加速するベントレーのラグジュアリーマーケット戦略|Bentley Azure Nimbus collection POP UP event

去る2月23~24日、六本木ヒルズカフェでベントレー正規輸入開始60周年を記念したポップアップイベントが開催された。同時にそれはベントレーモーターズジャパンにとってはマリナー部門により制作された限定10台の特別なベンテイガのお披露目の場であり、新ブランドディレクター遠藤克之輔氏による初の戦略発表の場でもあった。そこで語られたのは世界のラグジュアリーセグメントの動向だった。

【画像】ポップアップイベントで展示された特別なベントレーと、ブランドディレクターに着任した遠藤氏(写真7点)

「ベントレーを販売するだけではなく、ベントレーのある人生を提供する、そんなイメージです」2024年1月にブランドディレクターに就任した遠藤克之輔氏は、ベントレー正規輸入開始60周年を記念したポップアップイベントでの個別インタビューで、これからのベントレーのブランドイメージについてそう語っている。また、「PASSION POINTS OF NEW LUXURY TARGET GROUPS」と題されたプレゼンテーションボード上で、あらためて「BEYOND 100」で提議された「WELL-BEING(Physical / Mental)」「REALESTATE(Investment / Lifestyle)」「SPECIALTY TRAVEL(Locations / Hotels / Food&Drink)」「AUDIO / MUSIC(Creative / Performance)」の4つのベントレーのコミュニケーションワードについても触れ、それらを遂行していくことを強調した。

「ベントレーモーターズジャパンのブランドディレクターを拝命してからまだ日は浅いのですが、すでに胸が高鳴ります。なぜならそこには新しいライフスタイルの可能性が満ちているからです。すでに周知の通りに『EXTRAORDINARY-JOURNEY』は引き続き全世界の活動として展開されますが、たとえば特別な旅のご提供という企画ひとつとっても、ただドライブし、食事を楽しんでいただくだけにとどまらず、顧客の皆様と一緒に種を植え、育て、収穫したものを一流のシェフを招聘して、美味しくいただくまでをプロデュースさせていただくなど、もう一歩踏み込んだ体験価値の提供も考えています」

2030年までにはすべての車種において、電動モデルがラインナップされる計画に変更はないようだが、いずれにしてもラグジュアリーセグメントのブランディングにはサステナブルであることが必須の条件であることに変わりはないとも分析する。

「すでにクルー工場ではカーボンニュートラル(排出した二酸化炭素と抑制した二酸化炭素量がイーブンとなり、都合排出ゼロ状態)を実現していますが、今後主要先進国でのラグジュアリーセグメントは押し並べてエシカルなブランドであることが必須となっていきます」

新富裕層市場ではもはやデジタライズとサステナビリティは価値創造の両輪といってもいいほどに重要項目とされる。

「その上でフィジカルな”体験”をいかに価値を提供できるか。試乗会はスペックの発表と確認の場から、ブランドコミュニケーションを伴った”体験会”の意味合いをもちつつあります」

今回、開催されたイベントにはマリナー部門がその最高のクラフツマンシップを特別に日本に提供して制作した、10台限定の「BENTAYGA Azure Nimbus collection(ベンテイガアズールニンバスコレクション)」が発表された。”雨雲”を意味するニンバスは、エクステリアカラーに雨雲をインスピレーションした特別カラー「クラウドグレー」を採用し、インテリアにはオデッシアンスタイルの刺繍を施すなど、ベントレーの他のどのモデルとも異なる、スポーティーでコンテンポラリーなラグジュアリーを体現した新しいプレミアムモデルだ。この限定モデルのムービーには、2022年にフリースタイルフットボールの世界チャンピオンに輝いた「Leon」と同じくフリースタイルフットボーラーの「Kazane」が出演しており、イベント内で初公開されるとともに、ふたりのパフォーマンスも披露された。

また会場では、ペイントアーティスト「はくいきしろい」がニンバスをイメージして制作したアートや、そのアートを施したベントレーのラグジュアリーSUV「BENTAYGA Odayssean Edition(ベンティガオデッシアンエディション)」モデルも展示された。

特別な一台を中央に、アートとフィジカルパフォーマンスを融合させる。ブランドディレクター、遠藤氏の手腕が問われるとともに、世界のラグジュアリーブランドの新しい形を切り拓いてきたベントレーモーターズのこれからは、自動車業界のみならず、ファッション業界から広告、マーケターまでを巻き込んだ重要なベンチマークとなりそうだ。

文:前田陽一郎 写真:高柳 健

Words:Yoichiro MAEDA Photography:Ken TAKAYANAGI