お金を貯めたい、家計を守りたい、と思っていても、お金にまつわることは難しい……。みなさんからのちょっとした疑問に専門家が回答します。今回は、余裕のある老後を送るための資産運用についてです。

お金を貯めたい、家計を守りたい、と思っていても、お金にまつわることは難しい……と感じている人もいるのではないでしょうか。皆さんからのちょっとしたお金の疑問に専門家が回答します。

今回は、余裕のある老後を送るための資産運用についてです。

◆Q:老後、余裕のある生活がしたいのですが資産運用をしたほうがいい?

「定年後も好きな旅行やゴルフを楽しんで、余裕のある生活を送れたらいいなと思っています。貯金はありますが、運用はまったくしていないので年金だけの生活に不安があります。今から資産運用をしたほうがよいでしょうか」(50代後半)

◆A:老後を豊かにするのであれば、長期でコツコツと配当金をもらう運用をしてみましょう

老後、ゴルフやレジャーを楽しみたいとのこと。結論からいえば、無理のない範囲で資産運用をしたほうがよいといえるでしょう。理由としては、現在は世界的に物価が上がっており(インフレ)以前と同じ物やサービスを買うにしても、より多くのお金を出さないと手に入らなくなっています。

将来的には物価の上昇が沈静化すると思われますが、再びデフレに戻ることは可能性は低く、諸外国よりは緩やかながらも物価の上昇は継続して行くと考えられるからです。預貯金だけでは物価上昇に追いつかないうえ、時の経過と共に購買力が低下していくと思われるからです。

また老後、収入が公的年金だけになってしまうと、公的年金の受給額が増えにくいことから家計収支が黒字になる人はより少なくなるでしょう。つまりレジャーや特別支出などの費用を捻出するために、預貯金を取り崩すことになり、その速度が加速してしまうと考えられるのです。自分の金融資産が減っていく一方だと人間誰しも不安になるものです。貯蓄の一部を投資に回して、お金に働いてもらうということは今後はより大事になると思われるのです。

投資の初心者ということなので、まずは売買して儲けるのではなく、金融商品を保有して定期的に配当金をもらう「配当投資」をしてみましょう。オフィスビルや集合住宅など、日本の不動産に投資するJ-REIT(Jリート・不動産投資信託)という商品がありますが、上場している全銘柄の平均配当利回りは4.0%程度あります。日本株への投資でも配当利回りは平均すると2%超あるのです。

単純にいえば、今100万円をメガバンクの定期預金に預けられたとしても、金利が0.002%なら20円しか利息(税引き前)がつきません。それが2%超の配当利回りがある株式に投資すれば2万円(税引き前)もらえます。Jリートだったら4万円(税引き前)の配当金がもらえるということです。そういった高利回りの商品・投資を資産の一部に取り入れると、老後が少し豊かになるのではないでしょうか。

ただし投資にはリスクがあります、株でもJリートでも、自分が応援したい企業で、長期間保有したい、配当利回りが高い銘柄を選び、価格が上昇している時ではなく調整している局面で投資するようにしましょう。

さらに配当投資をするときには、NISA口座(NISA口座は衣替えがあるものの恒久化が決定)を使うと、株やJリートを運用する際にも、税金は非課税となります。配当利回りが高い運用を目指し、その配当金などを定期的に受け取っていくのがコツで、私はこれを「めんどり投資」と呼んでいます。ようするにめんどりが卵を産んでくれるごとくお金が増えます。良質なめんどりを捕まえて生かしていけば、ずっと卵がもらえるわけです。

Jリートの配当利回りが4.0%であれば、税金を考えなければ25年間で利回りは100%にもなります。つまり投資した元本を回収でき、21年目からは利益が積み上がっていくのです。デイトレードで大きく稼ごうとするのではなく、長期で見て、コツコツ配当金をもらうという考え方をすると、少し投資のハードルが下がるのではないでしょうか。

文:深野 康彦(ファイナンシャルプランナー)

マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。

文=深野 康彦(ファイナンシャルプランナー)