ついに3月16日、北陸新幹線「金沢~敦賀間」が延伸開業した! その停車駅の一つでもある「加賀温泉駅」は、新幹線の延伸に加えライドシェアなどでも注目を集める今ホットな場所である。

そんな加賀温泉駅から車で10分ほどの場所にある「界 加賀」を訪れ、『温泉×石川の幸×文化体験旅』を満喫してきたので早速紹介していこう。

  • 石川県・山代温泉にある「界 加賀」

■文化人が愛した山代温泉

「界 加賀」の佇む山代温泉は、725年に高僧・行基が霊峰白山へ向かう途中で発見したと言われており、約1300年の歴史を持つ。長い歴史の間には、明智光秀や北大路魯山人、与謝野晶子も訪れたとされ、文化人や偉人に愛されたことでも有名だ。

  • 総湯を中心に旅館や商店が立ち並ぶ。「湯の曲輪(ゆのがわ)」の町並み

同温泉地には、江戸時代から「総湯」と呼ばれる共同浴場が存在する。この総湯を囲むように旅館や商店が立ち並ぶ「湯の曲輪(ゆのがわ)」という町並みが形成され、今もその形態が残されている。

同エリアにある総湯の1つであり、街のシンボルともいえる「古総湯」は、明治時代の総湯を復元し、外観はもちろん、内装の床や壁の九谷焼タイルも当時のまま。そんな「古総湯」の目と鼻の先、歩いて約10秒に位置するのが「界 加賀」だ。

  • 「界 加賀」の情緒あふれる入り口

■老舗旅館の歴史を受け継ぐ「界 加賀」とは?

同旅館は、1624年の創業以来、多くの文化人を迎えてきた老舗旅館「白銀屋(しろがねや)」の歴史を受け継ぎつつ、新しい感性を加えた温泉旅館。フロントホールを含む伝統建築棟と園庭にある茶室は、国の有形文化財に登録されてており、加賀の伝統が息づいている。

  • 庭園には国の有形文化財に登録されている茶室がある

江戸時代に加賀藩主、1915年には芸術家であり書道家などの顔を持つ魯山人も滞在したという由緒ある旅館には、随所に趣を感じる仕掛けが施されている。

例えば、細かな木を縦と横に組み合わせた加賀地方の伝統的な建築様式「紅殻格子(べんがらごうし)」をはじめ、太い大黒柱と大きな丸太梁を、金物を一切使用せずに組み上げた「枠の内(わくのうち)」など、建築だけでもその魅力は計り知れない。

  • 金物を一切使用せずに組み上げた「枠の内(わくのうち)」が特徴

また、訪れる人がくつろげる「トラベルライブラリー」には、魯山人が書いた「いろは屏風」が飾られている。書をしたためた際、酔っぱらっていたため、最後の3文字を書き忘れてしまったというから面白い。

  • くつろぎの場所「トラベルライブラリー」には「いろは屏風」が飾られている

■加賀の伝統を感じる客室

「加賀伝統工芸の間」は、九谷焼・山中塗・水引・加賀友禅といった、石川・金沢エリアが誇る代表的な4つの伝統工芸を配した客室。情緒あふれる室内は和のぬくもりを感じる落ち着いた空間に仕立てられている。

  • 内装には九谷焼のデザインタイルや山中塗の漆を施したアートワークの壁掛けが施されている

特に筆者が気に入ったのは、九谷焼で造られた鍵や客室の表札。華やかさとかわいらしさを兼ね備えた繊細な演出に心が躍る。

  • 伝統工芸を随所に取り入れた客室

部屋には露天風呂が付いており、好きな時間に入浴できるもの魅力。客室には、ハーブ棒茶などうれしいウェルカムドリンクも用意されている。そして、それらをいただく茶器も九谷焼と徹底したこだわりを見せる。

  • ハーブ棒茶や生姜湯、コーヒーなどが用意されている。茶器なども九谷焼

部屋で一息ついたら続いては、オリジナル作務衣に着替えて、ご当地体験へ向かうとしよう!

■文化体験で土地の魅力を知る

金継ぎ体験

「界 加賀」には、日本で初となる温泉旅館の内部に併設された「金継ぎ工房」がある。「金継ぎ」とは割れてしまった器を鮮やかに修復する伝統技法のこと。

  • 温泉旅館では初となる専用の金継ぎ工房

同旅館でも、九谷焼や山中漆器など多くの器を扱っているが、どんなに大切に扱っていてもヒビや欠けが生じてしまうことがある。それらを「破棄してしまうのはもったいない」とのことで、自分たちの手で器を守っていくことを目的に元蒔絵師(まきえし)のスタッフが金継ぎを始め、この工房が誕生した。

  • 最初に金継ぎについての説明を受ける。欠けていた状態から金継ぎが完成するまでに最短でも約1カ月はかかるという

うれしいことに宿泊者もここで「金継ぎいろは」を無料体験できる。1日2回、所要時間は30分。

うるしを使い、欠けてしまった部分を少しずつ埋めていく。でこぼこさせずに、元の部分とおなじぐらいなめらかにしなければいけないのだが、これが意外に難しい。それでもスタッフにサポートしてもらいながらなんとかやり終えた。

  • 漆を使って金継ぎを行う

器にもう一度、命を吹き込んでいるようで、"創る楽しみ"とは違ったおもしろさを感じられた。ちなみに、この体験で修繕した器は、実際に食事処でも使用している。体験ではあるが修復の一部を担っているのが、なんだかちょっぴり誇らしかった。

温泉いろは

続いては、温泉に精通した湯守りが教えてくれる現代湯治プログラムの1つ「温泉いろは」を体験。温泉の基礎知識や山代温泉について知れるのはもちろん、呼吸やストレッチをとりいれたオリジナルの体操をレクチャーしてもらう。

  • 温泉に関する知識を学びつつ、体操も覚える!

「弱アルカリ性」でとろみのある山代温泉の泉質は、保温や保湿効果が高いとされる塩化物泉を含んでいることから、別名"美人の湯"と言われているそう。一度入浴すると、体が芯から温まり湯冷めしにくいというからうれしい。

そのほかにも入浴指南や、入浴のタイミングにあわせて行うストレッチを教わり、温泉を最大限楽しむ武器を手に入れた。

■大浴場で旅の疲れを癒やす

温泉いろはで学んだあとは、実践あるのみ! 加賀の四季を表現した九谷焼のアートパネルや、金沢箔で加賀地方の象徴・白山あしらった大浴場で早速、湯浴み!

  • アートパネルが飾られた大浴場。男湯女湯あわせて計8人の九谷焼作家がデザインしている

温泉いろはで教わった入浴前・入浴中のストレッチを行うと、血行がよくなったのか徐々に体が温まっていく。さらに、肌をやさしくなでるようなとろりとした名湯に包まれ気分は上々。

入浴後は、大浴場を出た場所に無料で用意されている「加賀柚子みつ」をごくり。これが美味しくて美味しくて……、入浴前後、食前食後、帰る前と隙あらば飲んでいた(笑)。