女優の大島優子が、フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00~ ※関東ローカル)のナレーション収録に臨んだ。担当したのは、24日・31日の2週にわたって放送される『ボクらの丁稚物語2024』。令和の時代に“丁稚奉公”で職人を目指す家具製作会社・秋山木工に飛び込んだ若者たちを追ったシリーズの最新作だ。

今回の大きなテーマの1つとして描かれるのは、時代が変わる中での伝統と変革。このせめぎ合いを、大島はどのように捉えているのか――。

『ザ・ノンフィクション』のナレーションを担当した大島優子

『ザ・ノンフィクション』のナレーションを担当した大島優子

15歳の内弟子「母親に親孝行がしたい」

横浜市にある家具製作会社・秋山木工では、一流の職人を目指して入社した新人が住み込みで5年間修業する、いわゆる“丁稚奉公”を行ってきた。タバコも恋愛も禁止、スマホを持つことも許されず、家族への連絡は手紙だけ。しかし、ここ数年は、新人が入ってきても長続きせず、入社希望者も減り続け、2022年にはついにゼロになってしまった。

「もう一度、人が来る会社にしたい」と秋山利輝社長(80)は、半世紀続けてきた丁稚制度を見直し、家から通う「外弟子」を取ることを決めた。内弟子と違い、外弟子には厳しいルールは求めず、全てが自由。新体制でスタートした秋山木工には、内弟子と外弟子、合わせて4人の新人が入社した。

2023年7月。内弟子の松下さん(15)が、若手職人の日本一を競う「技能五輪」の県予選を突破し、全国大会出場を決めた。松下さんは「金メダルを取り、母親に親孝行がしたい」と、入社前からの夢に向かって練習に打ち込んでいた…。

  • 技能五輪に出場する松下さん (C)フジテレビ

80歳の社長を応援「若さやエネルギーのある人」

2022年からこのシリーズのナレーションを担当してきただけに、「最初に見ていた丁稚のみんなが職人になって、成長を見届けられてうれしい気持ちと、辞めてしまった人もいて寂しい気持ちもあって、不思議な立場で秋山木工を見守っているなと思います」という大島。

昨年の放送の際は、丁稚たちの母親目線で「涙もろくなりました」と話していたが、今回は秋山木工、そして秋山社長を応援する思いが強かったという。

「ずっと守ってきたたくさんの伝統を、令和の時代になって変えようとされていますが、80歳でそれをやるのは、すごく勇気のいることだと思うんです。私は80年生きたことがないので想像ではありますが、時代を見ながら“人が来る会社にしなきゃ”という志や野望を感じて、80歳でありながらも若さやエネルギーのある人だなと思って、秋山木工という会社を応援したい気持ちになりました」

今の若者は「脳も心も“熟成”するのが早い」

昭和生まれ最後の世代である大島。令和の若者たちに対し、「今の10代、20代の子たちの考え方や思想の持ち方には追いつかないので、私たちとは全然違う生き物なんだろうと思っています(笑)」と捉え、「彼らは怒ってしまうと辞めてしまうというのがあるので、社長や兄弟子の皆さんが優しく寄り添っていかなきゃという感じになっているのが、染みるくらい分かります」と、自身より若い世代との接し方の難しさに強く共感する。

秋山木工が伝統から変革する分かりやすい事例として番組に登場するのは、修業への覚悟を示す入社にあたっての「全員丸刈り」がなくなったこと。この決断については、「今の若い子たちは、もう覚悟ができていると思うんです。それは、情報にあふれていて、いろんなことを自分で入手できるようになっているから、精神的にすでに成長していて、脳も心も“熟成”するのが早いんだと思います」と、時代に合わせた合理的な選択だと理解を示した。

一方で、彼らを別の角度から見ると、「批判されたり、壁にぶつかったりしたときに乗り越える力強さについては、弱い部分があると思います」と想像。ただ、そうした場面に向き合ったとしても、「やはり情報の多さによって、違う生き方への回り道や、別の観点を見つけることができるのだと思います。実際にそれが成立しているので、もはや“精神性”という言葉が死語みたいになっている気がしますね」と分析した。

  • 母親に道具を見せる松下さん (C)フジテレビ

●大島優子
1988年生まれ、栃木県出身。06年からAKB48に所属し、14年に卒業。映画『紙の月』で日本アカデミー賞優秀助演女優賞など、多数の受賞を果たす。その他、『スカーレット』『青天を衝け』(NHK)、『東京タラレバ娘』『ネメシス』(日本テレビ)、『教場』(フジテレビ)、『七人の秘書』(テレビ朝日)などのドラマ、『闇金ウシジマくん』『ロマンス』『女子高生に殺されたい』『七人の秘書 THE MOVIE』『天間荘の三姉妹』『ネメシス 黄金螺旋の謎』などの映画に出演。4月には日曜劇場『アンチヒーロー』(TBS)がスタートする。