンダから3代目N-BOXを借り出した。本社ビルのある東京の青山1丁目からスタートして、目指すは長野県の蓼科。ハードな上り坂が続く中央道と標高の高い蓼科までの山岳路で構成される片道約200kmのルートは、軽自動車にとってはちょっとハードな条件かもしれない。

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    ホンダ「N-BOX」でロングドライブへ!(本稿の写真は撮影:原アキラ)

現行型N-BOXの基本情報を確認

試乗したのは4WDでターボエンジンを搭載した「N-BOXカスタム ターボ コーディネートスタイル2トーン」。個人的には丸目のヘッドライトが可愛いノーマルモデルに乗ってみたかったのだが、直前の天気予報で「ひょっとしたら雪になるかも」とのことだったので、スタッドレスタイヤを履いた4WDモデルに変更した。結果的にこれは大正解だった。

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    試乗したのはホンダ「N-BOX」のカスタム。スタッドレスタイヤを履いた4WDモデルだ

N-BOXカスタムのボディサイズは全長3,395mm、全幅1,475mm、全高1,790mm、ホイールベース2,520mm。搭載する660ccの直列3気筒DOHCターボエンジンは最高出力64PS/6,000rpm、最大トルク104Nm/2,600rpmを発生する。トランスミッションはCVTだ。プレミアムクリスタルレッド/メタリックブラックの2トーンやN-BOX専用9インチホンダコネクトナビ、ドライブレコーダーなどのオプションを装備した試乗車の価格は273.46万円。いわゆる“最も高いやつ”だ。

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  • 後席は両側スライドドア

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    660ccの直列3気筒DOHCエンジンを搭載

初代N-BOXの開発に携わったのは、あのホンダF1でプロジェクトリーダーを務めた浅木泰昭氏。8年連続で軽ナンバーワンの販売台数を獲得し続けたこと、2023年は登録車を含めた新車販売台数で1位となったこと、シリーズの累計販売台数が250万台を突破したことなど、N-BOXの人気を示すファクトは枚挙にいとまがないけれど、実は筆者は今回がN-BOX初体験。はてさて、どんな走りを見せてくれるのだろうか。

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  • 個人的には初の「N-BOX」にワクワク

ホンダご自慢のスペースは実際どうなのか

乗り込んでみると、室内の広さ、特に天井の高さに驚くのはお約束。ドライバーズシートに座ると、先代がステアリングの上からメーターを見る凹凸が多いデザインだったのに対し、新型はインホイールメーターにすることですっきりとした水平基調のダッシュボードになっているのに気がつく。ステアリングも2本スポークの軽快なデザインに変わっている。その奥に配置された7インチTFTメーターはサイズ的には少し小さいけれど、シンプルなグラフィックで見やすい。インパネのテーマは“出窓”なのだそうで、助手席の前には大きなトレーとグローブボックスが配置されている。

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  • スッキリとしたインパネが印象的な車内

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  • 7インチのインホイールメーターは小さいけれど見やすい

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  • 助手席Aピラーの改良されたピタ駐ミラーやリア席用トレイ、握りのサイズが上下で異なる取っ手、さまざまな収納スペースなど工夫が満載だ

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    リアシートが広い!

リアシートの広さも特筆ものだ。発表時に「肩周りをできるだけ削ってスペースを広げ、その下側にティッシュボックスやカップ(右側席)を置ける場所を作りました。子供さんが後席に座る場合は『ニンテンドースイッチ』も入るんです」と説明があったように、リアのパッセンジャーはゆったりとくつろげるし、足元スペースは写真にあるように機内持ち込みサイズのカートを2つ並べてもなお余裕があるほどだ。シートをチップアップすればベビーカーをたたまずに積み込めるし、フラットにすればママチャリをそのまま載せられる。このスペースはスーパーハイトワゴンならではの魅力だ

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  • シートアレンジ次第でさまざまなサイズの荷物に対応可能

車内の静粛性はどうなの?

行きの道中は強い雨と風に見舞われた。外苑前から首都高に乗ると、雨が当たるバチバチという音が相当な音量で車内を包んでしまう。フロントガラスの角度が垂直に近く、広い面積を持っているからなのだろう。

新型の開発テーマだった遮音性の良さを確認できたのは、笹子トンネルに入ってから。フロアカーペットとルーフライニングに吸音・遮音材を多用した効果で、いきなりEV(電気自動車)のような無音(ちょっと言い過ぎかもしれないが、それほど違いがあった)に近い世界が訪れる。天気の良い日と雨の日では車内騒音が大きく異なるという点は、報告ポイントのひとつとして挙げておきたい。

一方、悪天候の中での走り自体は見事なもの。談合坂付近の長い登りでも普通車の流れに何の問題もなく入っていけるし、ACCも車間をキープしながら遅れることなく追従を続けてくれる。工場での組み立て時のセッティングを1G状態で行うという、ホンダらしい玄人好みの足回りのセッティングは、こうした場面でいきてくる。おかげで、安心してステアリングを握ることができた。

3時間ほどで蓼科東急ホテルに到着。座面がベンチシートのようなフラットな形状だったので、ロングドライブの途中でお尻が痛くなるのではと心配したが、それは全くの杞憂に終わった。ホテルのラウンジでは、大きな暖炉でマシュマロを焼いて作る冬のスイーツ「スモア」を楽しむなど、静かでゆったりとした時間を過ごすことができた。

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  • 宿泊先の蓼科東急ホテルの大きな暖炉があるラウンジでは、マシュマロを焼いて作るスイーツ「スモア」を楽しんだ

路面がツルツル! 乗り切れるのかN-BOX!

翌日目を覚ますと、なんとホテルの周りは雪と氷の世界に大変身。深夜に降った雪と前日の雨がマイナス4度という気温によって凍りつき、路面はツルンツルンのアイスバーンになっていたのだ。

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  • 前日は雨で濡れていたホテル周辺は、夜の雪と低気温により雪と氷の世界に。路面はツルツルのアイスバーンになっていた。ブリヂストンのスタッドレスタイヤ「ブリザックVRX3」と4WDのおかげで、なんとかクリアできた

50km離れた清里にある「八ヶ岳アウトドアアクティビティーズ」のセグウェイツアーに参加するため、早朝7時半にホテルを出発。真冬の雪道に姿を変えたアップダウンをローギアを選択してゆっくりとクリアしていくのだが、15インチホイールに装着した最新スタッドレス「ブリザックVRX3」と四輪駆動のおかげでなんとか走り切り、9時からスタートするツアーの出発に間に合わせることができた。

  • ホンダ「N-BOX」
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  • 道はこんな感じだった

清里周辺は八ヶ岳の南面にあたるため雪はなし。村山敬洋ガイドによるセグウェイツアーで楽しい時間を過ごすことができた。N-BOXとセグウェイの2ショットを撮るためにブルーベリー畑のある狭い農道に入っていったのだが、取り回しのしやすいコンパクトなボディサイズのおかげでスイスイと進入していけた。

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    清里周辺は雪もなく、快晴の下で気持ちいいドライブが楽しめた。後方は八ヶ岳の斜面のはるか反対側に見える富士山

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  • 「八ヶ岳ウトドアアクティビティーズ」で村山敬洋ガイド(青のジャケット)によるセグウェイツアーを楽しんだ。狭い農道にも「N-BOX」なら気軽に入っていけた

こうして2日間を共にしてみると、人や物をたくさん積み込めて、近場でも遠出でも気軽に出かけることができるのだから、N-BOXが売れないわけがないことがよくわかる。ファーストカーとしての能力はバッチリ。その販売台数から「国民車」として認められているのも当然だ。

最後にあえてネガなポイントを挙げるとしたら、燃費性能かも。返却時までに430kmを走って使用したガソリン(レギュラー)は31.3L。満タン法で13.7km/L。車載メーター上の平均燃費は13.5km/Lとなっていた。N-BOXカスタム(ターボ、4WD)のカタログ上の燃費は18.4km/Lと記載されている。